
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、7月11日(金)より公開される映画『ザ・ウォーク〜少女アマル、8000キロの旅~』をご紹介します。
世界で増える難民。約4割が18歳未満の子ども
「難民」という言葉から、どんな人々を想像するでしょうか。
政治的な対立や差別、迫害など、何らかの理由で祖国にいられなくなった人。さまざまな支援を受けながら、なんとか日々を生き延びている人。もしかすると多くの方は、そんな姿を思い浮かべるかもしれません。

©JEAN DAKAR
世界各地で紛争や戦闘が勃発し、地域によっては、一部の民族から別な民族への迫害などが問題となっている昨今。自国から逃れた難民の数はここ10年で倍増しており、2025年4月末時点では、約1億2000万人もの難民がいると発表されています。特に注目すべきなのが、その内訳の約4割を18歳未満の子どもが占めていること。家族や友人と穏やかな子ども時代を過ごしたり、毎日学校に通ったりする当たり前の日常や権利を奪われ続けている子どもたちが世界には大勢存在しているのです。
世界を旅する人形のアートプロジェクトを追う、映画『ザ・ウォーク ~少女アマル、8000キロの旅~』
そうした難民の子どもたちが生きる日々や、難民問題そのものについて深く考えさせられる映画が、近日公開されます。タイトルは、『ザ・ウォーク ~少女アマル、8000キロの旅~』。
この映画の主人公は、シリア難民の少女をかたどった3.5メートルの人形「アマル」です。シリアは、難民の出身国で最多のスーダンに次ぐ、世界で2番目に多くの難民が生じている国であることを知っていると、映画をより多角的に観ることができます。
映画では、世界の人々へ難民の声を伝えるため、アマルがシリア国境からヨーロッパを横断するパブリックアートプロジェクト「TheWalk」をスタートします。トルコ、ギリシャ、イタリア、フランスなどで多くの人々と対話や交流をしながら、一歩ずつ歩みを進めていくアマル。訪れた先では、現地に暮らす人からお祭りムードで温かく歓迎されることもあれば、「元いた国へ帰れ!」と罵声を浴びせられることもあり、人々の反応は実際の難民に向けられるまなざしと同様にさまざまです。

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また、作中では、3人の難民が登場します。アマルになりきり、希望や恐れを語るシリア難民の少女アシル。戦火から逃れ、アマルを動かす人形使いのシリア難民 ムアイアド。パレスチナ人のフィダ。それぞれが体験した悲しみや喪失感が、各国を訪れさまざまな反応を一身に受けるアマルと静かに重なり、響き合う描写もあり、データや資料だけでは想像することが難しい、ひとりの人間としてのリアリティあふれる難民の声を観客に届けます。
アマルの視点で表現される難民。監督が伝えたかったこととは
「TheWalk」は、17カ国166の町や都市で200万人以上と出会い、100万ドル以上の寄付を集めてきたプロジェクトです。ただひたむきに平和や自由を望むアマルの声に、世界の人々が大きな共感を寄せ、一大ムーブメントとなりました。

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「作品を通して、難民が社会の重荷であるとか、巻き添えであるという認識を変えたいと思っている」と、中東からの移民が多数やってくる東南ヨーロッパ・バルカン半島出身のタマラ・コテフスカ監督は語っています。
作品を観た後は、ひとりひとりの心の中にアマルが残したメッセージを、きっと誰かに伝えたくなることでしょう。アラビア語で「希望」を意味するアマルが見たものとは。そして、自らの居場所を模索する旅路のラストは、ぜひ劇場で見届けてください。
『ザ・ウォーク ~少女アマル、8000 キロの旅~』概要
2025年7月11日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
監督:タマラ・コテフスカ
登場人物:アシル・エルセプティ、ムアイアド・ルーミエ、フィダ・ジダン、マリア・アブドゥルカリム、ラナ・タハ、ローマ教皇フランシスコ
80 分/イギリス/2023 年/ドキュメンタリー
公式HP:https://unitedpeople.jp/walk/
Reference:
https://www.unhcr.org/global-trends
https://www.unhcr.org/jp/learning-about-refugees
Text:kagari