
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、世界の音楽業界の環境アクションについてご紹介します。
COP30で注目された「K-POPファンの環境アクション」
11月10日〜22日、ブラジル連邦共和国のベレンで「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)」が開かれました。
ブラジルは11月、アマゾンの中心にあるベレン市でCOP30を開催しました。日本は参加した195カ国のひとつで、交渉に積極的に関与し、グローバルな気候変動対策の新たな段階を打ち出す一連の決議採択に貢献しました。… pic.twitter.com/qXC4JgUsBQ
— 駐日ブラジル大使館 🇧🇷in🇯🇵 /Embaixada do Brasil no Japão (@BrazilEmbassyJP) December 8, 2025
「COP」とは、国際連合が1992年に採択した国連気候変動枠組条約の最高意思決定機関のこと。同条約を締約した約200カ国・地域が毎年一度、一堂に会し、地球温暖化対策の国際的なルールについて話し合うこととなっています。先進国や途上国が温暖化対策に取り組むことが決まった京都議定書やパリ協定は、このCOPを通じて採択されたものです。
30回目の開催となった今回、会期中に「K-POPファンによる気候アクション」フォーラムがおこなわれました。同フォーラムでは、国際社会におけるエンターテインメント産業の脱炭素化などについて議論が交わされたそう。国際会議の中でアーティストのファンが環境問題にもたらすインパクトが話題になったことは注目に値すると、韓国などのメディアが報じています。
環境対策の文脈で、K-POPファンに注目が集まる理由
ではなぜ今回、環境対策の文脈でK-POPファンの存在に焦点が当たったのでしょうか。その理由は大きくふたつあります。
ひとつ目が、今や世界にファンが広がるK-POPシーンの環境対応の遅れです。市民団体「KPOP4Planet」の調査によれば、韓国の大手芸能事務所では、リサイクルグッズやアップサイクルの取り組みは進んでいるものの、温室効果ガスを多く排出するコンサートでは、電力や移動手段で再生可能エネルギーをほとんど活用していないという事実が明らかになったそうです。
また、CDの大量廃棄も問題に。K-POPシーンでは、CDにサイン会の応募券やフォトカードなどの特典をつけたり、デザインの異なるジャケットを採用したりしてファンの購買意欲を高めることが王道の手法となっています。これによりCDの売上枚数が伸びる一方で、ファンが目当ての特典を手に入れるべくCDを大量に購入する「アルバム・カン」という風潮が発生。特典を入手した後、不要になった大量のCDをゴミとして捨てる行為が問題となっているのです。
ふたつ目の理由は、K-POPシーンでゴミ問題などが発生している一方で、近年、環境問題でファンの存在感が高まっていることです。推しのアーティストを広告塔として起用する企業の環境対応に、ファンたちが変化をもたらすケースが増えつつあります。例えば、BTSを広告に起用していた現代自動車は2024年、低炭素アルミ素材を仕入れていたインドネシアの企業との連携を終了しました。当該企業がインドネシア国内で火力発電所の設置を進めており、グリーンウォッシュではないかとBTSのファンから抗議があったからです。環境対策を前に進める上で、その影響力の大きさは無視できないと、今回のフォーラムで光が当てられたと考えられます。
K-POPシーンで進められている対策
ただ、最近のK-POPシーンでは、環境対応に力を入れる企業も増えています。
例えば、BTSやLE SSERAFIMなどの人気アーティストを世に送り出しているHYBEは、ポップアップストアを出店する際、一度使用した資材を他の地域で再利用する取り組みを始めています。また、アルバムや映像出版物、公式商品ではSOYインキや再生プラスチックなどの環境配慮型素材を使用したり、パッケージやプラスチック製の構成品を最小化するなど、環境負荷を減らせるような取り組みも実施。
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さらに、コンサートでは、舞台で使用する資材をなるべく再利用したり、必要機材の運送ではCO2排出量が抑えられるように海上輸送を採用したり、公演用横断幕をアップサイクル製品に生まれ変わらせてグッズとして販売したりと、さまざまな試みを続けています。
世界の音楽産業の取り組みは?
では、世界の音楽業界では、どのような環境対策がおこなわれているのでしょうか。今回はゴミの置き去りやCO2排出量が問題となりやすい音楽イベントに絞って、取り組みをご紹介したいと思います。
ノルウェーの音楽フェス「Øyafestivalen(オイヤ)」では、スタッフやアーティスト、観客に提供する食事で肉類の使用を避け、季節の地元産食材を使うことで、畜産業を由来とする温室効果ガスの削減に取り組んでいます。また、フェスで使用した木材や観葉植物などの不用品は、インターネットを通じて再利用したい人を募集。徹底したゴミの分別や会場の生態系を学べる樹木ガイドツアーなども開催し、来場者の環境への意識向上に一役買っています。

アイスランドの「Secret Solstice」では、地熱発電や水力発電を利用し、ステージ上の設備で使用する電力を補っています。また、フェス期間中は白夜となるため、照明もほとんど必要ないほど明るい中でイベントを開催できるそうです。
日本を代表する音楽フェス「FUJIROCK FESTIVAL」では、ゴミステーションでボランティアが分別をサポート。会場で集められたペットボトルのゴミは、翌年に来場者に配るゴミ袋にリサイクルされ、紙コップのゴミは翌年に会場で使うトイレットペーパーへと生まれ変わっています。また、音響設備などの電力は、使用済みてんぷら油をリサイクルしたバイオディーゼル燃料を使用し、一部では太陽光発電も活用しているとのこと。このほかにも、会場周辺の森林環境を保全する活動などをおこないながら、環境対策を毎年のようにアップデートしています。
┋ゴミは分別してゴミ箱へ🗑️┋
クリーンな #フジロック は、
皆さまのご協力のおかげです分別方法が分からない場合は、
お気軽にお声がけください#fujirock pic.twitter.com/RkbRV3GKIX— FUJI ROCK FESTIVAL (@fujirock_jp) July 24, 2025
このように世界の音楽業界で進む環境配慮の取り組み。まだ課題は多く残されていますが、各国で取り組みを強化することで、持続可能な形で音楽を楽しむ文化が広がりつつあります。自分の推しやよく行く音楽イベントでどのような取り組みがおこなわれているのかを注目してみると、新たな発見があるかもしれません。
Text:Teruko Ichioka






