
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日はマイクロプラスチック問題解決につながると期待される、紙製の人工芝についてご紹介します。
マイクロプラスチック問題を抱える人工芝
学校のグラウンドや家庭のベランダなど、幅広く使用されている人工芝。天然芝と比較しても耐久性の高さや手入れの手軽さなどから、広く普及しています。しかし利便性が高い一方で、長年の使用や管理状態などによって劣化し、その結果、マイクロプラスチックが発生してしまうという問題点も指摘されています。
日本国内において、年間140トンも流出しているマイクロプラスチックのうち、人工芝由来と考えられているごみは、質量比で全体の25.3%を占めるとする調査結果も。その実態は深刻であることが伺えます。環境省からも「こまめな清掃」や「適切な交換タイミングの見極め」などで、人工芝から出るマイクロプラスチックの流出防止が呼びかけられていますが、その問題解決につながる、新しい人工芝が誕生し、注目を集めています。
それが、王子ファイバー株式会社が製造する、天然繊維「かみのいと OJO+(オージョ)」を利用した人工芝です。
一般的な人工芝は、ポリエチレン・ナイロンなどの合成樹脂製が原料となっていますが、「OJO⁺」を用いることで、製造時のプラスチック使用料が大幅に軽減されます。その原料となるのは南米エクアドル産のマニラ麻。農薬や肥料要らずで収穫可能なオーガニック認証も取得しているサステナブルな天然原料です。マニラ麻は成長サイクルが短期であることから二酸化炭素の吸収に優れていることや、少量の水で育つことなど生産段階から環境負荷を抑ることができます。
また紙製であることから、OJO⁺を使用した人工芝からはマイクロプラスチックが流出することもなく、生分解性のため、土壌や海洋中でも自力で自然に還り循環するサイクルが確立できるのです。
人工芝 OJO⁺の機能性はどう?
従来のプラスチック由来の人工芝と比較して、使用感など、実際のところどうなのでしょうか。
「OJO⁺」の原料であるマニラ麻の繊維は、空気を多く含む多孔質な構造を持つことから、熱や湿気がこもりにくく、さっぱりとした肌ざわりをキープできるそう。また消臭・抗菌性にも優れていることから、気になる衛生面も安心です。紙でできているため、ゴワゴワせずに、やわらかな感触になっているのも特徴だそうです。
実際に活用されている事例もあり、たとえば、先進的な環境への配慮や環境教育をおこなっている品川区立環境学習交流施設「エコルとごし」内のキッズスペースに導入されています。
来館者に対する海洋プラスチックごみ啓発を促すだけではなく、紙素材の人工芝が持つ摩擦熱を通しにくい特徴は、子どもたちにとってもケガをしにくいというメリットがありあす。
人工芝の「脱プラ」の波及を期待
家庭やスポーツ施設などから発生する、劣化した人工芝由来のマイクロプラスチックは、自然界で分解されることはありません。生態系なども影響がでるでしょう。
そのため、紙製の人工芝が普及することは環境にとっても、また人間の健康にとっても、大きなメリットをもたらすはず。紙製の人工芝の動向に、これからも注目していきたいですね。
Reference:
環境省「一般向けマイクロプラチック発生抑制・流出抑制対策リーフレット」
SHIFTON「人工芝によるマイクロプラスチック問題を解決する紙製人工芝のご紹介」
Pirika「ピリカ事業紹介 ~海洋プラスチック問題最前線~」
Text:kagari