
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、コロナ禍を経て巻き起こった編み物ブームとその背景についてご紹介します。
いま、編み物が大ブーム!
空前の編み物ブームが到来しています。
多くの100円ショップで毛糸が品薄の状態に。筆者が暮らす街でも、区域内にあるいくつかのお店はすべて、毛糸が数個しか置いていない状態でした。いま、いかに編み物に熱中している人が多いかを実感します。
かくいう筆者も、実は最近になって編み物を始めたうちのひとり。年末年始のお休みでかぎ針編み、棒針編みにトライしてみたところ、思いのほかハマってしまい、いまはマフラーを編んでいるところです。
筆者のように、この1〜2年で編み物が趣味になったという方も多いのではないでしょうか。
海外でも編み物ブームが到来中
このトレンドは、国内だけのものではありません。
実は昨今、世界各地で編み物にハマる人が続出しています。
例えば、お隣の国、韓国ではこんな調査結果が。ビッグデータ分析プラットフォーム・Sometrendによると、SNSやブログなどで「編み物」という言葉が使われた件数が、2021年1月は3,488件だったのに対し、2023年12月には9,660件と2.8倍に増えていたそうです。
また、欧米でも編み物ブームは起こっているようで、編み物の流行について考察する記事がイギリスのBBCや『The Guardian』、アメリカの『The New York Times』などで相次いで公開されています。
若者と男性も編み物ブームの担い手に
いろいろと調べてみると、日本における編み物ブームは、明治時代以降これまでにも何度か訪れていたようです。ですが、現在の編み物ブームには、過去のトレンドとは大きく異なる点があります。
それは、「若者」と「男性」もハマっていること。実際、筆者も100円ショップの毛糸コーナーで中高生の姿を何度も目にしています。また、編み物に関連したSNSの投稿やブログなどを眺めていると、休み時間に友達と編み物に熱中しているという話や、友達とおそろいの作品を作って旅行にでかけたという話なども見かけます。
Instagramでは、国内外問わず男性の編み物愛好家を発見することも多いです。さらに先日は、市販の洋服のような高いクオリティのカーディガンを編んだ男性が、その作品歴・上達歴とともにSNSで話題となっていました。
ブームの発端は、コロナ禍と著名人の発信
今回の編み物ブームが起こったきっかけは、大きくふたつありそうです。
ひとつ目が、新型コロナウイルスの流行です。2019年末から始まったコロナ禍。日本では2020年4月に緊急事態宣言が発令され、海外でも各国でロックダウンをするなど、人々に外出を控えるよう求める強い措置がとられました。家から出ることが叶わない中、自宅でスマートフォンやテレビを見ることに疲れてしまった人たちが、次第に編み物をはじめとした手芸の世界にハマり始めたのです。そして、手芸にハマった人たちが手仕事を楽しむ様子をSNSに投稿すると、それが新たに編み物や刺繍、裁縫などに熱中する人を増やすきっかけになりました。こうした一連の流れが、現在の編み物ブームをつくり上げていく要因になったと考えられます。
ふたつ目が、著名人による発信です。2020年東京オリンピック競技大会では、男子高飛び込みに出場したイギリスのトーマス・デーリー選手が、競技の合間に編み物に勤しむ姿が話題となりました。また、世界的に人気のあるK-POPガールズグループ・LE SSERAFIMのSAKURAも、かねてから編み物についてInstagramで発信。今年1月14日にはオリジナル編み物ブランド『KKUROCHET』をリリースし、多くのファンから支持を得ています。
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著名人が編み物の楽しさやオリジナル作品を編む魅力を発信していることも、多くの人が編み物を始め、ハマっていくきっかけになっていると言えるでしょう。
編み物の心理的効果もブームに影響?
また、「編み物が人の心に与える良い影響」という側面からも、編み物ブームが起きている背景を考察できそうです。
実は編み物は、うつ病などの症状軽減やリラックス効果を得るために、精神科の作業療法の一環としておこなわれることもあるのだそう。また、スウェーデンのヨーテボリ大学では、「編み物には人をリラックスさせ、社会とのつながりを保ち、生活リズムを整える効果がある」とする研究結果を発表しています。
昨今の世界は、命を脅かす感染症の流行や紛争の勃発、グローバルな競争の激化、物価の上昇……などによって混迷を極めています。日々をただ生きていくだけでも大きなストレスにさらされる中で、多くの人が“癒し”を求めて編み物と向き合っている。そんな側面も、現在の編み物ブームから読み解くことができます。
何かが流行るとき、そこにはその時代ならではの特徴が色濃く浮かび上がってくるものです。今回の編み物ブームも、その背景を紐解いてみると、SNSの影響力の強さやストレス過多な状況など、現代社会の一端が垣間見えてきたように思います。
References:
Sometrend「디지털 디톡스를 위한 새로운 몰입, 뜨개(デジタルデトックスのための新しい没入、編み物)」
News Medical「Knitting is beneficial for people with mental health problems, study shows」
Text:Teruko Ichioka