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最近、空を見てなかった人へ。Steenzブックレビュー 【本と私と。】

最近、空を見てなかった人へ。Steenzブックレビュー 【本と私と。】

「書評アイドル」として執筆活動しながら、モデルなど幅広く活動している20歳のわたし、小春による書評フォトエッセイ連載企画 “Steenzブックレビュー。

今回は、「最近空を見てなかった人」ににおすすめの1冊『空の名前』です。今回も、わたしと同じく以前10代名鑑に出演されていた写真家の村山莉里子さんに撮影をいただいて、「感情と風景が交差するところ」をコンセプトに、新しい本との出会いをみなさんに届けられたらと思います。

帰り道に久しぶりに空を見上げたら

最近、大学の帰り道にふと車窓から空を見上げた。そこに広がっていたのは、茜色をした綺麗な夕焼け。そういえば、最近はスマホばかり見ていて、空を見ていなかったな……と気づかされた。

私は夏の空がいちばん好き。迫力のある入道雲や、いつもより茜色に染まる夕焼け。そんな空の名前をもっと知りたくて、小さい頃からお気に入りだった写真集を久しぶりに開いてみた。それが、今回紹介したい一冊。
この本は空にまつわる写真集で、「雲」「水」「氷」「光」「風」「季節」の6つの章で構成されている。写真だけでなく、空の名前と説明、それにまつわる古文・和歌などの言葉も一緒に紹介されている。

例えば、入道雲のページには、どんな雲なのかの簡単な説明に加え、蕪村の句や、地域の方言が載っている。中でも私のお気に入りは「光」の章。薄明や暈(かさ)など、儚くて美しい光の現象を捉えた写真は、何回みても惹き込まれてしまう。

どんなときに空を見上げてる?

空を見上げたくなる瞬間って、きっと人それぞれあると思う。落ち込んでいるとき、疲れたとき、楽しいことがあったとき、ぼーっとしたいとき……空を見上げるとき、わたしの中にも、いろんな気持ちがあった。

たとえば、学校をサボって河川敷で夕焼けを眺めた日は、「いつまで頑張ればいいんだろう」って絶望していた。好きな歌や雑誌の名前で特別に思っていた17歳最後の日には、「この特別な日が終わっちゃうんだな」と思って、沈む夕日をずっと見ていた。反対に、バイトを頑張った日や、友達と仲直りできた日に綺麗な夕焼けが見えると、もっと幸せな気分になれる。空の景色と日常はいつも繋がっている。

空の名前を思い出しながら見る景色

この本のあとがきには、「地球がスタジオ」という言葉が出てくる。自然の景色は、四季の移ろいがあったり、古くから歌を詠まれたり想いを馳せられてきた。空を見てるとその気持ちもわかる。嬉しい時も悲しい時も空が綺麗だなって思う気持ちはずっと変わらない。

この本に載っていた沢山の空の名前を思い出しながら、私はまた空を見上げるようになった。スマホの情報ばかりに気を取られ、慌ただしい日々のなかで、つい置いてけぼりにしていた自分。少しだけ、空が好きでずっと眺めていたあの頃みたいなありのままの自分を取り戻せた気がしている。

今回紹介した本

『空の名前』/ 高橋健司

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小春

小春(こはる) 2004年生まれ。大学生、書評アイドル。12歳からアイドル活動を始め、2017年〜『週刊読書人』でweb連載。「カンコー委員会」一期生、三期生(商品開発)の他、『NHK高校講座現代文』で生徒役を務めた。「ミスiD2021」では本と女優賞を受賞。大好きな本を中心に書評やモデル、俳優など幅広く活動中。

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