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美しい夜空のために。世界各国に広がる「ダークスカイプレイス・プログラム」に注目【Steenz Breaking News】

美しい夜空のために。世界各国に広がる「ダークスカイプレイス・プログラム」に注目【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、光害と「ダークスカイプレイス・プログラム」についてご紹介します。

新たな環境問題のひとつ「光害(ひかりがい)」

近年、世界各地で深刻な問題となっている「光害(ひかりがい)」。照明器具などから出る人工の光によって、景観や周辺環境に悪影響を及ぼす現象のことです。光が目的外の方向に漏れたり、周辺環境に合わない明るさや色であったり、必要な時間以外もついていたりすることが原因で起き、新たな環境問題のひとつだと言われています。

具体的に、どのような影響を及ぼしているのかというと、エネルギーの浪費のほか、近隣住民の安眠やプライバシーの妨害、交通面での安全性の低下などがあります。イタリアの「光害科学技術研究所」によると、人工的な光が増えたことにより、世界人口の3分の1以上が天の川を見られなくなっているのだとか。また、過剰な人工照明は、人間だけでなく、動植物や昆虫などの生態系にも害を与えていると言います。

このように、夜間の明るさが増すことで、さまざまな方面に影響が出てしまっているのです。

光害対策として誕生した「ダークスカイプレイス・プログラム」

光害問題を解決し、美しい夜空を保護・保全するために、2001年から「ダークスカイプレイス・プログラム」と呼ばれる制度がスタートしました。

アメリカを拠点とするNPO団体「ダークスカイ・インターナショナル」が始めた認定制度で、日本では「星空保護区認定制度」とも呼ばれています。認定には、光害対策の実施や教育プログラム・イベントの開催、夜空の暗さが基準値に達しているかなど、いくつかの条件をクリアする必要があります。また、認定地は「ダークスカイ・コミュニティ」や「パーク」「リザーブ」「サンクチュアリ」「ディベロップメント」、そして「アーバン・ナイトスカイプレイス」の6つのカテゴリーに分類。2023年10月時点で、211ヶ所の地域が認定されているそうです。

認定地は世界6大陸、22カ国におよびます。最近では、2024年10月にサウジアラビアの「アルウラ・マナラとアルカラミール自然保護区」が同国初のダークスカイプレイスとして認定され、話題を呼びました。また、サウジアラビア沖の「紅海」地域も、認定予定地だと言われているそう。認定予定のリゾート地では、プログラム可能なデジタル照明制御システムや天文タイマーを使い、持続可能な照明の提供と光害の影響を最小限に抑えることに成功しています。

日本のダークスカイプレイスは4ヵ所

このように、世界各国に広がるダークスカイプレイスですが、わたしたちが暮らす日本でも4カ所が認定されています。

まずご紹介するのは、2011年11月1日にアジア初となる「ダークスカイ・コミュニティ」に認定された「岡山県井原市美星町」。1989年に日本で初めて「光害防止条例」を制定した、星空保護の先駆けともいえる町です。

続いて、2018年3月に日本初となる「ダークスカイ・パーク」に認定されたのは、沖縄県・八重山諸島の「西表石垣国立公園」です。専門家が夜空の暗さを測定したところ、基準値の20.00mag/arcsec²を上回る、21.62〜21.99mag/arcsec²を計測。世界トップレベルの星空であることが証明されました。

3カ所目は、東京都の離島である「神津島」。島内の道路灯と防犯灯の400灯以上を「光害対策型」に交換した結果、光環境が改善され、2020年に「ダークスカイ・パーク(アイランド)」に認定されました。天候条件が良いときは、夜空の暗さが21.9mag/arcsec2に達するそうです。

そして最後は、2023年8月1日にアジア初となる「アーバン・ナイトスカイプレイス」に認定された、「福井県大野市の南六呂師エリア」です。環境省主催の「全国星空継続観察(2005年)」では、日本一美しい星空にも選ばれました。

暗く美しい夜空を守るために

照明器具などの人工的な光は、いまや、わたしたちの暮らしになくてはならない存在です。しかし、過剰な明るさの光が増えたことにより光害が発生し、さまざまな方面に悪影響が出ています。光害を減らし、適度な暗さのある美しい夜空を取り戻すためにも、認定地が増えることを願いたいですね。また、認定地を訪れる機会があれば、ぜひとも星空観察に挑戦してみてください。

Reference:
Dark Sky International
International Dark Sky Places

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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