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誰もが自らの意思で充実した生活を送れる社会をめざして。神経科学を研究する高校生【小澤美咲・17歳】

誰もが自らの意思で充実した生活を送れる社会をめざして。神経科学を研究する高校生【小澤美咲・17歳】

「気になる10代名鑑」の911人目は、小澤美咲さん(17)。神経科学の研究と、科学の輪を広げるための科学コミュニケーションに取り組んでいます。中高生が神経科学に触れ、学ぶ機会や仲間を増やすとともに、将来的には神経疾患を持つ患者の生活の質(QOL)向上をめざしたいと語る小澤さんに、活動をはじめたきっかけや、将来の展望を伺いました。

小澤美咲を知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?

神経系の研究と、それを広めるための科学コミュニケーションです。

高校1年生のころから神経系の研究を始め、現在は慶應義塾大学グローバルサイエンスキャンパスで、水俣病に関する研究に取り組んでいます。水俣病は、化学工場から流されたメチル水銀が原因物質となる神経疾患です。メチル水銀が感覚障害にどのように影響するのか、その毒性メカニズムを研究中です。

昨年11月には、中高生が神経科学に触れるきっかけをつくるために、『IYNA Japan』というコミュニティを立ち上げました。『International Youth Neuroscience Association (IYNA) 』という国際神経科学団体の日本支部として、神経科学と社会の人々との架け橋を築くため、SNSでの情報発信や交流会、講演会、ワークショップなどをおこなっています」

 

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Q2. 活動を始めたきっかけは?

中学生のころに貧血で倒れた経験や、医療ドラマに触れたことから、医療業界に対して憧れを抱いていました。

高校1年生の夏にフィリピンの病院でインターンシップに参加した際、自分と同世代の子どもたちが十分な治療を受けられない現実を目の当たりにして、衝撃を受けて……。すごく悲しい気持ちになったんです。

そんななか、病院付属のラボで出会った女性研究者が、情熱を持って研究の楽しさを語ってくれたことが大きな転機となりました。医療行為そのものよりも、研究の方向に進みたいと考えるようになって、気づけば『IYNA Japan』を発足するまでに至っていました」

 

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Q3. 活動にあたってのファーストアクションは?

「まずは、自分と同じ志を持つ仲間を探すことからスタートしました。

『IYNA Japan』として、X上で『神経科学のコミュニティを作りたいです』って投稿したら、研究者の方々から温かい反応をいただいたんです。中高生向けに発信していたので、すごく驚きました。

いまは10人ほどのメンバーで活動していて、これまでに60名以上の方々がイベントに参加してくれています。代表として、『みんながやりたいことをしてほしい』という気持ちで団体を運営しています」

Q4.活動をする中でつらかったことは?

昨年、日本代表として出場した『脳科学オリンピック』で思うように結果が出せず、脳科学の勉強そのものが苦しく感じたことです。家族旅行も我慢して、ひたすら勉強に打ち込みましたが、周囲の期待に応えられなかった現実にとても辛くなってしまいました。

ただ、そんなとき、神経科学の研究者による講演を聴いて、研究の面白さを改めて実感したんです。評価に左右されず、自分が何をしたいのか、活動の意味や意義を見つめ直す大切さに気づかされました」

Q5. 将来の展望は?

神経疾患を持つ患者の生活の質(QOL)を向上させることです。

疾患のメカニズムを研究し続け、効果的な薬やブレイン・マシン・インタフェース(BMI)の開発に取り組みたいと考えています。BMIは、脳と機械を直接結びつけ、脳の指令で機械を操作する技術です。アルツハイマー型認知症やパーキンソン病の患者が、自らの意思で充実した生活を送れる社会を実現したいです。

一方で、こうした技術が急速に発展していくことにより、患者の体や神経に負担をかけてしまうリスクも懸念されています。人間とBMIが共存する豊かな社会の実現をめざして、研究を深めていくとともに、次世代を担う中高生への科学コミュニケーションも広げていきたいです」

小澤美咲のプロフィール

年齢:17歳
出身地:東京都 稲城市
所属:広尾学園高等学校、IYNA Japan 代表、慶應GSC、株式会社アラヤ、iGEM Grand Tokyo、The Knowledge Society
趣味:犬と遊ぶこと、読書、研究、テニス、ゲーム・アニメ・漫画
特技:プレゼン、語ること
大切にしている言葉:一期一会

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Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano

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Serina Hirano

エディター/ライター

東京と静岡の二拠点生活。リアルを懸命に生きている若者を応援するため、パラレルワーカーとして活躍中。インタビュー記事を基点とし、学生やスターアップ企業、まちづくりの領域まで幅広く活動しています。ライター兼ディレクターとして、2024年からsteenzに携わる。

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