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起業家の原体験から生まれた電話対応サービス。AIを活用して電話応答をDX化するスタートアップに注目【Steenz Breaking News】

起業家の原体験から生まれた電話対応サービス。AIを活用して電話応答をDX化するスタートアップに注目【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、AIを活用した電話自動応答サービスを開発するスタートアップ企業についてご紹介します。

6割超の中小企業が課題を感じている「電話対応」

大企業から中小企業、街の小さな個人商店まで、日本でビジネスを営むほとんどの場面で、コミュニケーションツールのひとつとして利用されている「電話」。インターネットが発展したいまでも、ビジネスの現場で電話はとても多く使用されていて、そのために、実際、多くの企業が電話対応に課題や負担を感じています。

例えば、2023年10月に楽天コミュニケーションズ株式会社が発表した『中小企業の電話対応に関する実態調査』の結果では、顧客からの問い合わせ窓口として電話を活用している中小企業のうち、64.4%が「電話対応業務に課題がある」と回答しています。その内容としては、「即答できず、折り返しの電話が多い」「電話対応をする人がいない」「録音をしていないので会話内容の記録がない」など、さまざまな課題を抱えていることが明らかになりました。

電話対応を自動化できるクラウド型サービス『IVRy』

そのような電話対応にまつわる課題に対して、フロントオフィスDXを推進するスタートアップ企業である株式会社IVRyは、クラウド型の電話自動応答サービス『IVRy(アイブリー)』を開発・提供しています。

このサービスでは、電話がかかってきたときの対応方法を、自社の事業内容に合わせて自由にカスタマイズすることが可能です。例えば、受電内容がよくある問い合わせ内容であれば音声ガイダンスを流す、イレギュラーな問い合わせですぐに対応が必要なものは担当者へつなぐ、営業時間外の電話については録音とAIによる文字起こしをして、要約を担当者に送付するといった設定ができます。

また、今年の1月からは、ChatGPTを活用した「AI電話代行サービス」もスタート。これはAIが人間の代わりに電話を受け、要件を聞き取って記録を担当者に送付してくれるというサービスで、これまで人間が行っていた電話の一次対応をすべて機械化・自動化できます。電話を受けるのはAIのため、24時間365日いつでも電話対応ができ、今後は複数の言語にも対応していく計画です。

中小企業や個人商店でも使いやすいUI/UXと価格設定

AIなどの先端技術が使われている電話自動応答サービス『IVRy』ですが、中小企業やスモールビジネスをメインターゲットとしているため、利用料を抑えめに設定しているのが、大きな特徴です。電話自動応答サービスの基本機能のみの利用であれば月額2,980円で済みますし、オプションでAI電話代行サービスを追加しても、毎月5,000円の料金と電話1分あたり15円のAI利用料で、導入可能です。

また、ITリテラシーがあまり高くない人でも導入しやすいように、サービスの管理画面は、誰もが使いやすいデザインにこだわって作り込まれています。UI/UXを設計する上では、Apple社のデザインにおけるガイドラインなども参考にしながら、文字の読みやすさや操作のしやすさを追求していったそうです。

起業直後の「電話にまつわる失敗」が事業アイデアのきっかけに

このサービスが生まれた背景には、株式会社IVRyを創業した奥西亮賀さんの原体験がありました。

奥西さんは起業直後、会社の代表電話の番号をプライベートで使用していた携帯の電話番号に設定していました。その結果、自分の携帯電話に、無数の電話がかかってくることに。最初のころは、一件一件、丁寧に対応していたという奥西さんですが、必要のない営業電話が多く、次第に電話対応にわずらわしさを感じるようになり、いつしか「かかってくる電話はすべて無視」を決め込むようになったといいます。

しかし、無視した電話の中には、金融機関からの連絡など、重要なものも一部紛れていました。そのため、奥西さんは創業直後の大事な時期に、銀行からの本人確認の電話を取らなかったことが原因で融資の審査に落ちるという大きな失敗を経験。その原体験がもとになり、「企業が受電を効率よくコントロールできるサービスがあれば」と、事業のアイディアを考えるようになりました。

便利な機能をみんなで使う。クラウド型サービスだからできること

また、電話自動応答サービスをつくるにあたり、メインターゲットを中小企業やスモールビジネスに据えた理由は、奥西さんのサービスづくりに対する哲学にありました。

奥西さんは、ソフトウェアを作るのなら、その便利さを特定の企業が享受するのではなく、より多くの人がメリットを共有し合えるようなものにしたいと、かねてから強く考えていたといいます。そのため、『IVRy』もクラウド型サービスとして開発。多くの企業が少しずつお金を出し合うことで、大規模な自己投資や自社でのソフトウェア開発が難しい中小企業やスモールビジネスでも、先端技術を用いた便利な機能を使うことができるサービスとして作り込んでいきました。

奥西さんの立ち上げた株式会社IVRyは、今年の5月末に30億円の資金調達を発表。サービスの利用実績も、47都道府県の80を超える業界で、累計12,000アカウントを発行しており、1900万件の電話対応を自動化してきたといいます。

多くの企業に支持され、非常に速いスピードで拡大を続けるIVRy。これから人口が減少し、ますます人手不足が深刻化する日本の労働環境に「電話対応の効率化」という切り口でひとつの解決策を示そうとしています。

TextTeruko Ichioka

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Teruko Ichioka

ライター・編集

フリーライター。好奇心の強さは誰にも負けない平成生まれ。得意領域もスタートアップ、ビジネス、アイドルと振れ幅が広い。

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