世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、日本発の「空飛ぶクルマ」を開発するスタートアップ企業についてご紹介します。
レジャーの秋到来で増える渋滞や電車の混雑
「敬老の日」と「秋分の日の振替休日」で、2週にわたって三連休が続いた9月。特に前半の三連休は、全国的に天気の良い日が多かったことから、レジャーを楽しむべく外出した人もいたかもしれません。
普段とは違うアクティビティに挑戦しやすい連休はうれしい一方で、人の動きがいつも以上に増えるため、電車の混雑や道路の渋滞に遭遇しがち。実際、前半の連休の最終日となった9月16日には、関東圏の高速道路において、東京方面に向かう車の渋滞が発生。夕方4時半には、関越道上りで高坂サービスエリアを先頭におよそ30kmの渋滞が発生したとの報道もありました。
こうした渋滞や混雑を避けられるような、新しい移動方法が生まれたら……。一度はそんなふうに「夢のような交通手段」について、考えてみたことがある人も多いかもしれません。
目的地までひとっ飛び!「空飛ぶクルマ」が実現間近
そんな多くの人の願いに応える「夢」を現実のものとする、日本発のスタートアップ企業があります。それが、「空飛ぶクルマ」という新しい移動手段を開発する「株式会社SkyDrive」です。同社は「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに掲げ、主な事業として「空飛ぶクルマ」の開発やドローン関連サービスを手がけています。
SkyDriveが現在開発している空飛ぶクルマ『SKYDRIVE(SD-05型)』は、ヘリコプターやドローン、小型飛行機の特徴をあわせもつ機体「電動垂直離着陸機(eVTOL)」の分野に属する、新しい乗り物です。
同社の製品は、現時点ではパイロット1名と乗客2名の計3名が搭乗可能で、バッテリー電気を電源とし、最大で15kmほどの距離を飛行できるといいます。
公式サイトに記載された構想によれば、同社は「空飛ぶクルマ」の開発・製造を通じて、現在の自動車のような気軽さで、日常的に空を移動できる未来をめざしているとのこと。街中にエアポートを置き、乗りたいところから目的地まで上空を一直線で移動できる、そんな世界の実現を描いているといいます。
大手自動車メーカー若手社員の自主的な活動が開発のきっかけ
このように、移動の概念を大きく変えてしまうかもしれないほど革新的な「空飛ぶクルマ」の開発に挑戦するSkyDrive。その誕生には、興味深い背景がありました。
この壮大なプロジェクトは、自動車・航空業界やスタートアップ関係の、若手社員による有志の活動から生まれました。もともとはトヨタ自動車に勤務し、調達業務に従事していたという、SkyDrive創業者の福澤知浩さん。2012年ごろ、近しい業界の若手とともに「CARTIVATOR(現・Dream On)」という有志団体を立ち上げました。活動を本格化させる中で、2014年ごろから「空飛ぶクルマ」の開発に着手し始めたそう。試作した機体がうまく飛んだことで「空飛ぶクルマ」の未来に大きな可能性を感じた福澤さん。開発スピードを上げたいと考えたことから、福澤さんはトヨタ自動車を退社し、SkyDriveを起業したのです。
万博でテスト飛行へ。世界が注目するSkyDriveの「空飛ぶクルマ」
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SkyDriveの空飛ぶクルマ『SKYDRIVE(SD-05型)』は現在、国の安全・環境基準をクリアするために、開発と安全性の証明活動を進めています。まだ実用化前の製品ですが、すでに国内だけでなく、世界各国が注目。2025年の『大阪・関西万博』でデモ飛行を予定しているほか、日本とアメリカ、韓国、ベトナムから合計で263機のプレオーダーが入っているといいます。
また、今年の8月27日には、2022年9月からおこなっている資金調達で、累計80億円を得られたと発表。その資金を元に、同社はこれから機体の安全性を確かめるための試験の実施、それに向けた環境・体制の強化、量産体制の整備などに着手する計画です。
「空飛ぶクルマ」がもたらす未来
もしも「空飛ぶクルマ」が実用化すれば、私たちの生活は大きく変化するかもしれません。渋滞や満員電車から解放され、目的地まで一直線に移動できるようになれば、日々の通勤や移動がより快適になるでしょう。
国土交通省の『国土交通白書 2020』には、世界における「空飛ぶクルマ」の市場規模は、2040年までに約160兆円にまで拡大するという予測値も掲載されています。SkyDriveの「空飛ぶクルマ」が今後、成長・拡大する市場の中でどのような役割を果たすのか、熱い視線が注がれています。私たちの暮らしと空が日常的に接続する日は、そう遠くない将来にやってくるのかもしれません。
References:
国土交通省『国土交通白書2020』
Text:Teruko Ichioka