
「気になる10代名鑑」の907人目は、歩さん(18)。伝統工芸と現代アートの融合をテーマに創作活動をおこなっています。「作り手の温もりを感じられる伝統工芸の魅力を広げたい」と語る歩さんに、創作活動のきっかけや悩みについて聞いてみました。
歩を知るための5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「美術系の高校に通いながら、伝統工芸と現代アートの融合をテーマに作品作りをしています。特に、陶芸や版画などのアナログ技法をベースにしながら、現代の人でも親しみやすいデザインや表現を取り入れることで、伝統工芸をもっと身近なものにしたいと考えています。
いまの時代はデジタルアートが主流ですが、ひとつひとつ時間をかけて作品を創り上げる手仕事ならではの工芸の魅力を、より多くの人に伝えたくて。そのために、友人とグループ展を開いて、伝統工芸に触れてもらう機会を増やしたり、展覧会に行って自分なりの新しい表現方法は何かを研究したりしています」
Q2. 創作活動をしようと思ったきっかけは?
「姉兄が通っていた絵画教室に自分も行くようになって、その影響で、物心ついたときには絵を描くことが好きになっていました。自分の思っていることを言葉以外の方法で表現できるってすごくいいなと気づいてから、『美術の世界で生きていきたい』と思うようになったんです。
高校も美術系の学校を選んだのですが、ある授業ではじめて正面から伝統工芸に触れたとき、その温かみや奥深さなど、アナログ的な要素がもつ魅力に惹かれて。この魅力をもっといまの人にも身近に感じてもらいたいと思うようになり、自分の創作活動にも取り入れるようになりました」
Q3. 活動にあたってのファーストアクションは?
「最初に自主制作をしたのは、高校2年の夏に友人と開いたグループ展です。クレイ粘土を使ってオブジェを制作しました。いまわたしがやっている陶芸もそうですが、手作りの作品は、創作者の体温や指一本一本の動きが作品に反映されて、そのひとがそのときにしか作れない、作り手にとっても唯一無二の作品になるんです。見てくれた人にもダイレクトに作り手の表現が伝わるところが面白くて、『自分の手で直接物を形作ることが好きなんだ』と気づきました。
最近は高校の卒業制作で、陶芸の技術を活かしたキャラクター作品をつくりました。題名は『7体の小さな怪物たち』。実際に存在する友人や自分の個性をモチーフにすることで、観てくれた人に愛着を持ってもらい、陶芸を身近に感じてもらいたかったんです。これからも、観るひとが何度でも思い出したくなるような作品を作っていきたいと考えています」
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Q4. 活動をする中でつらかったことは?
「美術作品は、絶対的な評価ができないからこそ、その価値が見るひとによって変わるということが悩みどころです。作品の評価は、鑑賞者の気分や好み、流行、タイミングに左右されますが、高校では作品の評価が成績にも直結するんです。わたしは、揺らぎのある評価でも間に受けて一喜一憂するタイプなので、落ち込むことも数え切れないくらいたくさんありました。
でも、他者と比べても、どちらが『上か下か』という答えはでないと思います。考えきった末に、上手だと思う人を目指しつつ、自分の世界観を大事にするという意味で『ななめ上を見よう』と思うようにしました。そのお陰か、いまでは、焦らずに自分の道を進むこと集中できるようになりました」
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Q5. 将来の展望は?
「伝統工芸と現代アートを融合させて、新しい表現を生み出すことで、より多くの人に歴史ある工芸の魅力に気づいてもらうことが目標です。わたしは、いま見えている物全てが現代アートだと捉えているので、現代社会にある物と、過去から伝わり続ける伝統工芸を組み合わせたら、無数の表現方法が生まれると思っています。
直近では、海外留学を通じて、まだ自分にはない手法を学びたいとも思っています。今後は、展示会はもちろん、家族の関係で関わりのある特別支援学級の子どもたちや、学校に行っていない子にも、アートを通じて表現の楽しさを伝えられるような活動をしていきたいです」
歩のプロフィール
年齢:18歳
出身地:東京都
趣味:洋服を見ること
特技:人に似合う洋服やメイクを考える
大切にしている言葉:自分らしく
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Photo:Nanako Araie
Text:Mizuki Maeda