世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、バクテリアの活用方法についてご紹介します。
バクテリア駆動型バッテリーに注目が集まる
温暖化や人口増加などの問題に対応するために、著しい成長を見せる農業分野。環境への配慮と生産性の高い農業の両立をめざし、世界各国で、さまざまな研究開発が進められています。特に、環境配慮という面で注目したいのが、農業におけるエネルギー問題です。
農業の規模が大きくなるほど、人の手のみでは対応できなくなるため、テクノロジーの導入が必須になります。そして近年、それらを動かすために、太陽光や風などから生み出される二酸化炭素を排出しないエネルギーが注目されています。
とはいえこれまでは、例えば太陽光発電のように、ソーラーパネルの設置コストや土地の確保など、新たな課題と負担が発生してしまうため、なかなかエネルギーの切り替えが実現されないないという課題もありました。
そんな中で、大きな期待を寄せられているのが、英国のバース大学から発足したスタートアップ企業「Bactery」が研究開発を進める「バクテリア駆動型バッテリー(以下:Bactery)」です。
バクテリア駆動型バッテリーとは?
「Bactery」が研究開発を進める「バクテリア駆動型バッテリー」を簡単に説明すると、土壌のバクテリア(微生物)を動力源とする電池のこと。「土壌微生物燃料電池(SMFC)」という仕組みをベースに構築されており、土壌に存在する有機化合物を微生物が分解すると電子が生まれ、それを電気に変換して、バッテリー内にエネルギーとして蓄えます。
土壌中の微生物の働きによって自己充電がおこなわれるため、天候や場所に左右されることなく、24時間365日、クリーンなエネルギーを供給できるそう。また、ケーブルも不要で、電力会社に頼る必要がないため、遠隔地やオフグリッドの場所へも、電力を供給できます。使用範囲の制限がない点は、農業従事者にとっても大きなメリットと言えるのではないでしょうか。その他にも、使い捨て化学電池の使用率も下がることから廃棄物減少にもつながります。
耐用年数は25年以上であり、メンテナンス費用は不要、ユニットあたり25ポンド(約4,941円)のコストがかかる見込みです。現在のところ、2026年の商業販売を予定している「Bactery」。この技術を活用することによって、高価で維持の難しいエネルギーインフラを導入せずとも、収穫量の増加と資源節約の実現をめざします。
フランスではバクテリアの生物発光が夜の街を照らす
同じヨーロッパに位置するフランスでも、バクテリアのユニークな使い方が話題になっています。スタートアップ企業「Glowee」は、特定の生物が体内で化学反応を起こし発光する、「生物発光」と呼ばれる現象に注目。生物発光にピンとこない人は、ホタルイカや夜光虫が暗闇で光る場面を、イメージしてもらえるとわかりやすいのではないでしょうか。
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そんな「Glowee」は、パリ近郊の都市・ランブイエにて、市と連携して、本格的な生物発光実験を2022年より開始しました。例えば、フットボールほどの大きさのチューブに、フランス沖で採取された海洋細菌「アリイビブリオ・フィシェリ」を数十億個と、少量の基本栄養素を加えて照明をつくるといった取り組みを進めています。
ちなみに、発生する淡い青色の光は、空気を遮断すると消えるそう。また、このような生物発光は、他の企業や科学者も注目しており、発光酵素である「ルシフェラーゼ」の一種を含む菌類や植物などが、細菌より明るく発光するのではないかという仮説のもと、研究されています。
活用の幅が広がるバクテリア
多様化するバクテリアを活用した取り組み。一般的に、バクテリアのような生物を環境保全に活用する技術を、「バイオレメディエーション」と呼びます。環境保全は、いまの現代社会において、注目度の高いテーマ。今後、まだまだ伸びそうな分野ということで、期待が高まります。
Reference:
UK startup develops bacteria-powered batteries to revolutionise sustainable farming| Sustainability Beat
‘Install and forget’ soil-powered batteries could bring cheap, clean energy to farms in Europe|euro. news.
Bactery|GREEN ENERGY,RIGHT AT YOUR FEET
University of Bath startup creates batteries powered by soil|South Wester
French Town to Light its Streets With Bacteria Luminescence That Needs No Electricity|GOOD NEWS NETWORK
発電のための蓄積土を用いた微生物燃料電池|日本建築学会大会(東北)学術講演会
バクテリアについての基礎知識|BioFuture,Inc
Text:Yuki Tsuruda