Fasion&Culture

プライド月間に観たい!10代が主人公のLGBTQ+青春映画3選【映画アクティビストDIZのSCREEN BITE#21】

プライド月間に観たい!10代が主人公のLGBTQ+青春映画3選【映画アクティビストDIZのSCREEN BITE#21】

「10代のうちにたくさん映画を見て、インプットしておいたほうがいいよ」なんてよく言われるけど、過去作から新作まで、たくさんある作品の中から、どれを選べばいいかわからない……という10代に向けてスタートしたこのシリーズ。

21.2万人のTwitterフォロワーを持ち、「人生を豊かにする映画」を発信している映画アクティビストのDIZさんに、配信で見られる作品について、ひとかじり語ってもらいます。

今回は6月のプライド月間にあわせて、10代が主人公のLGBTQ映画を紹介します。同世代だからこそ、共感できる部分も多いはず。まだまだLGBTQについて知らないことも多いという人も、この機会に映画を通して理解を深めてみてください。

6月はプライド月間。青春映画から考えるLGBTQ

映画アクティビストのDIZです。毎年6月は、世界中でLGBTQ+への理解を深め、権利を啓発する「プライド月間」です。LGBTQ+のコミュニティを祝福し、差別や偏見のない平等な社会を目指すために、ひとりひとりの理解を深めようと設けられました。そこで今回は、そんなプライド月間に観ていただきたい、10代が主人公の映画を3本ご紹介します。

「多様性」という言葉だけが独り歩きしている昨今、本当の意味での多様性について、まだまだ考えていかなければいけないと、わたし自身も感じています。映画の主人公の目を通して、知らなかった世界を知ることができる素晴らしい体験とともに、みなさんと一緒に、深く考えていけたらいいなと思います。

『CLOSE/クロース』

『CLOSE/クロース』
Blu-ray&DVDセット好評発売中
価格:¥5,720(税込)
発売元:クロックワークス
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
各プラットフォームにて配信中
©︎Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022

第75回カンヌ国際映画祭でプレミア上映された際、「観客が最も泣いた映画」と称され、グランプリを獲得。10代の親友同士の間に起こる残酷な悲劇と再生を描く作品です。

13歳になったばかりのレオには、兄弟のようにいつでも一緒に居る親友・レミという大切な存在がいます。しかし、彼と仲がよすぎるあまり、同級生に「ふたりは付き合ってるの? 友達以上の関係に見えるよ」とからかわれたことをきっかけに、レミと距離を置くようになってしまいます。すれ違いの日々を送っていたある日、レミは突然、帰らぬ人になってしまいます。

自身もゲイであることを公言するルーカス・ドン監督によれば、「自分が10代に不安に思っていたこと」についての映画だそう。主人公・レオの心の移ろいは胸が締め付けられるほど、繊細でリアル。

学校という社会の縮図で、他者のセクシュアリティに無意識に特定のラベルを貼りたがる人たちから向けられる、心ない言葉。社会が植え付ける固定観念に、自分を押し込めようとしてしまう苦しみ。レオが感じているいくつもの葛藤や苦悩は、この記事を読んでくれている人の中にも、経験があるかもしれません。

自死描写やホモフォビア(同性愛嫌悪)を表す描写があるので、注意しながら鑑賞していただきたいのですが、本当に素晴らしい作品なので、自身の思春期と重ねながら、レオの再生を見守ってほしいと思います。

『Love, サイモン 17歳の告白』

『Love, サイモン 17 歳の告白』
ディズニープラスの「スター」で配信中
© 2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

こちらも『CLOSE/クロース』に似たテーマではありますが、自分のセクシュアリティを公表する準備ができていないのに、意図しない形で全校生徒に暴露(アウティング)され、強制的にカミングアウトさせられてしまう問題について描かれた作品です。

映画とは別の話になりますが、2022年には実際に、Netflixドラマ『ハートストッパー』でニックを演じるキット・コナーがSNSでセクシュアリティを詮索され、カミングアウトを余儀なくされる事件がありました。自身のセクシュアリティについて、必ずしもカミングアウトをする必要性はないことや、アウティングの問題についてなどが学べる作品になっています

海外だけでなく、日本でも誹謗中傷が加速し、問題になっていますよね。勝手な憶測で決めつけて拡散するというSNS社会の残酷さを常日ごろ感じていますが、わたし自身も無意識に加担してしまっていることがあるかもしれない……と、自身と向き合うきっかけをくれました。

『彼の見つめる先に』

Prime Videoで見放題配信中

盲目の主人公が恋したのは、それまで出会ったことがなかった、自分をありのまま受け入れてくれる人だった……。

目が見えない少年レオは、過保護な両親、優しいおばあちゃん、幼なじみに囲まれて、はじめてのキスと留学を夢見る、ごく普通の高校生。ある日、レオが盲目であることを特別視しない転校生・ガブリエルと急速に仲良くなっていきます。ガブリエルと一緒に過ごす時間の中で、レオはこれまで経験したことのない新しい世界を知り、そのうちに彼に恋してしまうのです。

甘酸っぱくてみずみずしくてもどかしいブラジル・サンパウロが舞台の青春映画。特にラストシーンは、素敵すぎて忘れられない作品です! 夏にぴったりの爽やかさと、ガブリエルがくれるさまざまな“初めて”という体験の煌めき……。

10代のときに出会っていたら、きっと人生が変わったかもしれないと思うほどの素晴らしい映画です。なかなかブラジルの映画に触れる機会もないと思いますので、このプライド月間に、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

遠い国の主人公からマイノリティを考える

今回は、LGBTQ+と10代がテーマの映画をご紹介しました! ベルギー、アメリカ、ブラジルと、さまざまな国の作品をご紹介しましたが、主人公の年代はみんな同じ。たとえ遠い国の主人公たちが経験することだとしても、たくさん共感できる部分が見つかると思います。傷ついたり、葛藤したりしながらも、最後には希望に向かっていく作品ばかり。そして映画を観ることで、LGBTQ+への理解が深まるきっかけになったとしたら、それはまた新しい映画の力ですね。

DIZのプロフィール

映画アクティビスト。ひとりでも多くの人に映画の素晴らしさを伝えるために、フリーランスで活動している。体験型の映画イベントを主催したり、配信サービスのSNS企画・編集やコピーライティング、さまざまな作品の評論を寄稿したりと、枠にとらわれずに活動している。
Twitter:@DIZfilms Instagram:@diz2049

Text:DIZ

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Atsuko Arahata

エディター

View More