「気になる10代名鑑」の852人目は、王禎さん(19)。大学で油絵を学びながら、『集合的無意識』をコンセプトに制作に取り組んでいます。アニメ『ブルーピリオド』を見たことがきっかけで来日し、油絵を描くことを決意したという王さんに、影響を受けた作品や今後の展望について、詳しく聞いてみました。
王禎を知る5つの質問
Q1. いまいちばん力を入れている活動は?
「多摩美術大学で、油絵制作に取り組んでいます。ただ技術の向上をめざすのではなく、油絵の世界をより深く理解できるように、努力しています。
テーマをきっちり設定すると成長が止まってしまうと考えているので、特に設定はしていないのですが、動物を主役に描いて、人間の思考や、哲学的な意味をこめることが多いです。
最近のコンセプトは、ユングの『集合的無意識』。性別や年齢に関わらず、全員が見ることができるものを描きたいという思いで、『夢』についての絵を描いています。いろいろな人の夢を集めて、何か共通するイメージはないか整理していくことで、人が『理由もなく感動する』というような事象を表現できればと思っています」
この投稿をInstagramで見る
Q2. 活動をはじめたきっかけは?
「美大をめざす主人公を描いた『ブルーピリオド』というアニメがきっかけです。
もともと絵を描くことが好きで、憧れていたのですが、ずっと大学進学のための勉強に集中していました。大学に進学して、勉強を続けるなかで『ブルーピリオド』に出会って。やっぱり絵が描きたい、絵について学びたいと思ったんです。それで『ブルーピリオド』の舞台である日本で、油画の勉強をすることを決意しました。
わたしが絵の道を選んだことに、家族も友人はおどろいていましたが、応援してくれて。いま絵を描けているのは、家族や友人の支えがあってこそだと思っています」
Q3. 自身のクリエイティブに影響を与えたものは?
「藤本タツキさんのマンガが大好きで、全部読んでいるんです。例えば藤本さんの『ファイアパンチ』という作品にニヒリズムが含まれているように、彼の作品には、何かしらの哲学的な要素があるように感じています。その影響で、わたしも自分の作品に、集合的無意識などの哲学的な要素を加えることが多いのかもしれません。
特に好きな作品は『ルックバック』。わたしがこれまで出会ってきた友人を思い出すし、友情の素晴らしさを実感することができて、感動する作品です。
ほかにも、中国の絵をイメージしたり、『夢』について描いているピーター・ドイグを参考にしたりすることもあります」
この投稿をInstagramで見る
Q4. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「他の人の視線や評価を気にしてしまうことです。
日常的にも、絵を描いているときにも、自分の感情より『他の人はこれで綺麗だと思ってくれるか』『他の人がどう思うか』ばかり気にしてしまって……。でもやっぱり、自分の気持ちを大切にしたくて。なので、絵を描くときは特に、心の声を尊重できるように、自分のなかで大事なものを心の中で唱えて、自分とコミュニケーションをとることを意識しています。
楽しんで、自分の思うままに描いていきたいです」
Q5. 将来の展望は?
「世界的に注目されるアーティストになることが、わたしの夢です。
ただ、それは絵である必要はないと思っていて。大学卒業後はイタリアに留学して、映画についての勉強もおこないたいと考えています。音楽や写真、映画など、さまざまなことに挑戦して、世界に影響を与えていきたいです。
また、動物のボランティア活動に参加するのも、目標のひとつです。作品の中でも、よく動物を描いているのですが、動物が大好きなんです。雑誌の『ナショナルジオグラフィック』では、カメラマンが野生動物の写真を撮影することで、支援のための資金を集めているらしくて。わたしもいつか、参加してみたいですね。
とにかく、やりたいと思ったことにどんどんチャレンジして、自分らしい人生を歩んでいきたいです」
王禎のプロフィール
年齢:19歳
出身地:上海市嘉定区
所属:多摩美術大学
趣味:スケートボード、篆刻、ヨーヨー、詩を書くこと、写真撮影
特技:書道
大切にしている言葉:私の思いつきです
王禎のSNS
この投稿をInstagramで見る
Photo:Naoko Araie
Text:Chikiri Kudo