
「気になる10代名鑑」の886人目は、友結さん(15)。ギフテッド研究に取り組み、子どものころから否定されないような教育環境の実現をめざして、活動しています。将来は医師として子どもたちに寄り添い、可能性を広げる支援をしていきたいと語る友結さんに、活動を始めたきっかけや今後の展望について、詳しく聞いてみました。
友結を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れていることは?
「静岡大学の『未来の科学者養成スクール(FSS)』に所属して、ギフテッドに関する研究をしています。
ギフテッドとは『特異な才能を持つ児童・生徒』のこと。障がいを伴う2E(Twice-Exceptional)と、そうでない単純なギフテッドの2種類があります。才能がある一方で、理解されにくい辛さや困難を抱える子どもたちを支援するため、日本でも取り組みが広がっています。
わたしもその支援の一助になりたいと考えていて、いまは大学の研究室で、北欧のギフテッド支援や教育に関する論文を執筆しています。中学3年の間に完成させるのが目標です。この活動を通じて、学校で生きづらさを感じている子どもたちの支えになりたいと考えています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「小学校時代の経験と、家族の影響です。
通っていた私立小学校は、入学試験の一部にIQテストが必要な学校でした。小学校時代はその環境に馴染んでいたんですが、中学校に入ると、周囲とのギャップを強く感じるようになったんです。わたしはギフテッドと呼べるか微妙なラインのIQですが、自身のIQと周囲の環境とのギャップに苦しんでいる人がもっといるのではないかと思って、ギフテッド教育に興味を持ち始めました。
さらに、文献を読み調べていく中で、日本ではギフテッド支援が他国と比べて大きく遅れていることを知って、わたしも何か貢献したいと思うようになって。弟もギフテッドで、身近にその存在を感じていたことも、この活動を始める大きなきっかけになりました」
Q3. 活動する中で印象的だった出会いは?
「起業系のプログラムに参加したとき、企業の社長の方々とお会いする機会があったのですが、若者として一括りにされるのではなく、ひとりの個人として尊重されていると感じたことがとても印象的でした。応援の言葉をいただきながらも、その期待に応えたいという責任感が生まれて、気が引き締まる思いでした。
また、今年の12月に参加した『日本・ギフテッド2E学会 キックオフ大会』では、ギフテッド研究の第一人者の先生方と直接お話しする貴重な機会をいただいたほか、研究者ではないけれど、支援や活動を応援してくださる方々とも出会えました。自分の研究が誰かの支えになれるよう、より一層頑張っていきたいです」
Q4. 活動をする中で、悩みがあれば教えてください
「わたしが活動する中で困ったことは、『自分が中学生である』という点です。研究プログラム自体は多く存在するのですが、そのほとんどが高校生向けで、中学生が参加できる環境はまだまだ整っていなくて。また、中学生と高校生というわずか1歳の差で、できることが制限される場面もあって、そのたびに歯がゆさを覚えています。
わたしは、年齢で線引きされるのではなく、個人の能力や意欲を基準に判断される仕組みがもっと広がってほしいんです。年齢が若いからといって可能性が狭められるのではなく、それぞれが持つ力を発揮できる環境があればいいなと思います」
Q5. 将来の展望は?
「誰もが心から『生きたい』と思える社会の実現です。そのためには、子どものころから否定されない環境や、多様性を認める教育が重要だと考えています。
わたし自身の将来の目標は、医師として子どもたちを支援し、応援することです。人間形成の大部分が子ども時代におこなわれるため、この時期の支援を充実させることで、誰もが『生きたい』と感じられる社会に近づくと信じています。また、日本では教育上の配慮を受けるために医療機関の診断が必要な現状がありますが、わたしは制度を変えることよりも、ひとりひとりに寄り添って、自分自身が支援を届ける存在でありたいと考えています。当事者としての視点から支援することも、目標のひとつです」
友結のプロフィール
年齢:15歳
出身地:東京都新宿区
所属:FutureScientist’s School 2024年度生(静岡大学)、日本ギフテッド・2E学会発起人メンバー、JAPAN MENSA
趣味:人と話すこと、旅行
特技:剣道、阿波踊り
大切にしている言葉:自分の道を歩む
Photo:Nanako Araie
Text:Honori Kukimoto