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噂の自民党カレーを食いに行く 党本部最上階の食堂から見た政治とは?【政治POPs】

噂の自民党カレーを食いに行く 党本部最上階の食堂から見た政治とは?【政治POPs】

― 誰かが、「日本は平和だから、若者が、政治に興味を持たずにすむ」とか⾔っていたらしい。でも、政治は未来の国を良くするためにあるのなら、きっとホントは僕らのもの。なんでもいいから、興味を持とう。政治の話はそれからだ。

皆さん、はじめまして!フリーライターの中村眞大といいます!この春に大学を卒業する22歳で、普段は政治や社会運動についての取材をしています。

この度、政治をポップに発信していく新企画「政治POPS.」がスタートしました!僕がナビゲーターとなり、皆さんを楽しくわかりやすい政治の世界へと誘います。

クジラに福島県産食材!政権与党の腹を満たしてきたこだわりの政治飯とは?

政治と飯。あんまりピンと来ない二つのキーワードだけど、なんか面白そう。そんなことを思っていた時、いくつかの政党本部の建物に食堂があることを知った。政党とは、同じ政治的な目標をもって活動しているチームのようなもの。日本にはいま10の政党が存在していて、そのうち「自民党」と「共産党」の本部に食堂があることがわかった。

党の飯を食えば、その党の特徴も見えてくるのでは?僕とアシスタントのちえこの2人は、永田町駅からすぐのところにある日本最大の政党・自民党の食堂へと向かった。

自民党は日本の政権を長年担ってきた最大与党。建物の前には警察車両や警察官がたくさんいて、悪いことをしにきたわけじゃないのになんか緊張する。入り口にいる警備員さんに名前を言うと、すんなり中へと入れてもらうことができた。

食堂は建物の9階にある。エレベーターを出るとすぐにガラス張りの喫煙スペースを発見した。これが各階にあるらしい。さすがは「自民党たばこ議連」という党内グループがあるほどに喫煙率の高い自民党だ。

お昼時も少し過ぎた時間帯だったが、食堂では職員や警備員さんなどがいそいそとランチをかきこんでいた。食堂の正式名称は「レストラン サンフーズ」。1981年からこの場所で営業を続けている。

自民党ならではのメニューを聞くと、「クジラの竜田揚げ」と「メヒカリの唐揚げ」を教えてもらった。

自民党は日本の鯨食文化の普及や捕鯨の推進を掲げる政党。クジラメニューは約10年前、食堂の隣で捕鯨の会議をやっていた際に「うちの食堂でもクジラを」という幹事長の考えで登場したものだという。

一方のメヒカリは、被災地・福島名産のお魚。自民党政権が原発事故の処理水の海への放出を決めた際、地元食材の風評被害を防ぎ、被災地を応援するために提供が始まった。ちなみに食堂で使っているお米も全て福島県産だ。

僕は名物だと噂のビーフカレー、ちえこはまぜそばを、加えてクジラの竜田揚げとメヒカリの唐揚げも注文した。食堂にしては珍しく、注文も配膳も店員さんがやってくれる「定食屋さんスタイル」だ。

席に座ると程なくしてお食事が運ばれてきた。早速いただこう。

「うまっ!」

カレーは、甘すぎず辛すぎず高級感ある味わいで、ビーフの味もしっかり出ている。気になるクジラは臭みもほとんどなく脂がのっていてジューシー、メヒカリもとても肉厚でほろほろだった。

ちえこにまぜそばの感想を聞いてみると、「味が濃く麺はもちもちしていてとてもおいしかった。具材も豪華で特に海苔が良いアクセントになっていた」とのこと。

ふたりとも食事に夢中になるあまり、ほぼ無言で平らげた。

食事中、残念ながら取材はNGだったが、僕たちの隣でカレーを注文する大物議員の姿も見られた。本当に政治家の人たちも利用しているのだなあと改めてびっくり。 

石破総理も厨房に?食堂のシェフが見てきた自民党

お食事をいただいたあと、調理長の相澤さんとスタッフの弓良さんにお話を伺った。サンフーズのスタッフは総勢15人くらい。業務委託された会社のスタッフで、自民党員というわけではないらしい。

―一番のこだわりはなんですか?

「他のところはレトルトが多いと思うけれど、なるべく手作りでやっているところかな。あとは、忙しい人たちが多いから提供を早くできるようにしているということと、味も飽きないようにさっぱり目にしているところですかね」

―総理大臣や政治家の方とお話する機会はありますか?

「総理はないし、議員さんも滅多にないですね。政治的な動きも、逆に中にいるほうがわからないかもしれません。僕らも新聞やテレビで見て知ることのほうが多いですから。

でもね、全国から党員が集まる党大会の前日、以前は「屋台村」っていうお祭りをそこの駐車場でやってたんですよ。そのときにまだ総理になる前の石破さんがここにカレーつくりにきましたね。」

―え!?ここの厨房にですか?

「そうそう。秘伝のレシピがあるらしいんですよ。『しげる亭』っていうのぼりを出して振る舞っていましたよ」

全国から議員さんのもとへ届いた食材を預かり、調理して届けるという仕事もこの食堂では行っているのだそう。これも、政党の食堂ならではの特徴だ。実際に取材中にも、丁寧に切られたメロンがワゴンに載せられて食堂の外へ運び出されていった。

「前に、150キロぐらいあったのかな。カジキマグロが届いてね。それを捌いたこともありましたよ。僕より大きかった(笑)」

―ええー!

「水産関係の会議が党本部であったときに、地元の食材を紹介しようということで届いたんです。」

―そんなお仕事もされているのですね……すごい……。

サンフーズの皆さん、ありがとうございました!次回は、共産党の食堂へ「政治飯」を食べに行きます。お楽しみに〜!

今回訪れたのは…… 

レストラン サンフーズ

東京都千代田区永田町1-11-23 自由民主会館 9F
営業日:月曜~金曜  ※クジラは金曜限定
営業時間:11:30~14:00(LO:13:45)
交通系などキャッシュレス一部対応 / 食堂だけを目的にした訪問はできない

Text / Photo:Masahiro Nakamura

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Masahiro Nakamura

ライター

2002年生まれ。小学校低学年の頃、校門横にあった選挙掲示板のポスターをきっかけに政治に興味を持つ。小学校5年生で友達と架空政党「政治改革党」を結党するも程なくして消滅。中2のとき、突然思い立って生徒会長選挙に立候補、思いがけず当選。高校3年次に校則問題をテーマにしたドキュメンタリー映画『北園現代史』を制作し、大学入学後から本格的に取材・発信活動を始める。趣味は一人旅。編著『わたしたちの世界を変える方法 アクティビズム入門』。

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