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海洋ごみをどんどん飲み込んでくれる!太陽光で動く自律型ゴミ処理ボートが香港やインドで活躍中【Steenz Breaking News】

海洋ごみをどんどん飲み込んでくれる!太陽光で動く自律型ゴミ処理ボートが香港やインドで活躍中【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、太陽光で動く自律型ボートについてご紹介します。

世界的に問題となっている海洋プラスチック問題

いまや、世界的な問題となっている海洋プラスチック。その発生源はというと、漁網や釣り糸、ロープ、放置された船など海由来のものが20~30%ほど。一方、陸由来のプラスチックごみが70~80%を占めており、主に川や海岸線を通って海に運ばれています。

とはいえ、発生源がどちらであったとしても、海洋や生き物たちに被害が出ていることには変わりありません。現に生き物たちは、漁網に絡まったり、ビニール袋をエサと間違えて食べてしまったりしたことによって傷つき、最悪の場合、死に至る事態に追い込まれています。また、水質や景観の悪化、海岸機能の低下、船舶が海上を進む際の障害になるなど、問題が起きているのです。

米国の非営利団体「Oceana」によると、毎年海に流れ込むプラスチックごみは推定150億㎏。海洋や生き物たちへの被害をなくすためにも、わたしたちはごみの排出量削減に取り組まなければいけません。

香港のスタートアップ企業「Clearbot」がごみ収集もできる自律型ボートを開発

そんな海洋ごみ問題の解決に向けたアクションをおこなう企業があります。それが、香港大学の卒業生によって2019年に設立された、海洋技術のスタートアップ企業「Clearbot」です。

「Clearbot」が提供しているのは、汚染された水質の浄化をおこなう、自律型の船。太陽光発電で動くため、化石燃料を使用しないため、海で広く使われるディーゼル駆動船に比べると、二酸化炭素の排出を削減できます。水上を器用に動き回り、ごみを飲み込むように収集する姿は、まるで生き物のようです。

 

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その後、回収されたごみは掲載されているカメラで撮影され、船の中央部にあるバスケットに集められます。収集量は船の種類によって異なりますが、200㎏や500㎏の廃棄物を積載できるそう。香港をはじめ、タイやインドの政府や企業向けに提供されていて、2024年8月時点で、12隻が運行しています。

さらに船の用途は、海でのプラスチック廃棄物やその他のごみの収集にとどまりません。河川や湖では、増えすぎてしまった藻の除去や、駆除すべき外来種の対応にも活用されているのだそうです。

実際に行われた清掃プロジェクト

これまでに「Clearbot」は、インドのウミアム湖やガンジス川、タイのバンコク、香港などで清掃プロジェクトをおこなってきました。例えば香港のマリーナでは、水面に浮かぶペットボトルやジュースの箱、紙パックなどを回収するために、全長3メートルの自律型の船を使用。太陽光で動き、AIが搭載されているため完全自律型、なおかつ100%追跡可能で、近くに停泊しているヨットやボートを器用に避け、どんどんごみを飲み込んでいったそう。

他にも、2023年8月におこなわれた、インド・ウミアム湖での1週間にわたる清掃活動では、1時間に80㎏以上、1回のセッションで200㎏のごみを収集しました。この成果に、保健大臣であるラム・クマール氏も感銘を受け、船の性能の高さを体感したそうです。さらに、その2024年6月には、さらなる水質汚染の改善をめざし、500㎏もの廃棄物が積載可能な、AI駆動船の導入を発表しています。

 

水質改善は、動植物だけでなく、水域に暮らすコミュニティの健康にも良い影響を与えます。「Clearbot」の活動によって、1日でも早く衛生的な状態に戻ることを願いたいですね。

近年は、水質環境の保全をめざし、さまざまなごみ収集ロボットや船が開発されています。興味をもったという人は、以前、Steenzで掲載した、ドイツで開発された「クラゲ型ロボット」にまつわる記事もぜひ覗いてみてください。

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https://steenz.jp/14466/

Reference:
Where does the plastic in our oceans come from?|Our World in Data
海洋プラスチック問題について|WWFジャパン
令和2年版 環境・循環型社会・生物多用性白書|環境省
PLASTIC IS A GROWING THREAT TO OUR FUTUR|Protecting the World’s Oceans
Clearbot To Launch Solar-Powered Autonomous Boats To Combat Pollution In India|OutlookPlanet
Meghalaya To Use AI-Powered Boat To Clean Umiam Lake|NDTV
SVM Expands its Lake Cleaning Initiative with Clearbot|Smart Village Movement

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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