
こんにちは、現在ニューヨークの大学で演劇を専攻しているみちほです。
現在留学をしている10代・20代のリアルをお届けする企画「Steenz Abroad」。今回は、私が実際に体感しているニューヨークの教育や演劇文化の特徴についてお伝えします!
教育文化のちがい
まず、アメリカの大学を受験をした際に気づいたことから。日本では、演劇(特に歴史や文化としてのものではなく、実技としての演劇)を学べる4年制大学は少なく、多くは都市部に集中しています。さらに、裏方となると、4年生制大学の選択肢は数えるほどしかなく、専門学校がほとんどです。
その点アメリカの大学は、約3校に1校が演劇専攻を設置していて、ほとんどの場合、演技や裏方も専攻として勉強することができるのが特徴です。これは「アメリカが凄い!」という単純なことではなくて、演劇が文化として根付いていて、学問として社会的に認識されているからだと感じます。
また、大学の友だちから聞いて驚いたのが、中高時代の演劇経験の違いです。日本で演劇部といえばストレートプレイ(セリフ劇)が主流で、ミュージカルをやることは少ないのですが、アメリカではどちらも行われ、むしろミュージカルの方が主流のようです。
演劇はProtest!
次に、実際に学校で演劇作品を作る中で気づいたことです。
私の大学にはPlaywrite(劇作)専攻とDirection(演出)専攻があり、年間10本以上の新作が上演されています。劇作専攻の生徒たちが書く作品は、どれも自分たちの世代についての物語で、リアルな声を反映しているため、観劇するたびに感心させられてます。
特にすごいのは、単に「こんな人生いやだ!」とか「恋が辛い!」といった話ではなく、身近な不満や問題を社会と結びつけて、その社会を暗に批判したり、観客に疑問を投げかけているところです。
例えば、先学期に上演された『Scouts』という作品は、4年生のRyannが書いた作品で、ボーイスカウトに参加する男の子たちが、自分たちのアイデンティティや”男らしさ”と向き合う物語でした。ただの悩みやぶつかり合いの話ではなくて、「男らしさとは何か?」「女らしくてはだめなのか?」といったセリフを通して、異性愛規範やホモフォビアに満ちた社会に対して疑問を投げかけていました。
もちろん、すべての演劇がこのような作品ではなく、エンタメ寄りの作品も多くありますが、アメリカではより社会的なメッセージを持った演劇作品が多いと感じます。友達の1人が「アメリカの演劇はProtest(抗議)なんだ」と言っていて、まさにその通りだと思いました。
日本では、演劇がまだエンターテインメントの枠にとどまることが多いですが、若者が社会に対してProtestするような作品、人々に問いを投げかける作品が増えてほしいと、心から思います。
ブロードウェイのシステムも
最後に、観劇のシステムについて。まず、チケット代が日本と全然違います。ブロードウェイでは、「ダイナミックプライシング」という価格設定が採用されていて、観劇の需要が高い週末の夜などは価格が上がり、需要が低い平日の昼間は価格が下がります。これにより価格に幅を持たせ、より多くの人がチケットを購入しやすくなっています。
また、日本では席の種類が3つほどしかありませんが、ブロードウェイでは10種類以上もあり、こちらも価格の幅があります。さらに、どの作品でもチケットの抽選や「ラッシュチケット」(当日の朝早くに劇場に行くと、その日の公演の余りチケットを低価格で買える制度)を提供していて、安いと$45(約6,500円)でブロードウェイの公演を観ることができます。私も今年はラッシュチケットのために、友達と何度も早起きして劇場に行きました。
また、ブロードウェイはチケットが売れる限り公演を続けるロングラン形式が基本のため、人気が出ないとすぐにクローズしてしまう一方、口コミで人気が広がって1年以上公演期間が延長されることもあります。日本では基本的に公演期間があらかじめ決まっていて、どんなに良い作品でも期限が来ればクローズしてしまいます。良い作品が長く公演を続けられる仕組みがあるのは、うらやましく感じました。
今回は、アメリカの演劇文化や教育についてお伝えしましたが、次回はアメリカの大学受験などについて、より詳しくお話しできればと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
島﨑みちほのプロフィール
ニューヨークの大学に通う東京都出身の大学1年生。演劇の舞台制作、特に照明・舞台監督・プロデュースを勉強中。