
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、2025年12月5日(金)より公開の映画『⼿に魂を込め、歩いてみれば』をご紹介します。
ガザ地区で増え続けるジャーナリストの犠牲者
パレスチナ自治区のイスラム組織・ハマスが、イスラエルに対し前例のない攻撃を行ったことから始まった2023年のパレスチナ・イスラエル戦争は、2025年10月7日で丸2年が経過しました。ガザ保健省は、2023年の攻撃開始以降、死者は6万6000人を越え、そのうち約2万人が子どもだと発表。10月10日には停戦合意が発効したものの、イスラエル軍は合意を無視した形でパレスチナ・ガザ地区へ攻撃を続けており、一般の人々の犠牲も増え続けていると報道されています。
イスラエル軍により封鎖されたガザ現地では、国際メディアは取材をおこなうことが難しく、結果として現地からの報道の多くはパレスチナ人のジャーナリストが担っていると言います。そんな中、この2年で多くのパレスチナ人を含む最前線で活動を続けるジャーナリスト255人が殺害されており、より一層現地の声を届けることが難しくなっています。
若きフォトジャーナリストとイラン人監督の交流の日々から見えるガザのいま

映画『⼿に魂を込め、歩いてみれば』の主人公は、ガザ北部に暮らす24歳のパレスチナ⼈フォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナです。
イラン出⾝のセピデ・ファルシ監督が、ビデオ通話でファトマと約1年間にわたり対話を重ねるシーンを中心に展開される本作。ある日は友達の家から、またある日は避難先のシェルターから、ガザの現状をファトマの目線を通じて映し出します。
「ガザの外に出て写真を勉強したり各地を旅することが夢」と語り、希望を見いだすことが非常に困難な状況にある中でも前を向くファトマの姿が印象的です。
「響き渡る死を望む」ファトマがわたしたちに届けるメッセージ

©Fatma Hassona
現在のガザから国際社会に向けた発信活動は、命の危険と隣り合わせの行為です。作中でも、通話がつながる度に監督とファトマは画面越しの再会を安堵し合っていることからも、現地の緊迫した様子が分かります。
ふたりが交流をはじめて約1年が過ぎた2025年春、本作が世界三大映画祭のひとつであるカンヌ国際映画祭での上映が決定。
「自分がガザの戦争を伝え続けなければ、一体誰がやるのだ」と走り続けてきたファトマは、監督とその喜びを分かち合いますが、その翌日家族とともに空爆にあい、帰らぬ人となってしまいます。
「もし死ぬのなら、響き渡る死を望む」と生前語った彼女は、廃墟となり虐殺が続くガザの真実を記録することをあきらめず、その25年の短い生涯を生き抜きました。
パレスチナの人々が置かれている惨状が語られる機会が少ない中、ガザの現状を伝える情報源としての役割を越え、わたしたちの心に深く訴えかけてくる作品です。ガザの外にいるわたしたちが本作を観ることは、ファトマの生きた証を伝え、彼女のように声を上げ続け命を失った人々に想いを寄せるなど大きな意義を持つでしょう。
『⼿に魂を込め、歩いてみれば』概要
2025年12月5日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
監督:セピデ・ファルシ
登場⼈物:セピデ・ファルシ、ファトマ・ハッスーナ
配給:ユナイテッドピープル ©Sepideh Farsi Reves d’Eau Production
HP:https://unitedpeople.jp/put/
Photo:Fatma Hassona
Text:kagari






