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サステナブルな雛人形が話題に!思い出の子ども服が新たな命を宿す「きおくひとえ」【Steenz Breaking News】

サステナブルな雛人形が話題に!思い出の子ども服が新たな命を宿す「きおくひとえ」【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、静岡の老舗雛人形工房が子ども服をアップサイクルして制作した雛人形についてご紹介します。

3月3日はひな祭り!

来週の月曜日、3月3日は「ひな祭り」です。

年中行事のひとつとして、日本で古くから親しまれてきたひな祭り。歴史をさかのぼれば、およそ1000年前の平安時代中期ごろには、ひな祭りの原型となる行事や人形があったようです。

現在のように、雛人形を壇上に飾って楽しみながら、家族の中にいる女性や女の子の無病息災を願うようになったのは江戸時代に入ってからだそう。雛人形を各家庭で飾るようになった歴史は、日本の長い歴史から見れば意外と最近のことなのは、驚きですね。

少子高齢化で、雛人形を買う世帯は減っている

しかし、そうした雛人形は現在、購入世帯数が大きく減少しています。

経済産業省の工業統計調査によると、節句人形や雛人形の市場規模は、1998年に出荷額ベースで283億円あったところ、2019年には89億円となったそうです。1998年と比較すると、実に69%減。この20年ほどの間で大幅な市場縮小となっています。

その背景にあるのは、少子化です。2019年の出生数は、厚生労働省の統計資料によれば、 86 万5234人でした。これは1998年の出生数120万3147人と比べると、28%の減少であり、子どもが減っているからこそ、雛人形を買う世帯数が減っていると言えます。

また、近年の都市生活の影響もありそうです。特に都心部ではファミリー向けの物件が限られていることもあり、家族の人数に対して狭いスペースで暮らすケースも増えています。すると、飾る場所を確保しなければならない雛人形は、必然的に購入の優先順位が下がってしまうのです。

こうした世の中の状況に、多くの雛人形工房が頭を悩ませていました。

思い出の子ども服を雛人形へアップサイクル

そんな中、静岡県にある創業100年の人形工房「左京」が、全く新しいコンセプトの雛人形を発表し、大きな注目を集めています。

左京が開発したのは、サイズアウトして着られなくなってしまった思い出の子ども服でつくる雛人形「きおくひとえ」。

成長ざかりの子どもの洋服は、すぐにサイズアウトして着られなくなってしまうものです。そうした洋服は、きょうだいや親せきの子どもにおさがりとして渡したり、インターネットを通じてリユースされたりしていますが、廃棄されてしまうケースも実は多いもの。

左京は、そのような子ども服の現状に着目。思い出のある洋服を雛人形の着物として仕立て直すことで、洋服の廃棄を減らしながら、世界にひとつだけのオリジナル雛人形をつくろうと考えたのです。

この取り組みは昨年からスタートし、今年で2年目を迎えます。昨年には、国内最大級のクリエイティブアワード『ACC TOKYO CREATIVITY AWARD 2024』で銀賞を受賞したそうです。

開発したのは、静岡の老舗雛人形工房の若手4代目

「きおくひとえ」の開発には、左京の若手4代目 望月琢矢さんが携わりました。

大学2年生のとき、3人兄弟の次男でありながら家業の雛人形工房を継ぐと心に決めた望月さん。ビジネス感覚を磨くためにベンチャー企業で2年ほど修行した後、静岡にUターンして実家の工房に就職し、現在は若手ならではの感覚でSNSやインターネットを駆使しながらさまざまな新戦略を打ち出しては実行しています。

伝統工芸×SDGsの取り組みは、今後広がっていく?

左京が「きおくひとえ」で示した、伝統工芸とSDGsの新たな形。お客さんの「思い出を大切に残したい」という気持ちまで汲み取った、環境にやさしい雛人形というアイデアは、これから日本の各地で発想が応用され、取り組みが広がっていくかもしれません。

References:
経済産業省「工業統計調査」
厚生労働省『令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況』
厚生労働省『人口問題研究 (J. of Population Problems) 』

TextTeruko Ichioka

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Teruko Ichioka

ライター・編集

フリーライター。好奇心の強さは誰にも負けない平成生まれ。得意領域もスタートアップ、ビジネス、アイドルと振れ幅が広い。

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