世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、サステナビリティあふれる3Dプリンター住宅の事例についてご紹介します。
3Dプリンター技術で解決が期待される建築業界の課題
近年、ものづくりの現場で浸透しつつある、3Dプリンター技術。個人製作の現場から、先端技術が必要とされる医療や、遥か大きなスケールの航空・宇宙分野にまで、活用の場は日々広がっています。
建築分野にもその波は押し寄せています。建築業界では、いわゆる「3K」と呼ばれる労働環境に起因する人手不足や、コロナ禍の影響から引き起こされたといわれるウッドショック(木材の価格高騰)、またロシアによるウクライナ侵攻による建築資材の高騰などといった課題が山積しています。
こうした諸問題を解決する糸口のひとつとして、3Dプリンター住宅が脚光を浴びています。
土を原料とした3Dプリンター住宅
現在、国内でも住宅メーカーやベンチャー企業が、次々と3Dプリンター住宅市場へ参入しています。そんな中、サーキュラーエコノミーの実現へ貢献が期待される住宅が発表されました。熊本県山鹿市に建てられたモデルハウス『Lib Earth House “modelA”』は、国内初となる、土を原料とした3Dプリンターの住宅です。『住宅版テスラ』を掲げる未来志向のこの住宅は、テクノロジーのみならずサステナビリティも重視しています。
最大の特徴は、主原料に「土」を採用していること。多くの3Dプリンター住宅の主原料はコンクリートですが、コンクリートを含む建設資材の多くは、リサイクルの取り組みも進められているものの、最終的には産業廃棄物として処理されてしまいます。
いいことだらけ!土のサステナビリティ
一方、『Lib Earth House “modelA”』は、持続可能性を追求する目的から、原料の7割が土となっているのです。土を原料として採用することで、安定した調達や近場からの調達による「地産地消」も叶います。また、最終的には自然に還すことができるため、ライフサイクルにおけるCO2排出量も、大幅に削減することができるのです。
土を使用した建築には、他にも多くのメリットがあります。まず、地域資源の活用推進によって、運搬や加工のコストを削減でき、住宅そのもののコスト低減につながります。また住宅は、その土地の気候風土に合わせた素材や設計を取り入れることも重要。土は、古来より土壁などとして、伝統技術とともに日本の建築に取り入れられてきた素材であり、高温多湿な日本の湿度調整や冬の断熱材としても優れた効果を発揮するのです。
未来の住宅に想いを馳せて
自由度の高いデザインを実現させたり、建築期間を短くしたり、コストを低減できるといった側面が注目されやすい3Dプリンター住宅ですが、今後、世界的にも、よりサステナビリティを意識する流れになることは必須でしょう。
環境に配慮された3Dプリンター住宅に住むことが当たり前となる日も、思いの外、近いことなのかもしれませんね。
Text:kagari