世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、南の島国、フィジー共和国が取り組むサンゴ保護についてご紹介します。
世界のサンゴ礁の“いま”はどうなっている?
サンゴ礁といえば、海中の神秘的な光景を生み出し、美しい海を象徴する存在です。しかも美しいだけでなく、環境や生態系にとって、非常に大切な存在でもあります。地球の表面におけるサンゴ礁の割合はたった0.1%にも関わらず、9万種を超える生物のすみかや産卵場所となっており、生物多様性において、とても重要です。
一方で、海水温の上昇による白化現象など、近年サンゴは、世界的に危機的状況が続いています。このまま何も対策を打たなければ、2030年までに90%以上が死滅、2050年までにはその姿を見ることができなくなると予測されています。
このような状況下にある世界のサンゴ礁ですが、日本から約7,000㎞離れた南の楽園・フィジーで、サンゴを未来につなぐためのさまざまなアクションが始まっています。
「幸せあふれるフィジー」がめざすサンゴのある未来
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四国とほぼ同じ面積の国であるフィジー共和国は、南太平洋に位置する島嶼国です。GDPの35%を観光業が占めており、豊かな自然環境やビーチリゾートとして知られています。
フィジー観光局では、観光立国として持続可能な発展をもたらすために、サステナブルツーリズムの一環として、自国の環境保護活動を強化しています。観光に関わる事業者や地元住民を巻き込んだビーチクリーンアップや、ソーラーパネルで電力をまかなう水上バーなど、多方面からの取り組みが進む中、フィジーではサンゴ保護に関する活動も盛んです。
次世代につなぐ!サンゴ礁の遺伝子バンク
そうした保護活動のひとつが、「サンゴ礁遺伝子バンク」の設立です。フィジー政府観光局と、サンゴ礁の遺伝子を設計する非営利団体「Counting Coral」の協力によって立ち上がったこの「遺伝子バンク」では、水中に500以上の親のサンゴ礁を有しており、サンゴ回復の研究や保護への貢献が期待されています。
また、地元宿泊施設と連携した保護活動も展開されています。
2014年から行われている「OZONE(アウトリガー・ゾーン)」は、ホテルチェーンの「アウトリガー・リゾーツ&ホテルズ」がおこなう国際的な自然保護プロジェクト。宿泊者がサンゴの植え付けをおこなうもので、計100面のフットボール場に相当する面積へのサンゴ植樹の成果が上がっています。
希望の象徴「BULAリーフ」
気候変動による海水温の上昇、そしてそれによるサンゴ礁の白化現象は、観光や防災など、フィジーに暮らす人々の生活や国力にも大きく影響する問題です。そんな中、2024年に完成したサンゴ礁の養殖場「BULAリーフ」は、サンゴの明るい未来を彷彿とさせる一大プロジェクトとして注目を集めています。
ユネスコの「海の10年のアクション(Ocean Decade of Action)」のひとつとして認められた本プロジェクト。養殖場では、縦16m、横45mの高架金属フレームにサンゴを植え付け、フィジー語で愛と友情、歓迎のあいさつである「BULA」の文字を描いています。
本プロジェクトの大きなポイントは、「スーパーサンゴ」と呼ばれる、耐熱性のあるサンゴ1000以上を集め移植されたことです。移植したスポットでは、2024年3月以降も大規模なサンゴの死滅と白化が観測されていましたが「BULAリーフ」においてはいずれも回避しました。
熱ストレスに弱いサンゴをどのように守っていくかが、世界共通の課題である現在、「BULAリーフ」の事例は、サンゴをめぐる厳しい現状を打開するためのヒントとなるでしょう。
フィジーに学びたい、日本のサンゴを次世代につなぐヒント
沖縄県をはじめ、日本の海域には、世界的にも多くのサンゴが生息しており、その豊富な生態系や、美しい海をつくり出す、貴重な存在。しかしフィジーと同じく、日本のサンゴ絶滅も危機に瀕しています。
サンゴ保護について興味をもった人は、さまざまな取り組みを展開する企業や自治体などの情報を調べてみたり、サンゴ保護につながる商品やサービスを利用したりと、自分に合った方法を探してみてください。
References:
外務省『フィジー共和国(Republic of Fiji)基礎データ』
水産庁『サンゴ礁の働きと現状』
World Resources Institute『Reefs at Risk Revisited』
Text:kagari