高校生と喫茶店
わたしが高校生だったころ、その場でミキサーで混ぜてつくる、生バナナジュースを出してくれる喫茶店があった。
学校と最寄り駅の間にあって、(他に気軽に入れる店がなかったというのもあるけど)友達とふらっと寄って、おしゃべりを楽しんだあのお店。「レトロブーム」とかはちょっと違う、商店街にひっそり佇むローカルな喫茶店に惹かれるのは、高校時代にあの喫茶店に行っていたからかも。
高校生だったわたしたちにとっては、制服を着ているだけで無敵で、どこで何をしていても、どんな些細なことでも青春になった気がする。ひとりではできないことでも、友達と一緒にすれば怖くなかったし、本当に無敵で最強だった。
高校入学と同時に登録したInstagram。そのハイライトには、日常を目いっぱい詰め込んで、好きなものやイケてるもの、やりたいことをたくさんアップして、友達に共有していた。
そんなInstagramのハイライトに共有したことの中には喫茶店で過ごした思い出がある。みんなの中にも、そんな無敵だったときの思い出があるんじゃないかな?
ヘルシーなのかわからない生バナナジュース
わたしが高校時代に通っていた、JR生麦駅近くの「軽食屋フレンド」。ハスキーボイスのカッコいいおばあちゃんがひとりで切り盛りしている。店前のかき氷のタペストリーの誘惑に、学校帰りのわたしたちは、まんまと吸い寄せられちゃう。
暑い夏の陽射しから逃げてきたわたしのお気に入りは、生バナナジュース! 甘さ控えめで、ナチュラルな味が懐かしい~。「痩せたい」と「食べたい」という欲求をいつも天秤にかけていた高校生のわたしにとって、生バナナジュースっていうのは、罪悪感低めの安心チョイス。
高校生のときって、胃袋が無限で、帰り道に何かしら食べてた気がするなぁ。
「今日はカロリーなんて気にしないもん!」そんなふうに、若さや勢いに身を任せちゃう日には、クリームソーダを注文したくなる。クリームソーダって、やっぱり喫茶店の代名詞のような存在。昔からきっと変わっていない、ちょっぴりチープなシロップ味が、たまに恋しくなっちゃう。
メニューにはあるけど注文できないもの
フレンドの店内には、ずっと前から変わってない、レトロでかわいいメニューが壁に飾ってある。
ただ印刷し直せば新しくなっちゃう紙のメニューではなく、増やしたり消したり、変更したりが簡単にできない、このメニュー板。何年もアップデートされずに残っているこのメニューたちは、いろんな常連さんに愛されてきたんだろうなぁ。
ただし、メニューに載っているものが全部注文できると思ったら大間違い。日によっては注文できないメニューがあるのも、こういう個人のお店のチャームポイントだと思う。わたしも高校生のとき、注文しようと思ったものがなくて、替わりにオススメしてもらったがすごくおいしかった、っていうことが何度もあった。
おばあちゃんからの代替案は、実はおすすめメニューだったりするのだ。
オーナーの「好き」が詰まった店内
フレンドは、いま流行りドッグカフェじゃないけど、かわいいワンちゃんがいる。正確には、ワンちゃんのオブジェ。聞くと、家で飼っているワンちゃんにそっくりらしい。わたしの家にもワンちゃんがいて、大の犬好きのわたしにとっては、最高の出会い!
高校生だったわたしが、友達に見てほしい思い出をInstagramのハイライトに詰め込んでいたように、お店のインテリアは、マスターであるおばあちゃんが見せたいものを詰め込んだハイライトなんだろうなと思った。
よく飼い犬や猫の写真を店内に飾っている喫茶店を見るけれど、「わたしのかわいい子を見て!」と自慢されている感覚になって、それがわたしは好きだなぁ。
みんなの街の喫茶店はどんな場所?
個人経営の喫茶店って、お店のマスターの「好き」を詰め込んだハイライトそのもの。メニューもそうだし、店内のインテリアもそう。きっと店名もそうなんだろうな。今度行ったら、なんで「フレンド」なのか、聞いてみよう。
わたしが無敵で最強だったときに通っていた喫茶店は、あそこにしかない。見慣れたあのメニューにも、ハスキーなおばちゃんにも、あの店がなくなっちゃうと、きっと二度と会えない。
そんなふうに考えたなら、近くの街にちょこんとある喫茶店に、少しの勇気を出して、行ってみたくなったんじゃない?
今回訪ねたのは…
喫茶 フレンド
昭和55年に創業。おすすめメニューは、生バナナジュース (500円)とクラシカルなクリームソーダ(450円)。ホットサンド(450円)も人気。
住所:神奈川県横浜市鶴見区岸谷1-23-6
営業時間:9:00~17:00
定休日:日曜日
キヨトカナのプロフィール
東京のはずれにある大学に、実家の車で通う大学3年生。
キャンプと銭湯、愛犬のLINEスタンプづくりが趣味。音楽を聴きながら散歩するのが最高の癒しで、髪色は月に2回はチェンジする
Photo:Nanako Araie
Hair&Make-up:Kotomi Goshima
Direction:Yukiho Wakao
Text:Kana Kiyoto