Steenz Breaking News

BTSメンバーが除隊へ。世界やアフリカ諸国の「兵役」から平和のあり方を考える【Steenz Breaking News】

BTSメンバーが除隊へ。世界やアフリカ諸国の「兵役」から平和のあり方を考える【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、世界の兵役の実情とアフリカ諸国における兵役についてお伝えします。

6月、BTSの全メンバーが兵役から戻ってきた!

BTSのSUGAが6月21日、公益業務に従事する社会服務要員としての勤務期間を終え、話題となりました。SUGAが戻ってきたことで、BTSは7人のメンバー全員が兵役を終えたことに。世界中の多くのファンから、完全体でのステージ復帰が待ち望まれています。

そもそも韓国では、満18歳から28歳までの男性に18〜21カ月間の兵役義務が課されています。そのため、人気アイドルや芸能人が兵役で活動を休止するというニュースをたびたび目にします。

 

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今回のニュースをきっかけに、「兵役の有無」という観点で世界を眺めてみると、実は韓国以外にも、兵役を実施している国がたくさんあることに気づきます。では、どのような国が兵役をおこなっているのでしょうか。

兵役義務がある世界の国とは

現在、兵役の義務がある国は世界に66カ国あり、実際の稼働はないものの法律上の兵役義務がある国は16カ国あります。

兵役といっても、イスラエルのように男女共に徴兵が実施されている国もあれば、エジプトのように国外に住んでいれば7000米ドルの支払いで徴兵を免除できる国など、国によってルールは様々です。

筆者の住むアフリカでは、エリトリアやモザンビーク、スーダン、モロッコなどで法律上の兵役義務、または実際の兵役が採用されています。

そうした国の中でも今回、徴兵から逃れてウガンダにやってきたエリトリア人に話を聞くことができました。彼はなぜ、自国の兵役義務を拒否し、他国に移り住むことを決断したのでしょうか。

アフリカでトップクラスに厳しい徴兵制がおこなわれている国

実は東アフリカに位置するエリトリアは、欧米のメディアなどから「アフリカの北朝鮮」と呼ばれている独裁国家で、国民は無期限の兵役義務を負わされます。日本の高校2年生に相当する年齢のときに軍隊の試験を受け、成績が良ければ学業を続けられますが、それ以外の人には兵役が待っています。いったん徴兵されると除隊の可能性はなく、徴兵忌避者や脱走兵が後を絶ちません。

しかし、徴兵忌避者や脱走兵は逮捕されるだけでなく、彼らの家族に対してまで拘束や自宅からの強制退去が実施されています。その厳しさは、国連調査委員会がエリトリアの徴兵制度を「奴隷化」とも表現するほどです。

 

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徴兵制から逃れてウガンダに来たエリトリア人は、自国を出たことについて「ウガンダに住んでいる叔父さんを頼って、この国に来た。一度エリトリアに戻ったら逮捕、もしくはもっと酷いことが待っているかもしれない。一生母国に帰れない覚悟で逃れてきた」と語ります。それでも、「エリトリアを出て初めて自由を感じたし、ウガンダにはエリトリア人コミュニティもあるから満足している」と言います。

アフリカ諸国が徴兵制度を取り入れるワケ

エリトリアなどのアフリカの複数の国は、そもそもなぜ、徴兵制度を国の仕組みとして採用しているのか。その理由を考えるひとつの糸口に、「テロ対策」というキーワードがあります。

近年、アフリカ諸国が軍事・防衛において重視しているのがテロ対策です。東アフリカでは、ソマリアを拠点とした「アル・シャバーブ」という組織のテロが多発していたり、西アフリカでもイスラム過激派組織が活動していたりと、常にテロの脅威があります。その中で、兵役の重要性が高まっていると考える人がいるのです。

先述の徴兵制から逃れてきたエリトリア人も「母国・エリトリアは、地理的にも周辺国の脅威がある」と話していました。

また、アフリカ諸国の失業率の高さは、若者を兵役に取り込みやすい背景となっています。

多くのアフリカの国で「大学を卒業しても職がない」と言われるほど雇用不足が問題となっている中、「兵役に就けば安定した生活と給料を得られる」と考える若者もいるのです。

「兵役」を切り口に平和の実現を考える

今回の取材を通して感じたのは、国の防衛力の一端を担う兵役の経験は、ときに「国家のために犠牲になる覚悟」のようなものを人々の中につくりあげる可能性もあるということです。厳しすぎる徴兵制の存在によって母国を失う経験をしたエリトリア人からさまざまな話を聞くにつれ、兵役という制度は、単に国家の軍事力・防衛力を高めるだけでなく、人々に思想にも大きく影響していくように感じたのです。

アフリカでは、テロや貧困が兵役を社会に定着させる背景となっており、さらに世界を見渡せば、もっと複雑な事情が絡み合って、兵役の実施や周辺諸国との争いが発生している現実もあります。世界の情勢が不安定ないまだからこそ、改めて兵役の必要性と影響力について考えてみるべきではないでしょうか。また、平和の構築を考える上で、戦争や平和といったテーマを日本でも身近な人と日頃から話していけるようになるといいのではないかと感じました。

References:
GNV「世界の徴兵制」
Nan Media「The fee for conscription settlement for expatriates in Egypt has been raised to $7,000」
360 Mozambique「FADM: New Law Extends Military Service to Six Years」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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