
小さいころ、わたしは将来、ニューヨークをヒールでコツコツ歩くビジネスウーマンになるのだと思っていたのですが、気が付けば、アフリカの泥道を自由に歩くひとになっていました。でも、これが実際に夢がかなったのわたしの姿でした!
『Steenz Abroad』第2弾の”Hao in UGANDA”では、いつもは、『Steenz Breaking News』で、毎週アフリカのニュースをお届けしているウガンダ在住のわたし、金山葉織が、普段、ウガンダでどんな生活や仕事をしているのか紹介していきます!
東アフリカのアンダーグラウンドな音楽シーンがつくる空間の意味
まず、私のライフワーク。それは、東アフリカで音楽フェスやアンダーグラウンドイベントを主催するオーガナイザー、ステージマネジャー、DJの仕事です。アフリカの音楽といえばナイジェリア発のアフロビーツが有名ですが、私たちが取り扱っているのはテクノやエクスペリメンタル、Gqomといった東アフリカでは「アンダーグラウンド」に分類される音楽ジャンルです。
これらの音楽との出会いは、19歳のころ、アフリカを縦断中、1カ国目に訪れたケニアでのことでした。友人に連れられて行った東海岸の音楽フェスティバルで、インド洋に落ちる夕焼けを背景に、ヒジャブを被ったソマリア人の女性DJがハードなテクノを流していたり、トランスジェンダーのウガンダ人DJが会場を沸かせていたりする瞬間に出会いました。
わたしが住むウガンダでは、同性愛を認めるだけで禁固刑、同性愛性者が性行為を繰り返した場合には、最悪死刑にもなってしまう「反同性愛法案」が2023年3月に可決されましたが、アンダーグラウンドな音楽シーンは、性的マイノリティー当事者の逃げ場であり、彼らが自己表現をできる場にもなっているようです。
ジェンダーだけではなく、民族や宗教が争いの引き金にもなりうるアフリカで、音楽シーンにはこれだけ多様な民族と国籍、宗教が混在していて、互いにそれを意識させない環境になっています。
わたし自身も、日本人が圧倒的マイノリティのアフリカで、音楽がつくる幻想的な空間や一体感のおかげで、わざわざ自分が外国人であることを意識せず、他のみんなと同じように、その空間の一部として認識させてくれます。
アンダーグラウンドな音楽シーンに出会って以降、音楽は、単に聴いて楽しむだけではなく、無意識的にあらゆる人間を歓迎し、安全に自己受容と自己表現を叶えてくれるツールでもあるのだと知りました。
日本で忘れられている感覚をアフリカで取り戻す
そして、2つ目の仕事が、アフリカを専門としたライターです。移住前に知っていたアフリカとは全く違う世界観を、日本人をはじめ、世界中の人たちに、どうにか知ってもらいたいという思いで、取材をしたり、コラムを書いたりしながら、ウガンダに住むわたしの目に映ったアフリカの人々の暮らしを記事を通して発信しています。
わたしが見てきたアフリカは不条理で不都合な現実がたくさんありました。でも、彼らは、希望を求めて前に歩み続ける力強さと逞しさを失いません。そんな姿には、学べることがあふれています。わたしの言葉を通じて、そんな彼らの姿をできるだけ多くの人たちに伝えられたら嬉しいと思っています。
また、イベントを主催しているご縁で、ウガンダ国内のNPOや会社の支援プロジェクトに関わる機会もあります。NPOの活動はウガンダで迫害を受けた少数民族が住む地域にあり、孤児の保護やアルコール・ドラッグ中毒になった若者のメンタルヘルスの向上を目指したプロジェクト、児童婚を経験した若いシングルマザーの学業復帰など多岐にわたっています。
国連によると、2050年には4人に1人以上がアフリカ出身の人になるという統計もあります。日本人からすると日本とは180度異なる世界とも捉えられるアフリカ。そんな社会の一部になれる経験は、これからの世界を把握するのに役にたつと考えています。そしてこの瞬間に、発展著しく、急速に景色が変わるアフリカの大地を踏んで生きているのは、奇跡で、ありがたいことだと日々実感しています。
次回は「ウガンダは『命こそが最高の贈り物。他はおまけ』と教えてくれたから、移住を決めた。」をお伝えします。
参考:https://www.uneca.org/stories/%28blog%29-as-africa%E2%80%99s-population-crosses-1.5-billion%2C-the-demographic-window-is-opening-getting#:~:text=This%2063%20percent%20increase%20in,1%20in%2011%20in%201960.