
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、ルワンダとコンゴ民主共和国でおこなわれている、社会問題をテーマとしたパフォーマンスについてお伝えします。
ルワンダとコンゴのパフォーマーが語る社会問題
気候変動やジェンダー格差、貧困など、世界には常にさまざまな社会問題があふれています。こうした問題の認知を広めるため、近年、SNSでの啓蒙活動やデモなど、世界中で多様なアクションがおこなわれています。今回は、アフリカ在住のZ世代ライターが注目する、ユニークな形でアフリカの社会問題に取り組むパフォーマーを紹介します。
虐殺の歴史を、劇をとおして世界に
西アフリカに位置するルワンダは、アフリカでもトップクラスで安全な国として知られています。しかし、現在の姿とは異なり、同国には過去に大量虐殺が起きた歴史もあるのです。
ルワンダをはじめ、アフリカに暮らす「ツチ族」と「フツ族」の間では、長きにわたって内戦が続いていました。1994年、フツ系であった大統領の暗殺をきっかけに、内戦が激化。フツ族の過激派によるツチ族の虐殺が起き、多くの命が犠牲になりました。正確な犠牲者の数は明らかになっていないものの、約100日間の間におよそ100万人が殺されたとも言われています。
そうした歴史を忘れないために、現在でも虐殺に関する学習や平和活動が積極的におこなわれています。しかし、アフリカ在住である筆者の友人のルワンダ人は「ルワンダの全学校で虐殺について学ぶにもかかわらず、虐殺を経験した身近な人には、話を聞きづらい」と話していました。
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そのように、国内でも、教科書をとおして歴史上の出来事としてしか学ぶ機会がない中で、ルワンダ人の若手俳優で構成された劇団「マシリカ(Mashirika)」による『Generation 25』は、コンテンポラリーダンスや音楽、詩、話し言葉を使って、虐殺の歴史と教訓を伝えています。
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彼らの劇では、3つのキャラクターが描かれています。人を殺してしまった親、幼いころに虐殺を生き延びた人、そして、虐殺について読んだり聞いたりした人です。また、実際に演じる俳優の中には、親を虐殺で亡くした人や、難民として他の国に渡った人、血縁者が虐殺に加担していた人もいるのだそう。
『Generation 25』は、「虐殺はどの国でも起こりうる」という考えのもと、世界に公演の場を広げ、ルワンダの歴史とメッセージを伝えています。
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ユニークなパフォーマンスで貧しい人や子どもにも社会問題を伝える
中央アフリカに位置し、コバルトや銅といった鉱物資源が取れることで有名なコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)。そんな同国では、鉱山における児童労働や、民族対立、熱帯雨林の破壊、正しく廃棄されず堆積し続けるゴミ山などが問題になっています。そうした社会問題を広めるため、コンゴでは「キンアクト・フェスティバル(KinAct Festival)」という、全身にゴミをまとったパフォーマーが踊る、ユニークなイベントが開催されています。
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パフォーマンスやアートをつうじて社会問題を伝えるアート集団「キンアクト(Kinact)」は、2015年にコンゴ人のEddy Eketeとフランス生まれのAude Bertrandによって設立されました。毎年、首都のキンシャサのさまざまな地域で「キンアクト・フェスティバル」を開催しています。
「キンアクト・フェスティバル」は、チケットを買って参加するようなイベントとは異なり、さまざまな人が楽しめるようになっています。貧しい地域やスラム街なども訪れ、子どもたちのためには、絵画や演劇、彫刻のワークショップも開催。お金のない人や子どもにも、アートやパフォーマンスをつうじてメッセージを伝えられるような工夫がなされています。
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パフォーマーはコンゴが抱えるさまざまな課題を提示するため、ゴミ捨て場や、路上で拾ってきた廃棄物で衣装を作ります。環境保護を訴えるための衣装では、リサイクルされるべきであった缶やボトルが使われ、HIVの啓発のキャンペーンでは、コンドームが使われました。時には、電線やコルク、ゴム手袋などが使われることも。そのどれもが、環境破壊や児童労働、民族対立といったあらゆる問題をかかえるコンゴにおいては、社会問題を伝えるための重要なピースになるのです。
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多様化する社会問題へのアプローチ
今回紹介した人々は、非常にクリエイティブな方法で啓蒙活動をおこなっています。問題がさまざまであるように、それに対するアクションも多様であっていいはず。自分にあった方法、得意な分野で、社会問題に取り組んでみてはいかがでしょうか。
Text:Hao Kanayama