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南極西部の「終末の氷河」がいよいよ危ない?海面上昇が及ぼす恐ろしい被害【Steenz Breaking News】

南極西部の「終末の氷河」がいよいよ危ない?海面上昇が及ぼす恐ろしい被害【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、南極西部にある「終末の氷河」の危機について、ご紹介します。

加速する融解。「終末の氷河」崩壊は待ったなし

南極西部に位置し、アメリカ・フロリダ州とほぼ同じ大きさである「スウェイツ氷河」。実はこの氷河、別名「終末の氷河」と呼ばれています。このような不穏な呼び方をされているのは、この氷河が崩壊すると、壊滅的な海面上昇を引き起こす可能性があるからです。

研究者たちが海底から採取した海洋蓄積物(海洋コア)を分析したところ、氷河は1940年代ごろから急速な後退を開始。加えて、毎年、数十億トンの氷が海に流されており、これが海面上昇の4%を占めています。

このような巨大なスウェイツ氷河が崩壊すると、海面が65cmも上昇するという予想も出ているのです。さらに、南極西部に存在する周囲の氷床のバランスを保つ役割も担っているため、崩壊すると、少なくとも海面が約305㎝上昇するほどの水が流れ出て、世界的な洪水を起こす危険性も抱えています。

原因として注目されている地球温暖化とエルニーニョ現象

現時点でスウェイツ氷河は、辛うじてもちこたえている状態でありますが、近年、急速な融解が起きています。その原因として考えられているのが、地球温暖化やエルニーニョ現象です。

2024年5月に発表された研究論文によると、温暖化により暖められた潮流が、水深3.7マイルもの深さにある巨大な氷の塊に浸透し、活発な融解を引き起こしていることが明らかになりました。論文の著者も、氷が溶けるのに100年から500年かかると予想していましたが、それより速くなくなるのではないかと危惧し始めています。

もうひとつの原因であるエルニーニョ現象は、太平洋赤道域にある日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海水温が平均より高くなる状態が1年ほど続く現象のことです。数年おきに発生し、異常気象の要因になると考えられていますが、この現象が先述した1940年代の急速な氷河後退の原因である可能性が高いとして考えられています。

エルニーニョ現象の発生以降、氷河は回復できていません。その理由として、人為的な地球温暖化の影響が増大していることが挙げられているのです。人為的な温暖化が原因であれば、他人ごととは思えませんね。融解のスピードを減速させるためにも、ひとりひとりが行動することも大切なのではないでしょうか。

海面上昇が進むとさまざまな場所や分野に影響がでる

このまま気候変動による温暖化が進み、気温が上昇し続けると、南極や北極、山岳地帯などの氷河や氷床が溶け始めてしまいます。そして、崩れた氷や雪解け水は海に流れ、海面上昇につながります。そうなれば、ミクロネシア東部に位置するマーシャル諸島や、ポリネシア最西端諸島の国であるツバルなどの低地の国は、完全に沈没する恐れがあるといわれています。中には、すでに一部が沈んでいる国もあり、住民たちが望まない移住を強いられているのです。

それ以外にも、沿岸都市の上海やニューヨーク、ムンバイなども、壊滅的な被害を受ける都市として挙げられています。また、被害にあうのは人や都市だけではありません。海水が農地を浸水すると、塩害などで、農作物を育てられなくなったりします。また、地下水と混ざってしまうことで、飲料水や農業用水が不足することにもつながります。このように、海面上昇は、さまざまな場所や分野に被害を及ぼすのです。

決して他人事ではない、氷河の融解

崩壊が心配されている「終末の氷河」。日本から遠く離れた場所で起きていることもあり、実感がわかないという人も多いでしょう。しかし融解は確実に進んでおり、予想される被害が、現実味を帯びてきています。

原因のひとつが地球温暖化であるなら、わたしたちにも何かできることはあるはず。これを機に、無理のない範囲で何ができるかを考えてみると良いかもしれません。

Reference:
Thwaites Glacier Facts|Thwaites Glacier Collaboration
How much, how fast?: A science review and outlook for research on the instability of Antarctica’s Thwaites Glacier in the 21st century|Global and Planetary Change
Widespread seawater intrusions beneath the grounded ice of Thwaites Glacier, West Antarctica|Eric Rignot received
Antarctica’s ‘Doomsday Glacier’ Is Melting Even Faster Than Scientists Thought|Scientific American
エルニーニョ/ラニーニャ現象とは|気象庁
マーシャル諸島地理環境|国際環境NGO FoE Japan
ツバルガイドブック|国際機関 太平洋諸島センター
気候変動で起きる海面上昇について知っておきたい7つのこと|国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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