世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、コンゴ民主共和国で拡大している大麻ビジネスについて、お伝えします。
生きるための手段としての大麻栽培
アフリカ大陸の中部に位置するコンゴ民主共和国は、アフリカで第二位の面積を誇り、金やレアメタルの産出国として知られています。
そんなコンゴにおいて、社会問題のひとつとされているのが、大麻栽培。法律では、所持や使用、取引においても違法とされていますが、コンゴ国内で広く大麻が栽培されているといいます。
大麻は、コンゴの一部の地域において、嗜好品としてだけではなく、飲み物にして薬草として使うといった文化があったそうです。病気や下痢に効くと信じられており、医療技術が発達していない地域で使用されていたそう。こうした背景により、古くから大麻を栽培してきた地域に加え、昨今では貧困と武装勢力による紛争が、さらなる大麻ビジネスの拡大に拍車をかけています。
コンゴは、数十年にわたって武装勢力が活発に活動しています。1998年以降、コンゴ紛争によって540万人もの人命が失われました。そうした紛争や不安定な政治情勢に加え、豊かな自然資源の恩恵が、外資系企業を中心とした一部の利権者によって支配されており、国民の多くが貧困と飢餓に苦しんでいます。
そうした背景から、コンゴはアフリカの中でも経済格差が非常に大きい国であり、男性は生きるために必要な収入を確保するために武装勢力に加入したり、女性は売春をしたりしていました。そして、大麻栽培もまた、そうした貧困によって広がっています。貴重な収入源として、大麻ビジネスに介入していく人も後をたたないのだそうです。
さらに、武装勢力や反政府軍による攻撃によって、市民の住む場所が奪われているのも原因のひとつ。筆者のコンゴ人の友人によると「自分が住んでいた地域では、街中に武装勢力が常にパトロールをしていて、住民は怯えていた」のだそう。もともと巨大な農場をもっていた農民などの居場所が奪われ、野菜や穀物よりも価格の高い大麻を栽培するようになる場合もあるといいます。
このように、生計を立てるために仕方なく大麻を栽培する農家や、それらを売り捌くビジネスマンなども生まれ、社会全体が大麻ビジネスでまわっている地域もあると考えられています。
大麻ビジネスと武装勢力や政治との関わり
さらに、大麻の栽培によって野生動物が危機に晒されているという問題点もあります。一部では、野生動物の生息地と重なる国立公園内でも大麻が栽培され、希少な野生動物の生息区域が破壊されつつあるのだそうです。
さらに、「ゴリラの楽園」として知られるコンゴ民主共和国のビルンガ国立公園内には、隣国のルワンダの反政府勢力、ルワンダ解放民主軍(FDLR)の活動拠点もあるとされており、近年では、そのFDLRによる大麻ビジネスへの介入も懸念されています。
期待できないコンゴ政府
このような現状に対して、政府は大麻を取り締まりつつも、実際は賄賂を要求して横目で見ているだけ、もしくは、自らも大麻ビジネスに関与している可能性すらあると言われています。
資源があるのに国民が豊かになれないコンゴで、市民が生きていくための手段になってしまっている大麻ビジネス。これ以上、拡大させないためにも、貧困問題の改善や、武装勢力と政府の泥沼化した関係性の解消が望まれています。
Text:Hao Kanayama