Teen's Snapshots

AI時代だからこそ、「早く答えを出さない」意味がある。廃食油で車を走らせるプロジェクトを手がけた大学生【矢部空翔・19歳】

AI時代だからこそ、「早く答えを出さない」意味がある。廃食油で車を走らせるプロジェクトを手がけた大学生【矢部空翔・19歳】

「気になる10代名鑑」の1195人目は、矢部空翔そらとさん(19)。高校時代に学生主体で廃食用油を回収し、BDF(バイオディーゼル燃料)として学校の車を動かすプロジェクトを牽引してきました。大学に入ってからはさらに分野を広げ、向き合うべき課題を模索し続けている矢部さんに、そのプロジェクト内容や実現したい社会について聞いてみました。

矢部空翔を知る5つの質問

Q1.いま、力を入れていることは?

「おもに、興味のある環境問題について、本を読みながら学びを深めています。

そのきっかけとなったのが、高校時代の『天ぷら油プロジェクト』です。これは、学校内外で生徒、教員から廃食用油を集めて、業者にBDF(バイオディーゼル燃料)に加工してもらい、学校の車を動かす試みで。学園祭や体育祭などの行事で、学校外の家庭や地元の料理店からも廃食油を集めて、合計で300~400リットルの油が集まりました。SNSでの発信や企業との連携を進めて、『面白いことやってるよね』と周囲の反応が変わっていくのは嬉しかったですね。

現在は環境系の学部に進学しています。ぼくの通っているキャンパスはISO14001(環境マネジメントシステム)認証を取得していて。環境への配慮を理念のままで終わらせずに、組織の中でどう実装し、どう持続的に仕組みを回していくかを考えたくて、組織の体制作りやマネジメントを中心の学びに据えています」

Q2.活動を始めたきっかけは?

「中高一貫の学校に通っていたんですが、『天ぷら油プロジェクト』の原型となる構想は中学生のときからあって。

きっかけは、学校が所有しているガソリン車を、廃食用油からつくったBDFで動かし、ゼロカーボンを目指そうという話を聞いたんことでした。高校生になってから、さらに積極的に関わり始め、教員に何度も相談しながら、廃食用油を家庭から集めて活用するプロジェクトとして立ち上がったんです。

周囲の生徒や教員の声を聞いてみると、環境問題を解決するには受け身でいては駄目なんだと思って。人の意識や関わり方そのものをどう変えていくかを考えたくなっていきました。

2024年1月に出身校の理事長に連れられて、ユネスコユースフォーラムのパネルディスカッションに環境教育を受ける生徒として登壇する機会があったのですが、そこでシチズンシップ教育という考え方に出会って。環境問題は、知識や技術だけでなく、一人ひとりが社会の一員としてどう関わるかを育てる教育と結びついているのだと気づいたんです

Q3.活動で大切にしていることは?

いちばん大切にしているのは、すぐに動くことよりも、考え抜くことです。

正直に言うと、フットワークが軽いタイプではなくて。思いついたらすぐ行動、というよりも、考えついては『いや、これは本当にいいのか』と立ち止まって、また机上で考え直してしまうんですよね。

かつてはそれを悩みだと捉えていたのですが、最近は無理に変えようとしていません。ぼくは実践をどんどん回していくタイプというより、物事を深く分解したり、思考実験を重ねたりしながら、仕組みそのものを考えるほうが向いているんだと思うようになりました。

いまは生成AIに聞けば、一瞬でそれらしい正解が返ってくる時代です。それでもぼくは、答えを急ぎたくなくて。他の人の立場や、別の可能性を考えたうえで、『そもそもこの問いの立て方は正しいのか』『見逃している人の存在はないか』まで立ち返るようにしています。

一見遠回りでもひたむきに考え続けることが、ぼくなりのの社会との向き合い方なんです」

Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?

助けてほしい声をきちんと汲み取れる社会をつくりたいです。

助けてと言えない社会って、すごく寂しいなと思っていて。『生活保護に頼る前に親戚に頼れ』という言葉がありますが、そもそも頼れる親戚がいない人はどうなってしまうんだろうって。こういった人たちがきちんと生きるための救済策が充実しないままに、社会は孤立を『自立』と見なしてしまいがちなんですよね。

ご近所付き合いや偶然の縁を通じて、社会のひとりひとりが助け合える関係性を持てたら、これ以上のことはないですね」

Q5.将来の展望は?

明確に決まっているわけではありませんが、よりよい社会に近づくための鍵になる、研究者、経営者、政治家のどれかにはなってみたいです。

いまの関心は環境問題ばかりにとどまってはいなくて。経営管理やAIを活用したマネジメント、交通機関を活かしたまちづくりなど、分野をひとつに定めるよりも、必要な場所で必要な役割を担える人でありたいんです。

引き続き本をたくさん読んで、どんな行動が起こせるか考え続けます」

矢部空翔のプロフィール

年齢:19歳
出身地:東京都多摩市
趣味:音楽鑑賞(聴いて、弾いて、歌う)
特技:行動力
大切にしている言葉:自分らしさが一番

矢部空翔のSNS

★Instagram

Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami

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Taishi Murakami

ライター

ライター。2025年4月にSteenzへジョイン。大学生活の傍ら「気になる10代名鑑」をメインにインタビューから執筆まで記事制作を担当している。スタートアップ、建築、メディアまで多方面への関心を活かして活躍中。

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