
「書評アイドル」として執筆活動しながら、モデルなど幅広く活動している20歳のわたし、小春による書評フォトエッセイ連載企画 “Steenzブックレビュー”。
今回は、「自分の気持ちにぴったりな言葉を見つけたい人」におすすめの1冊『夜景座生まれ』です。今回も、わたしと同じく以前10代名鑑に出演されていた写真家の村山莉里子さんに撮影をいただいて、「感情と風景が交差するところ」をコンセプトに、新しい本との出会いをみなさんに届けられたらと思います。

あいまいな気持ちを表す言葉はどこにある?
この世界にはひと言で言い表せられない気持ちや景色が沢山ある。でもわたしは感じたことをぴったり表す言葉が見つからず、つい「かわいい」や「すき」といった身近で簡単な言葉で済ませてしまう。でも、それでは何かが足りない気がして、いつも「なんか違うな」と思う。
ありきたりな言葉で表現してしまったせいか、時間が経つとその時の感情や景色の記憶もぼんやりしてしまうことに最近気づいた。そんな曖昧な気持ちや美しい景色を表す言葉は、どこにあるのだろう?

詩との出会いが変えたこと
今回紹介するのは、最果タヒさんの『夜景座生まれ』という詩集。わたしは今まで詩をあんまり読んでこなかった。小説と違って起承転結がないし、文が短くて楽しめないと思っていたからだ。でも、人に勧められて手に取ってみた最果タヒさんの詩集を読んでその考えが変わった。
自分の感じていることや考えていることにぴったりと合うような言葉遣いに出会えたことで、わたしの心が、わたしの思い描く景色とキレイに重なる感覚を覚えたからだ。そこからわたしは詩を読むようになった。たった1ページくらいしかない言葉だけで細かいところまで景色が想像できる、好きな詩の中にいる時間はとても居心地がいい。

特に私がお気に入りなのは「ときめき狂」という詩。
「雨音ばかりがずっとクリアになって、ぼくはいつか自分が死ぬことを当然だって言い切る大人になってしまう。」
「虚しい」だけでは言い表せられない気持ちがこんなにも鮮明に言葉になるのかと衝撃を受けた。そして、言葉になることで自分の気持ちも整理されて救いにもなった。今では、忙しい日々の中でふと詩を開く時間が、自分を取り戻すひとときになっている。

言葉を集める旅としての詩
『夜景座生まれ』というタイトルには「今という瞬間から、自分が生まれた瞬間に遡っていく」という意味が込められているそう。詩は、そんな時間の流れの中で、感情や記憶を言葉にしてくれる存在なのかもしれない。

生活している中で言葉と出会う方法って、本、映画、歌、SNSなど身の回りに沢山ある。詩もその中のひとつだと思う。好きな言葉、昔言い表せなかった感情、今の自分の気持ちと重なる言葉、いろんな気持ちに合う言葉がどこかにあるはず。そんな言葉を集めながら、自分の感覚を確かめたり、思い出したりするために、好きな詩をこれからも自分の中に集めていきたいな。

今回紹介した本
最果タヒ『夜景座生まれ』(新潮社刊)







