
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、女性器切除(FGM)根絶に向けた取り組みについてご紹介します。
世界で2億人の女性が経験した女性器切除(FGM)とは
近年、ジェンダーギャップや性暴力といった女性に関するさまざまな問題が注目を集めています。FGM(女性器切除)は、アジアやアフリカ、中東の一部の国で古くからおこなわれてきた慣習のひとつです。医療以外の理由で女性の性器の一部を切除する行為で、「大人の女性になるための通過儀礼」として、いまも一部の地域では根強く残っています。
FGMには深刻な健康リスクが伴います。施術時の激しい痛みに加え、出血多量や感染症による命の危険があり、長期的には生理不順を含む月経困難症を引き起こすリスクもあります。また、精神的なトラウマやメンタルヘルスへの悪影響も大きな問題です。
こうした危険性から、ユニセフをはじめとする国際機関や各国政府がFGMの根絶に向けた取り組みを進めています。
FGMを巡る厳しい現状の一方、人々の意識に変化も
現在、世界で31カ国、2億人以上の女性がFGMを経験したとされています。驚くべきことに、その中には5歳以下の幼い女の子も含まれています。
国連児童基金(UNICEF)の発表によると、FGMの施術率は減少傾向にあるものの、受けた人の数は2016年と比べて15%増加しており、依然として深刻な状況が続いています。この背景には、実施する国々での出生数の増加があり、より地域に根ざした未然防止の対策が求められているのです。
一方で、希望の兆しも見え始めています。ケニアやシエラレオネ、エジプトではFGMの実施率が低下しつつあり、さらに、FGMの慣習が根強いアフリカと中東の国々では、約4億人(人口の3分の2)がFGMに反対する意見を持っているという調査結果もあります。
では、現地ではどのような変化が起こっているのでしょうか。 実際の事例を見ていきましょう。
リベリアで進むFGM撲滅活動
認定NPO法人国連ウィメン日本協会は、西アフリカ・リベリアでFGMの廃絶をめざした支援活動をおこなっています。
その一環として、2019年には、EUと国連が共同で進める「スポットライト・イニシアチブ」に基づき、FGM施術者向けのビジネススキル研修を開始しました。FGMは伝統的な儀式であると同時に、施術者にとって貴重な収入源となっているケースも多いため、気候変動に対応した農業やビジネス管理のノウハウを提供し、新たな生計手段を支援しています。
さらに、2020年には地域の決定権を持つ125人の伝統的指導者に対し、リベリアの法律について学ぶ機会を提供。この取り組みを通じて、女性に対する暴力を終わらせる法的枠組みの支持を広げる成果を上げています。
シエラレオネで登場した新たなFGM儀式「イエローボンド」
西アフリカのシエラレオネでは、従来のFGMに代わる新たな儀式として「イエローボンド」がおこなわれています。参加する女の子たちは、外部から隔離された環境で女性の年長者の監督下に置かれ、共同生活を送りながら指導を受けます。
この儀式では、身体的な切除を伴わず、主に地域の女性コミュニティで生きるための社会的トレーニングが実施されるのだそうです。
伝統や価値観のアップデートを考えるきっかけに
FGMは伝統だけでなく、強い同調圧力によっても続けられているといわれています。そのため、単なる慣習の問題ではなく、社会全体の価値観の変化が求められています。
しかし、シエラレオネの「イエローボンド」のように、従来のFGMに代わる新しい形の儀式が生まれるなど、伝統をアップデートしようとする動きも出てきています。FGMを取り巻く現状を知ることは、文化や価値観の変化について考える大きなきっかけになるのではないでしょうか。
References:
unicef「女性器切除(FGM)」
unicef「女性器切除2.3億人以上が経験 2016年比15%増、SDGs達成にほど遠くユニセフ新報告書で指摘」
Text:kagari