
「気になる10代名鑑」の983人目は、林遼太朗さん(17)。Youth Express Japanでの記者活動を通じて、独自の視点から若者の声を社会に発信する活動をしています。記者として「伝える力」とは何か考え続ける林さんに、活動に対する姿勢や原動力について聞いてみました。
林遼太朗を知る5つの質問
Q1.いま、力を入れていることは?
「Youth Express Japanというメディアで、記者として活動しています。この団体には15〜24歳の若者12人が所属しており、取材交渉のアポ取り、インタビュー、執筆までをひとりでおこなっています。
これまで、日本に避難してきたウクライナ難民や自衛隊など、幅広く取材してきました。直近では、障がいを持ったマイノリティが集まるイベントを取り上げています。行動力を活かし、現地に自ら足を運ぶことを大切に、リアリティある記事を執筆するように努めていますね。
また、記者としての活動を続けながら、戦争と報道の密接な関係性について考え続けてもいます」
Q2.活動を始めたきっかけは?
「太平洋戦争時代、曽祖父がビルマにて従軍経験をしていた話を聞いたことがきっかけです。幼いながらに戦争について考えるようになって。小学生の頃には、ハワイにある真珠湾基地を訪問しました。戦争はなぜ起きるのか、どうすれば防げるのか、と自然と興味が芽生えていった感じです。
明確に行動につながったのは高校1年生のとき、日本テレビのインターンに参加したことでした。戦地取材を行った記者のひとから直接お話を聞いて、報道と戦争とが結びついていることに気づかされ、記者という立場から戦争について考える意味を感じたんです。
また違った角度でいうと、『スター・ウォーズ』の影響も大きいです。作中に政治的な権力を担う『元老院』という制度が登場するのですが、この制度が戦争によって簡単に崩壊していくんです。その様子が自分にとって強く印象に残っていて。政治と戦争の切り離せなさを考えるようになっていって。
これらの要素が合わさって、報道の力で戦争をなくすために世の中に訴えていきたいという思いが生まれました」
Q3.活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「ときどき、報道の力の限界点を感じることです。
報道は、どうしても社会課題に直接的にアプローチすることができず、ほとんどの効果は間接的で。それゆえに自分が記者として活動する意味があるのか葛藤することもあります。
ですが、伝えなければ始まらないことも多くあるとも思います。記者として発信していくことが自分の役割だととらえて、これからも記事を世に送り出したいと思っています」
Q4. 活動するうえで、大切にしていることは?
「大人にはない、若者らしいまっすぐな感情で届けていくことです。
高校生という肩書きがあることで、取材相手に興味を持ってもらえたり、取材交渉がスムーズに進みやすかったりします。でもそのメリット以上に、若者らしさが届く記事を仕上げることが大切だと思うんです。
それ以外での執筆においての自分のこだわりは、相手の視点と自分の視点とを混ぜ込むようにすること。これは、たくさんの視点が宿ることで、多角的な気づきを提供できる記者でありたいという思いからです」
Q5.将来の展望は?
「政治学や国際関係、国家の政治姿勢について詳しく学んだ上で、報道業界に関わり続けたいと思っています。
いまは若者としての視点で記事を書いていますが、背景をきちんと知って、いろいろな視座を統合することで、はじめてリアリティをもって伝えられることもあります。多くのひとが、知ることを第一歩に戦争のことを考えてくれるよう、これからも伝える責任を全うしていきます」
林遼太朗のプロフィール
年齢:17歳
出身地:東京都
所属:Youth Express Japan
趣味:野球観戦、直系二郎巡り
特技:背泳ぎ
大切にしている言葉:国があなたに何をしてくれるか問うのではなく、あなたが国に何ができるかを問え」(ジョン・F・ケネディ)
Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami