「気になる10代名鑑」の976人目は、symさん（16）。美大受験を目指して美術予備校に通いながら、芸術や歴史についての課題研究や創作活動に励んでいます。「10代の能力が高く見積もられているのではないか」と世の中の疑問について話してくれたsymさんに、活動で大切にしていることや、今後の目標について聞いてみました。
symを知る5つの質問
Q1.いま、力を入れていることは？
「全日制の高校に通いながら、都内の美術予備校で絵の練習を続けています。受験に向けての練習だけではなく、絵画の大会を見据えて創作活動にも励んでいます。
自身の創作活動では油絵をメインに表現を続けています。ツヤの入っているさらさらとしたオイルを何層も重ねて塗って柔らかい肌の質感を表現したり、反射光と影がぶつかり合うポイントで紫やオレンジを活用してみたり、表現の幅を広げるため努力しています。
また、芸術と歴史への関心を活かした課題研究も計画しています。具体的には、絵の歴史の中で自己表現がいつ登場するのかを探究する予定なんです。過去の画家たちはどのような思想、哲学や本に影響されているのか。それを明らかにすることで、現代に生きる私自身も、表現を見直せる気がしています」
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Q2.活動を始めたきっかけは?
「アートスクールに小学3年生ごろから通って、紙粘土やパステルなどさまざまな画材に触れて芸術を楽しんできたことがきっかけです。さまざまな展示会にも通いつめ、自分の芸術への関心を高めていきました。
中学受験でスクールはやめてしまったんですが、中学1年生のころ美術部に入部してから創作活動を再開して、予備校も即決で通うことを決めました。
また、作家の中野京子さんの『怖い絵』をはじめとする、小説も大きく影響していると感じていて。物語の背景を読み解くのが楽しいんです。
こんな感じで、幼少期から芸術に触れ続けていた原体験がいまのわたしを突き動かす力になってくれています」
Q3.活動で大切にしていることは?
「過去に学び、変化を受け入れることを大切にしています。
ときに、過去の優れた哲学者の考え方を学ぶことによって、はじめて自分の意見を知ることができます。意見を持ち続けることは重要ですが、それが変わらない意見である必要はないと思うんです。
時代に合わせて柔軟に意見を持ちながらも、信念を言語化して、作品を生み出したいです」
Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?
「過去や歴史に思いを馳せながら、自分の手で何かを生み出す営みを世の中全体で大切にしていきたいです。
いまの社会では、情報化や効率化だけがよしとされがちだと思っていて。周囲の友だちも、理系を志望するひとが増えてきていると実感しています。
なんだか、自分たち10代に課されている能力はどんどん高く見積もられて、人間が人間らしさをよそにして変わっているように感じるんです。そうなると、今後の世の中では創作活動や文学・哲学などを軸に生きている人々はどうなってしまうのだろうか……と問題意識を持っています。
デジタルでどんなこともできてしまう世の中だからこそ、人の手や頭によってしかか生み出されない作品、言葉や考えを発信し続けていきたいです」
Q5.将来の展望は?
「いまは東京藝術大学に進学したい一心で絵の勉強をしていますが、一方で自身の創作活動のスタイルを確立したいと思っていて。
何を題材としてどのように表現するか、できるだけ早くいろいろな作品や資料から見つけ出したいです。
また、将来的には、海外でキュレーターのライセンスをとって美術館で世界中のアートを扱う展示をしたり、戦争などによって祖国からいなくなった作品返還の交渉をしたりと、多方面でアートに携わるお仕事にも興味があります」
symのプロフィール
年齢：16歳
出身地：茨城県つくば市
所属：茗渓学園中学校高等学校
趣味：読書
特技：絵を描くこと
大切にしている言葉：「意見を持ち続けたいが、変わらない意見じゃない。柔軟に時代に合わせて変わっていく意見を持ちたい」
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Photo：Someya Kaori
Text：Taishi Murakami
