
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、英国の蝶の個体数減少を防ぐプロジェクトについてご紹介します。
2025年版ヨーロッパの蝶のレッドリストが公開
絶滅の恐れのある生き物を一覧表にした「レッドリスト」。国際自然保護連合は、2025年10月11日に最新版『ヨーロッパの蝶のレッドリスト』を公開しました。同リストは名前の通り、ヨーロッパに生息していて絶滅の危機に瀕している蝶にスポットを当てています。今回は442種が評価され、そのうちの一種である「Pieris wollastoni (マデイラオオシロチョウ)」が絶滅したことも報告されました。

また、現存する441種のうち65種が、欧州レベルで絶滅の危機に瀕しているとみなされているようです。なかでも注目したいのが、特定の国や地域にのみ生息する「固有種」の現状です。ヨーロッパに現存する固有種148種のうち、29種が絶滅危惧種に、32種が準絶滅危惧種に指定。これは、ヨーロッパ固有である蝶の40%以上が、現時点で絶滅危惧種またはそれに近い状態にあることを意味します。
英国で進む、蝶の絶滅を防ぐためのプロジェクト
そして、固有種と同様に減少が危惧されているのが、昔からその地に生息している「在来種」です。現在イギリスでは、在来種の蝶を守るためのプロジェクトが進められています。
アングリア・ラスキン大学(以下、ARU)の研究者は、野生動物公園「ジミーズ・ファーム&ワイルド・ライフパーク」とバイオバンクである「ネイチャーズ・セーフ」と協力し、蝶の卵を冷凍保存することで個体数減少を防げるかを調査しています。

今回、研究モデルには「ジミーズ・ファーム&ワイルド・ライフパーク」内で繁殖・飼育されている「キアゲハ」という種類の蝶が選ばれました。英国レッドリストにて、「絶滅危惧種」に指定されている在来種「イギリスアゲハチョウ」に遺伝的にも近く、個体数も多いことが理由です。そして調査方法の詳細ですが、まず-196℃の液体窒素で凍結した蝶の卵を孵化させて育てます。その後、発育や繁殖の成功率などを凍結していない卵から生まれた蝶と比較するそうです。
凍結保存という方法自体は以前からありましたが、蝶の卵に施すのは初めてとのこと。成功すれば、在来種の蝶を救える可能性が高まると期待されています。
卵を凍結保存するメリットとは?
卵の冷凍保存が効果的であれば、計画的に交配や飼育管理をおこなう「繁殖計画」や、絶滅した地域の蝶を復活させる「再導入」などの支援につながると言われています。ARUのアルヴィン・ヘルデン博士も、「この研究が成功すれば、イギリスのアゲハチョウの未来を守り、蝶の保護活動全体に大きく貢献する可能性があります」と話しているのだそう。

また今回のプロジェクトは、蝶以外の生き物の活用や冷凍保存技術の開発など、幅広い分野にも重要な意味をもつと考えられているのです。
美しい蝶を次世代に残すために
人や環境、温暖化など、さまざまな理由で減少している蝶の個体数。今回は英国の事例を紹介しましたが、この問題はわたしたちが暮らす日本でもおきています。美しい蝶を次世代に残すために自分には何ができるのか、改めて考えてみるのも良いかもしれません。
Reference:
IUCN Red List of Threatened Species|IUCN
PRESS RELEASE|Butterfly Conservation Europe
European Red List of Butterflies 2025|Butterfly Conservation Europe
Project aims to ‘freeze’ decline of iconic butterfly|ARU
Scientists plan to freeze butterfly eggs with cryopreservation to save British species|euronews
「固有種:の使い方 わかりやすく解説|weblio
草 花 在来種・外来種別リスト|国土交通省北海道開発局
植物と花粉媒介者(ポリネーター)|北海道立総合研究機構
Text:Yuki Tsuruda






