
「気になる10代名鑑」の921人目は、細井鈴那さん(19)。大学でデジタルデザインを学びながら、アナログなイラストも描き、それらを活かして地域の魅力を引き出す活動をしています。島根県の離島の高校に進学したことがきっかけで地域活動をスタートさせたという細井さんに、活動について根掘り葉掘り聞いてみました。
細井鈴那を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れていることは?
「京都芸術大学でデジタルデザインを学びながら、地域の魅力を発信するツールのデザインを手掛けています。
イラストなどアナログで手作りする方法と、大学で学んでいるデジタルデザインをうまく掛け合わせて、幅広いものづくりに取り組んでいきたくて。地域おこしにつながる立て看板やイベントのポスター、団体のTシャツなどをデザインしています。
ライブポスターを作成することでアーティストと関わったり、Tシャツデザインを通じて、地域の魅力化に取り組むコーディネーターと協力したり、デザインをきっかけにさまざまなひととつながれることも、やりがいのひとつです」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校受験の際に、地域活動を軸に生活を送る高校生がいることを知って、興味をもったからです。そこで、島根県の離島である隠岐の島にある、隠岐島前高校のオープンスクールに参加しました。
住民でなくても、本気でこの島に関わろう、親しくなろうとしてくれる島のひとの姿勢に心を打たれて。また、市役所に掲げられていた『みんなでしゃばる街づくり』の言葉、そして島のキャッチコピーである『ないものはない』に強く印象に残ったんです。そんな環境に自分も身を置きたいと思って、島留学を決意したのが、地域活動のスタートでした。
はじめての地域活動では『高校生カフェ』のメンバーになって、ポスター作成を担当していました。それから、島内でのイベントポスターやTシャツデザインを任されることが増えて。自分の好きなイラストやデザインを通じて地域に貢献できるんだと気づいて、もっと積極的に地域とつながりたいと思うようになりました」
Q3. どんなことをテーマに創作活動を行っていますか?
「自分の世界観を押し付けるのではなく、常に相手の理想に寄り添ったデザインをするよう心がけています。自由自在に形を変えるアメーバみたいに、ときにはアナログ、ときにはデジタルと、どんな要望にも柔軟に対応していきたいんです。特に大事にしているのは、依頼者といっしょに考え、作り上げること。AIでデザインを生成することができる時代だからこそ、ただ依頼されたものを提供するのではなく、思いを共有して、思い出深いデザインを作り上げることをめざしていきたいです。
地域活動のイベントを抽象的なビジュアルに起こすと、キラキラとした遠い存在のように感じられてしまいがちなんです。なので、ポスターやTシャツを見た人にもっと身近なものだと感じてもらえるように、デジタルなデザインの中に手描きの文字なども織り交ぜて、あたたかみを出すことを意識しています」
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Q4. 活動の中で、悩みがあれば教えてください
「大学に進学してから、遠方の知人からの依頼が増えて、Zoomを使って打ち合わせをして、iPadで絵を描く機会が多くなりました。デザインを通じて人と関わるはずなのに、画面越しの作業が続くと、辛く感じることがあります。
また、デザインの謝礼についても悩んでいました。お金のためにやっているのか、デザインをしたくてやっているのかがわからなくなってしまって……。でも、あるとき、接骨院で立て看板を描いた際に、謝礼としてたい焼きをもらったり、整体のサービスをしてもらったりしたんです。そのひとなりのお礼をしてくれたことにあたたかみを感じて。わたしはデザインを通じて、生まれる会話やつながりが好きなんだって再認識しました」
Q5. 将来の展望は?
「デザインの力をもっと地方の小さな町や村にも広げて、地域の活性化に活かしていきたいです。
具体的には、地域の小さなメーカーや島のひとの魅力をデザインを通じて発信していきたくて。地域の住民の気持ちを大切にしながら、彼らが感じるニーズに寄り添ったデザインを提供したいと思っています。
あとは、観光客向けのものだけでなく、地域のひとに向けた魅力発信も必要だと感じています。イラストやデザインの力で地域の魅力をもっと高めて、地元のひとがより豊かに過ごせる環境を作っていきたいです」
細井鈴那のプロフィール
年齢:19歳
出身地:兵庫県西宮市
所属:京都芸術大学空間演出デザイン学科空間デザインコース
趣味:歩くこと、話すこと、文房具、動画編集、サプライズすること
特技:絵を描くこと
大切にしている言葉:ナイス失敗
細井鈴那のSNS
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https://www.foriio.com/ho-susan-0526
Photo:Nanako Araie
Text:Honori Kukimoto