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アフリカでギャンブルが社会問題に。テクノロジーがギャンブル依存を加速させる理由とは【Steenz Breaking News】

アフリカでギャンブルが社会問題に。テクノロジーがギャンブル依存を加速させる理由とは【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカで社会問題化しているギャンブルについて、現地での取材をもとに現状をお伝えします。

一大産業であり、社会問題化しているアフリカのギャンブル

「ギャンブル」というと、日本ではしばしば、カジノを含む総合型リゾート施設(IR)の建設や、オンランカジノを利用した違法な賭博の実施が大きな問題となっています。

そうした日本の状況から、視点をアフリカへと移してみると、実は最近、アフリカでもギャンブルが社会問題化していることに気づきます。ギャンブル依存症になる人や、賭け事をめぐるトラブルが増えているのです。

ギャンブルは近年、アフリカにおいて大きな産業へと成長しました。アメリカの調査会社のレポートによると、2023年におけるアフリカのギャンブル市場の規模は約8,700億円に達したそう。この市場は、2032年には現在の約2倍に拡大すると言われています。

ウガンダではサッカー賭博が人気。その理由とは

アフリカでは、スポーツ賭博やカジノ、宝くじなど、多様なギャンブルが存在しています。その中でも特に人気なのが、サッカーをはじめとしたスポーツ賭博です。スポーツ賭博は、日本では違法です。しかし、アフリカでは、北アフリカや少数のムスリム国を除いて、ほとんどの国で合法化されています。

実際、筆者の住むウガンダでも、サッカー賭博は人気です。なぜなら、サッカーはウガンダの人気スポーツであり、趣味としている人が多いから。日本のように娯楽が多様なわけではないウガンダでは、男性に趣味を聞くと、ほとんどの人が「サッカー」と答えます。それくらい、サッカーはウガンダ人にとって身近で愛着のあるスポーツです。

加えて、世界にはギャンブル事業をおこなう企業がスポンサーとなっているスポーツクラブもたくさん存在します。アフリカでもサッカー賭博の広告は身近なところに溢れており、サッカーというと自ずとギャンブルも付随してきてしまうのです。

東アフリカでは、ギャンブル施設が街中にある国が多い

サッカー賭博が人気なウガンダを含めた東アフリカでは、ギャンブルは非常に盛んで、街のあらゆる場所にギャンブル施設を見かけます。

では、そうした施設にどのような人が来ているのか。筆者が実際に調査してみたところ、利用者の多くはバイクの運転手でした。彼らがギャンブルをする理由を尋ねてみると、「貧しくて収入が不安定。だからこそ、1日に稼いだお金を生活必需品ですぐに使い切ってしまうよりは、運に頼って収入を数倍にした方が良い」と考えるからだと言います。

少額でスタートできる仕組みが、人々をギャンブルの沼に追い込む

ギャンブルには、「依存」という大きな問題も伴います。実際、筆者が取材したサッカー賭博利用者の中にも、依存症に陥っているのではないかと感じる人がいました。サッカー賭博では、最大の利益を出した人でも、日本円で約6,000円を手にする程度。ほとんどのケースで損をします。利用者が期待する、「少ない収入をなんとか数倍にしたい」という想いを叶えた人はいないと言っても過言ではありません。

それでもギャンブルをやめない、もしくはやめられないのは、1回あたりに賭ける金額が少ないからです。サッカー賭博では、1回あたり約200円程度から賭けを始められるといいます。多くのギャンブラーは少額を賭けることを毎日繰り返すため、1回負けた時の金額は少額です。

しかし、毎日ギャンブルを繰り返せば、当然、手元のお金は徐々に減っていきます。1回の負ける金額が少ないために「損額に目がいきづらくなる」ということが、彼らがギャンブルにハマってしまう一因かもしれません。

テクノロジーはギャンブルへのアクセスを容易にさせる

さらに、モバイルマネーの普及も、ギャンブル依存に拍車をかけています。現在、アフリカではオンラインのスポーツ賭博なども人気で、銀行口座を持たない人もお金の保管や送金が可能であるモバイルマネーを使い、オンラインでギャンブルをするようになっています。

しかし、オンラインのギャンブルサイトにモバイルマネーから容易にお金をチャージできるようになると、ギャンブル依存は深刻化しかねません。ギャンブルサイトに何度もお金をチャージし、勝ちや負けを繰り返しながら、結果的に大きな損失を抱えてしまうといったケースも考えられます。

取材をして感じたのは、多くのギャンブラーはギャンブルの勝敗に関して帳簿をつけているわけではないということ。生活費や食費、教育費がいつの間にか消えてしまったということが容易に起こるのです。

貧困が生むギャンブル依存。政府などの対策が必須

各国政府は年齢制限などの規制を設けていますが、実情はいまもなお、あらゆる年齢層の人がギャンブルを頻繁に利用し、依存しています。アフリカにおけるギャンブル市場の成長は、貧困と隣り合わせ。収入の少ない人が1度に日給の数倍を儲けたという経験、もしくはそういった噂を耳にしたことが依存を生んでいるのです。

ギャンブル施設の社会への浸透とテクノロジーの発展が、いま、アフリカでギャンブルへのアクセスをさらに容易なものにしています。そうした社会の変化をきちんと捉え、政府などが対策を講じることが求められています。

References:
Astute Analytica「Africa Gambling Market – Industry Dynamics, Market Size, And Opportunity Forecast To 2032」
Africa Gambling Market Size, Share | Forecast [2032]

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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