
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、課題を抱えるコメ市場を中心に、農業者に必要なサービスの開発・提供をおこなうスタートアップ企業についてご紹介します。
未だ続く「令和の米騒動」
2024年夏ごろから始まったコメの価格高騰が止まりません。
農林水産省の発表によれば、2025年11月24日〜30日のコメの平均価格は、前週から23円上昇し、4,335円/5kgになったそうです。これは、昨年の同時期に比べて885円も高い価格です。かつては2,000円台で手に入っていた主食のコメが大幅に値上がりしたことで、家庭や飲食店、米菓メーカーなどが少なからず打撃を受けており、家計の工夫やコスト削減の取り組みが続いています。

コメ価格高騰の要因は、ひとつではありません。人口減少を加味した減反政策の影響。インバウンド需要の増加。ロシア・ウクライナ戦争のぼっ発による小麦の値上がりなどの影響で、価格が安定していたコメの需要が増加したこと。酷暑によるコメの品質低下。肥料や農薬などの資材価格や輸送コストの上昇。高齢化によるコメ農家の後継者不足と労働力不足……。さまざまな要因が複雑に絡み合って、現在のコメ価格に表れているのです。
課題を抱える日本のコメ市場に挑むスタートアップ企業
そうしたコメ市場において、テクノロジーを活用しながら、農業者を主な対象として必要なサービスを開発・提供するスタートアップ企業があります。その会社とは、2019年11月に設立された株式会社NEWGREENです。
同社は、コメを中心に「生産性向上」と「環境負荷低減」を戦略の軸として掲げています。そして、自社での農業実践に加え、農業者、食品事業者と自治体、消費者向けのさまざまなサービスを提供しています。
例えば、農業者向けには、水田の除草作業を自動化・効率化して収量の増加に貢献する農業ロボット「アイガモロボ」を開発。今年3月にはフルモデルチェンジをおこない、さらに便利かつ農家が求めやすい価格で販売しています。
農家に対してはこのほかにも、水稲の節水型直播栽培(※1)のノウハウ・資材・サービス提供や有機栽培米の買取、異常気象に対応可能なバイオステュミラント(※2)資材・ノウハウの提供などをおこなっています。

また、食品事業者や自治体に対しては、有機栽培米・加工品の販売、下水汚泥や食品工場ざんさなどを農業資材に加工するための技術・資材の提供、有機野菜の販売、有機農業者の紹介、有機農業や環境にやさしい栽培体系への転換支援などを実施。消費者向けには国産の有機栽培米を使った玄米、白米のおかゆ製品を販売しています。
※1 水稲の節水型直播栽培:田に水を張らずに種もみをまき、その後も田に水を貯えることなく雨水などのみで栽培する方法のこと。
※2 バイオステュミラント:植物や土壌に作用し、本来持っている能力を引き出すことで、植物のストレス耐性向上、生育促進、品質・収量改善、貯蔵性向上などをもたらす、肥料や農薬とは異なる新しい農業資材のこと。
大手外食チェーンも注目の技術
NEWGREENの技術は、さまざまな企業から注目を集めています。
なかでも牛丼チェーン「松屋」を展開する株式会社松屋フーズは今年、NEWGREEN、芙蓉総合リース株式会社と連携し、自社でのコメ生産に乗り出しました。松屋フーズの発表によれば、NEWGREENから資材とノウハウの提供を受け、千葉県木更津市で水稲の節水型直播栽培に挑んでいるとのこと。現在はまだ実証実験の段階ですが、成功すれば2026年ごろから自社での水稲栽培を開始し、牛丼チェーンにおける仕入れコストの削減などに役立てられる見込みです。

また、水稲の節水型直播栽培は育苗や田植え、田の水管理などが省力化でき、温室効果ガスのひとつであるメタンガスの削減効果も期待できます。そのため、松屋フーズは将来的に、日本の農業人口の減少、生産コストの高騰、温室効果ガスの排出抑制といった課題の解決にも貢献していきたい考えを示しています。
日本から世界へ。環境問題への貢献も目指す
NEWGREENは今後、課題先進国である日本の農業と世界のコメ市場、グリーン市場を結びつけていくことを目指しています。コメを中心にテクノロジーなどを活用した栽培技術や有用な資材を提供し、農業者の所得向上に貢献。同時に気候変動や食糧危機といった地球規模の課題解決に挑むことで、より良い世界の実現をビジョンとして描いています。
日本と種類は異なりますが、コメは世界中で食べられている穀物のひとつ。NEWGREENの発展と拡大が世界に与えるインパクトは計り知れず、同社の今後の動向に注目必至です。
Text:Teruko Ichioka






