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世界に広がる、都市空間の小さな森。日本の技法を取り入れた「マイクロフォレスト」とは【Steenz Breaking News】

世界に広がる、都市空間の小さな森。日本の技法を取り入れた「マイクロフォレスト」とは【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、マイクロフォレストについてご紹介します。

緩やかにはなっているものの世界中で進む森林減少

国連食糧農業機関(FAO)が発表した「2020年世界の森林白書」によると、地球には約40億ヘクタールの森林が存在しており、陸地の約3分の1を占めているとのこと。わたしたちもこの豊かな緑から、さまざまな恩恵を受けています。しかし、1990年以降、4億2000万ヘクタールの森林が失われているそうです。

原因は地域によって異なりますが、農地(畜産)利用、産業用の原材料調達を目的とした植林地の拡大、火災、インフラ開発、鉱業などさまざまです。現在、人々の取り組みにより森林減少のスピードは改善しつつありますが、さらなる改善策が必要な状況には変わりありません。

都市間の小さな森「マイクロフォレスト」とは

こうした地球規模での森林減少もあり、近年では「マイクロフォレスト」が世界中で増えています。マイクロフォレストとは、都市部の狭い土地に在来種の木々を密に植え、小さな森を作る方法のことです。植樹された木々は、密集した地で成長するために生存競争を勝ち抜く必要があります。その影響で、通常より最大10倍の速度で育つのだそうです。

ちなみに、マイクロフォレストの多くに採用されるこの植樹方法は、1970年代に日本の植物学者・宮脇昭氏が考案した「宮脇方式」を参考としたものです。日本発のメソッドが世界で活用され、環境問題の解決にも役立っているのは嬉しいですね。

活用される土地は、工業地や都市部の使われていないスペース、小学校の校庭、かつて駐車場であった土地などさまざまで、中には数平方メートル程度の狭い場所で育てられている森もあるのだそう。こうした小さな森を作ることにより、土壌や空気、水質回復が期待されるだけでなく、大雨による影響を軽減し森周辺を涼しく保つこともできると言われています。

世界の小さな森たち

中東の国ヨルダンでは、日本の環境保護活動家と協力し、宮脇方式による森づくりをおこないました。最初は周囲の人々に、「ヨルダンでは無理だ」と言われていましたが、熱心に取り組む姿を見て、植樹する土地を寄付してくれる人が出てくるなど周囲の気持ちにも変化が表れます。最終的には、土壌を整え23種類の在来種を380本植えたことにより、2年もかからないうちに、3~4メートルの木々が生い茂るマイクロフォレストが誕生したそうです。

そして、オランダも小さな森づくりに力を入れている国のひとつ。2015年、首都アムステルダムに隣接する都市であるザーンダムに国内初となる、テニスコートほどの大きさの「タイニーフォレスト」が誕生しました。人と自然のつながりを深めるために活動している団体「IVN Natuur Educatie」によると、2015年12月から2021年1月までに111個の小さな森を作ったそうです。

緑の多い地球を残すために、私たちもできることをしよう

空気をきれいにしたり資源を生みだしたりと、森は私たちにとってなくてはならない存在です。マイクロフォレストやタイニーフォレストが増えることは嬉しいですが、汚染物質や高温、干ばつに弱いため、対策も同時に進める必要があります。そしてわたしたちも、これ以上の森林破壊が進まないよう、普段の生活の中でできることに取り組んでいきたいですね。

Reference:
森林保全について知っておきたいこと|WWF
世界の森林の現況及び森林減少・劣化の要因|林野庁
The Japanese ‘micro-forest’ method is transforming cities|Euronews
Meet the Jordanian architect who grew an 100-year-old forest in 10 years|Euronews
Over Tiny Forest®|IVN Natuureducatie
What are the effects of a Tiny Forest®?|IVN Natuureducatie

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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