
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカの軍事力ランキングと軍事拡大の背景についてご紹介します。
不安定さが増している世界情勢
暗雲が立ち込めている、昨今の世界情勢。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃、中国の台湾への圧力強化、北朝鮮によるミサイル発射の頻発化に、最近ではイランとイスラエル間の戦闘も勃発し、世界が不安定な状態になってきている兆しは、枚挙にいとまがありません。
そうした中で、最近、ドイツが軍にかける予算を増やしたり、アメリカとフィリピン、韓国、日本が参加した合同演習「カマンダグ25」がおこなわれたりしていることから、各国の軍事力に関心が集まっています。
アフリカの軍事力ランキング上位国はどこ?
2025年1月、145の国と地域の軍事力に関するデータを調査しているGlobalFirepowerより、「世界の軍事力ランキング」が発表されました。このランキングでは、アメリカが1位、ロシアが2位、中国が3位という結果に。日本の自衛隊は憲法上、軍隊ではないとされていますが、順位の中には日本も入っています。日本は8位に相当するとされており(※)、その順位の高さに驚く方も多いかもしれません。
※一部の国・地域のデータに誤りがある可能性が指摘されています。
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では、筆者の暮らすアフリカ各国の軍事力はどのようになっているのでしょうか。
先述のGlobalFirepowerによれば、アフリカ地域における軍事力ランキングの第1位はエジプトだといいます。同国は、世界でも19位の軍事力を有しているとされています。
エジプトは最近、イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘による影響を強く受けています。というのも、戦闘が始まった2023年10月以降、エジプトには10万人以上のパレスチナ人が入国。エジプト政府はパレスチナからの難民受け入れを拒否しているため、ガザ地区との国境の防衛を強化しているようです。また、エジプトはアメリカから多額の軍事支援を受けています。これには「イスラエルとエジプトの平和を維持してもらいたい」という思惑がアメリカにある、という背景があります。
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第2位は、アフリカ北西部に位置するアルジェリアです。
同国はかつてフランスの植民地で、第一次世界大戦と第二次世界大戦では、アルジェリア人がフランス軍に徴兵させられたことがあります。また、現在のアルジェリア軍はフランスからの独立のために戦った歴史があります。
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第3位は、アフリカ南西部に位置するナイジェリアです。
ナイジェリアでは、反政府勢力などの武装組織とナイジェリア軍との戦いの中で、同軍の攻撃によって民間人が死亡する事件が頻繁に起こり、問題となっています。2023年12月には、軍のドローンが誤って民間人を攻撃し、多数の死傷者が発生しました。非常に嘆かわしい事件ですが、ナイジェリアではドローンの軍事利用が急速に進んでいることがうかがえます。
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軍事より内政の安定を目指す国も
一方で、軍事力の小さな国として、現役軍人が最も少ない国・第1位は西アフリカに位置するリベリアです。
同国の兵力は1500人ほど。エジプトの現役軍人が30万人を超えていることを考えると、いかに少ないかがわかるでしょう。リベリアは長年内戦があったことで、軍事力の拡大ではなく国の安定を目指しています。そのため、軍隊の所属人数が少なくなっています。
ほかにも、ベナンやガボン、コンゴ共和国も兵力が少ない国として知られています。ただ、これらの国は、決して治安が良いわけではなく、外国からの軍事支援を受けているといったさまざまな背景があると考えられます。
アフリカでいま、ロシア・中国の存在感が増している
近年アフリカでは、イスラム過激派組織の勢力拡大に対する対策として軍事力を高める国も多くあります。その中で、かつて植民地支配をしていた欧州諸国に代わって、ロシアや中国とアフリカ各国間の結びつきが強くなってきています。
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ロシアはアフリカの43カ国と軍事協力協定を締結しているだけでなく、サハラ以南のアフリカにおける最大の武器貿易相手国です。
加えて、「戦争ビジネスとは?終わらないアフリカ紛争の裏側にある大きな力」でも取り上げたように、中央アフリカやスーダンなど10カ国以上でロシアの民間軍事会社ワグネルが軍事ビジネスを展開しており、アフリカ各国の軍は傭兵を外注するようになっています。
また、アフリカ各国は中国との軍事演習、海軍出港、軍事交流も実施しており、経済や投資だけでなく、軍事でも強い結びつきがあります。
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平和の実現に向けて、なにができるだろう?
こうした外国からのアフリカへの軍事的なアプローチは、アフリカ大陸内でとめどない軍拡競争を引き起こす可能性があります。近現代の戦争・紛争は、当事者となる国だけでなく、援助している国など世界中の国々が複雑に関係しているもの。日本もアメリカなど各国との合同演習をおこなっていますから、その複雑な関係の中に入り込んでいる可能性は否めません。いまもなお、紛争で多くの命が奪われるアフリカで、軍事拡大ではない平和構築のための手段を、わたしたちにも考える責任があるのではないでしょうか。
References:
BUSINESS INSIDER AFRICA「Top 10 African countries with the strongest military power in 2025」
BUSINESS DAY「Top 10 African countries with the strongest military strength in 2025」
BUSINESS DAY「Top 10 African countries with the smallest active military forces in 2025」
笹川平和財団「『クーデターの時代』のアフリカ(前編):ロシアと中国の積極関与と欧米の影響力低下」
Think Tank「Russia in Africa: An atlas」
Text:Hao Kanayama