いまや、ひとり一台のスマホが当たり前の時代。10代や20代で、自分のPCやタブレット端末を持っている方も少なくないでしょう。しかし、その一方で、スマホやPCといったデジタルデバイスの大量生産や過剰消費が、昨今では深刻な社会問題になっています。
今日は、フランス発のグローバル企業『Back Market』社の協力のもと、デジタルデバイスがもたらす社会問題、およびその解決策として期待される「リファービッシュ」について紹介します。
スマホやPCの大量生産・過剰消費がもたらすもの
まず、スマホの製造工程では、原料として金、銀、銅などの貴金属に加え、リチウムやコバルト、ネオジムといったレアメタルが使われています。そうした金属は、鉱石への含有量がきわめて少なく、スマホを一台製造するのにおよそ267kgもの天然資源が失われているそう。このプロセスは非常に多くのエネルギーを消費し、環境にも大きな負担をかけています。
また、金属の抽出工程では、洗浄や冷却に大量の水が必要です。一台の製造につき89,000リットルの真水が消費されていて、これは、人がひとり、毎日シャワーを浴びた場合の、およそ1年分の消費量より多い数字なのだとか。さらに、鉱石の採掘やスマホの製造、輸送の過程では、二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に排出しています。
(Back Market社『2024年インパクトレポート』より)
人体や環境に有害な「電子ごみ」。途上国で処理されている現状も
次に目を向けたいのが「電子ごみ」。電子ごみとは、スマホやPCを含む、電子機器の廃棄物のことです。
国連のレポートによると、2022年に世界で排出された電子ごみはおよそ6200万トン。2030年には8200万トンにまで膨れ上がると予想されています。
電子ごみの増加が特に問題視されている理由は、大きく2つあります。まず、先述のように内部に貴重な金属が含まれていること。そして、鉛やカドミウム、水銀といった、正しく処理をしないと人体や環境に有害となる物質も含有している、という点です。
欧米諸国や日本を含む先進国では、電子ごみの多くを国内で処理することができず、発展途上国に輸出をしているのが現状です。それらの多くは、正しく、安全に処理されているとはいえません。たとえば西アフリカのガーナでは、貧しい人々が電子ごみに群がり、ケーブルや基盤を燃やしたり、酸で溶かしたりして貴金属やレアメタルを取り出し、生活の糧にしているそうです。その過程では、当然ながら大量の有害物質が発生し、問題となっています。
「リファービッシュ品」が問題解決の糸口に
そのような現状を受け、注目されているのが、スマホやPCを整備して再利用する「リファービッシュ」です。
リファービッシュ品はただの中古品とは異なり、中古で買い取ったデバイスを専門家が検査、クリーニング、必要に応じて修理を行い、新品同様の状態で販売します。金額はもちろん新品より安価で、多くの場合、動作保証が付いています。
そうしたリファービッシュ品を取り扱うマーケットプレイスのひとつに、フランス発の企業『Back Market』社があります。2014年にフランスで誕生したグローバル企業で、2021年3月には日本に初上陸。いまや18カ国でサービスを展開し、世界でもトップクラスのリファービッシュ品販売プラットフォームとなっています。
Back Market社がフランスの環境エコノミー庁(通称 ADEME)に働きかけ、行った調査によると、新品のスマホを買った場合と、リファービッシュ品を買った場合には、環境への影響に大きな違いがありました。まず、原材料として使用される天然資源を見てみると、リファービッシュ品は新品より、環境への影響が91%少ないことが確認されました。さらに、水の使用量は86%、電子ごみは89%、温室効果ガスの排出にいたっては92%も少なかったそうです。モニターやバッテリーの交換が必要な場合があるため、すべてを0にできるわけではありませんが、リファービッシュ品の方がはるかに環境負荷が少ないことがわかります。
(Back Market社 プレス素材より)
サーキュラーエコノミーのためにいま、指先ひとつでできること
先述したADEMEの調査によれば、フランスでのスマホの平均的な買い替え時期は、購入から2年から3年。買い替えとなった端末の8割は故障もなく、まだ使用できる製品だったそうです。日本もおそらく、それに近い状況にあると考えられるでしょう。
資源を採り、使って捨てるのではなく、リユースやリサイクルなどを通じて循環利用し続ける取り組み、またその経済システムを、サーキュラーエコノミー(循環型経済)と呼びます。持続可能な社会の実現のための重要なキーワードのひとつです。
スマホやPCを買い替えるとき、新品ではなくリファービッシュ品を買ってみる。そんな一人ひとりの選択が、サーキュラーエコノミー実現のための小さくも大きな一歩になるのかもしれません。
References:
The Global E-waste Monitor 2024
Back Market社『2024年インパクトレポート』
バックマーケット 公式サイト
https://www.backmarket.co.jp/ja-jp