
「書評アイドル」として執筆活動しながら、モデルなど幅広く活動している20歳のわたし、小春による書評フォトエッセイ連載企画 “Steenzブックレビュー。
今回は、「気持ちと振る舞いがいつもチグハグになってします人」ににおすすめの1冊『『今、出来る、精一杯。』です。今回も、わたしと同じく以前10代名鑑に出演されていた写真家の村山莉里子さんに撮影をいただいて、「感情と風景が交差するところ」をコンセプトに、新しい本との出会いをみなさんに届けられたらと思います。
ケンカことが苦手でモヤモヤ…
わたしは、ケンカが苦手。いつも言いたいことを飲みこんでしまう。でも、言いたいことを言えないままにしていると、「泣きそうなのに、なんで泣きそうになっているのか分からない。」「怒ってもいいことをされているのに、許してしまう」みたいに理屈と感情がチグハグになる。だから感情を吐き出してしまえば楽なんだろうけど泣いたり怒ったりしたいんじゃないっていう気持ちが勝ってしまって、いつも言いたいことを言えないまま。結局、流される方が楽だと感じてしまう。でも、そうやって感情を飲み込み続けていると、自分がどうしたいのかさえ見えなくなってきてモヤモヤしてしまう…。
キャラが濃くて大好きな12人の登場人物
この本の舞台は、スーパー「ママズキッチン」。そこで働く人や、その人に関わる人物の視点によって物語は構成されている。この登場人物たちはとてもキャラクターが濃い。母子家庭で年上の店長と付き合っている女子大生の篠崎、その友人で正義感が強くしっかり者の久須美、仕事の続かない彼を支える献身的な神谷、とにかく「気にしい」な坂本、八方美人のバイトリーダー西岡、タダでお弁当をくれと頼む車いすの女性客の長谷川…。さらに彼女たちに関わる計12人の登場人物によってこの物語はどんどんとカオスな展開になっていく。
登場人物たちはみんな面倒くさい人間だけど、それだけじゃなくて、それぞれの「精一杯」を持っている。例えば、私が一番共感した坂本は、人とあまり関わらずに意見も言わないで、自分の心を守ることに精一杯だ。
チグハグな感情のその先へ!
坂本は最後、とある事件でバイト先を飛び出した久須美に「間違ってないと思う!!」という言葉を伝える。そして、人に流されるのは楽だけど、自分が正しいと思っている人を守ることの充実感に気がつく。私も人に流されてモヤモヤしてしまうから、正しいと信じるもののために行動した彼女の姿がとてもすてきに見えた。
この本はしまっていた感情を吐き出させてくれる一冊。ぐっちゃぐちゃな感情全部包み込んでくれて、そんな自分のめんどくさい部分を諦めようとしないで、「分かるよ!」って一緒に叫んでくれる。ケンカは苦手だけど、チグハグでめんどうな感情も、自分とも人とも何もかも精一杯向き合って、正しいと思ったことをあきらめないで信じていきたい。
今回紹介した本
『今、出来る、精一杯。』/根本宗子/小学館