
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、2025年にさらに深刻化することが予想される「空き家問題」と、その解決に挑むスタートアップについてご紹介します。
急増する日本の空き家。2023年には900万戸に
いま、日本各地で「空き家」の増加が問題となっています。
空き家とは、住んだり、事務所などとして活用したりする人がおらず、全く使われないまま放置されている住宅のことです。総務省が公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日時点で、日本には6,502万戸の住宅があることが明らかになっています。そのうち、空き家となっている住宅の数は900万戸を突破。2018年の数値と比べても51万戸増加しており、過去最多を記録しました。
また、総住宅数に占める空き家の割合も13.8%と過去最高に。空き家はこの30年間でおよそ2倍に増えたと言われていますが、その問題がいかに歯止めがかからず拡大しているか、深刻な状況が伺えます。
なぜ空き家になってしまうのか
では、なぜ空き家が生まれてしまうのでしょうか。
「空き家」と聞いて、もしかすると築100年以上もある見た目がボロボロの家屋を思い浮かべた方もいるかもしれません。
古く、手入れの行き届いていない、所有者不明の住宅が空き家になる側面ももちろんあるのですが、実はそれだけではありません。例えば、あまり想像したくはありませんが、もしもいつか自分の両親が年老いて、介護施設に入ることが決まったとします。その場合、それまで両親が住んでいた実家は、自分やきょうだいが住むか、誰かが定期的に通って外装や屋内の管理をしなければ、「使う人がいない空き家」となってしまいます。
空き家問題は、わたしたちの暮らしの非常に身近なところにあり、超高齢化社会の問題とも密接につながっているのです。
空き家数トップの地域は意外にも都会にあった
ちなみに、空き家問題は地方に限ったものではありません。大都市圏であっても、空き家が年々増えていることに頭を悩ませている自治体があります。
そのうちのひとつが、東京都世田谷区です。「住みたいまちランキング」で常に上位にランクインし、洗練された街並みが広がる同区は、実は全国でも空き家の数がトップクラス。地域住民の高齢化が大きな原因となり、区内の空き家の数が増えてしまったのだそうです。
空き家が増加すると、街の治安や景観を損ねてしまうだけでなく、コミュニティの活力を低下させてしまう可能性があります。また、管理されていない空き家は野生生物のすみかとなったり、犯罪の温床となったりするリスクもあります。そのため、世田谷区を含め、全国のさまざまな自治体で、地域内の空き家を減らそうとさまざまな取り組みがおこなわれ始めているのです。
軍艦島との出会いから始まった空き家活用への挑戦
こうした社会課題の解決に、民間企業の立場から挑戦しているスタートアップがあります。和田貴充さんが創業した、空き家活用株式会社です。
同社は現在、空き家所有者と利用希望者をマッチングするプラットフォームの運営や、自治体と連携した空き家に関する相談窓口「アキカツカウンター」の運営、自治体発行冊子やオウンドメディアなどを通じた情報発信など、非常に幅広い事業を展開しています。
空き家活用株式会社は、もともと不動産事業を手がけていた和田さんが長崎県・軍艦島と出会ったことがきっかけで設立されました。かつては日本一と言われるほどの人口密度を誇り、1916年には日本初の鉄筋コンクリート集合住宅が建設されるなど、最先端の街として知られた軍艦島。しかし1974年の炭鉱閉鎖後、無人島となり、現在は廃墟となっています。実際に軍艦島に訪れ、人が住んでいた建物が朽ちて、変わり果てた姿になっていることに衝撃を受けたという和田さん。不動産事業を行っていたこともあり、新しい物件をお客様に売り続けるだけでは、第二の軍艦島をつくることになりかねないと危機感を感じたことから、空き家所有者と利用希望者をつなぐプラットフォーム事業を立ち上げたのです。
超高齢化社会に突入した2025年、街の未来はどうなる?
2025年は、団塊世代が全員75歳以上となり、日本の人口構造に大きな変化が訪れる節目の年です。この影響で、実家の管理が難しくなるなどして、全国でますます空き家が増加すると懸念されています。わたしたちが暮らす街の未来に関わる空き家問題。今後もこの問題に多くの関心が集まることは間違いありません。
References:
総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
総務省「平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果」
Text:Teruko Ichioka