世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカでのライフイベントについて。いまも残るマサイ族の伝統的な成人式や、アフリカ在住のZ世代ライターが実際に参加したエジプトの結婚式の様子などをお伝えします。
ライオン狩りで一人前に。マサイ族の成人式
入学式や卒業式、そして結婚式など、人生にはさまざまなライフイベントがありますよね。また七五三や成人式といった、日本らしいライフイベントも。では、遠く離れたアフリカでは、どのようなライフイベントがあるのでしょうか。今回は、さまざまな国のライフイベントの実態を調査してみました。
ケニアとタンザニアに120万人以上いるとされているマサイ族は、独自の文化や生活様式、言語で伝統を守ってきました。マサイ族のライフイベントというと、成人になる儀式が挙げられます。マサイ族の男性は、10〜20歳のとき、10年に一度開かれるこの儀式で、割礼をおこない、ライオンを仕留めます。
弓などは使えないため、近距離で布をライオンの顔に被せて視界を奪うことで、ライオンの動きを制して仕留めます。マサイ族の戦士を務める筆者の友人は、いままでに3回、ライオンに噛まれたことがあって、その腕には噛み跡が残っています。その友人いわく、「傷跡は男の印」なのだそうです。
しかし近年、トロフィーハンティング(動物の頭部や皮を持ち帰ることを目的とする狩猟の形態。欧州からの観光客に人気)などによって、野生動物の減少が問題視されていて、ライオン狩りが行われる頻度は以前に比べて減っているのだそう。
農業をしない遊牧民であるマサイ族にとって、野生動物から家族や家畜を守るスキルを得ることは必須でした。こうした生活様式が、「ライオンを仕留める」という成人の儀式にも関係しているようです。
知らない人も来てしまうエジプトの結婚式
アフリカの国々には、盛大な結婚式が好まれる国も多くあります。中でもエジプトは、豪華で大規模な結婚式を開くことで有名です。日本のように招待された人だけが参加する結婚式とは異なり、噂を聞きつけた人は誰でも参加できます。
そのため、数百人が集まって「誰が参加しているのか、新郎新婦も把握していない」、なんていうことはよくあること。招待どころか、直接面識のない友人の友人の友人までもが気軽にパーティ感覚で参加していることもあるそうです。
筆者が参加した結婚式は、エジプトの音楽とともに、参加者全員でベリーダンスを踊るなど、終始和気あいあいとした雰囲気でした。日本と比べると格式ばったものではなく、自由な印象を受けました。
結婚式がこのように盛大におこなわれ、重要なライフイベントとなる理由として、エジプトの宗教も関係しています。エジプトをはじめ、イスラム国家では、結婚までの性行為が禁止されているうえ、敬虔なムスリムは、結婚するまで手をつないだり、家を訪れたりといった行為も禁じています。
またアフリカでは、結婚の際に新郎側が新婦の家族に結納品を贈る文化があります。家具や家畜、現金が贈られることから、経済的な面でも、結婚式は嬉しいイベントなのです。エジプトでは男性から女性に高価な装飾品が贈られることが多いうえ、ご祝儀を贈る文化はないため、新郎側が結婚式の費用をすべてを負担しています。そのため、豪華な結婚式を行うことが、一種のステータスの表れだといえるかもしれません。
アフリカの国によってはベビーシャワーの習慣も
結婚式のほかに、アフリカで人気のあるライフイベントとして、ベビーシャワーがあります。出産を控えた妊婦のためのパーティのことで、多くの場合、子どもの性別が判明したときに、妊婦の家族や友人がお祝いをします。
ベビーシャワーの起源は、古代エジプトや古代ギリシャの時代だといわれています。古代エジプトでは、母親になる過程で妊婦の体に不純物を持ち込まれると考えられており、それを浄化するための儀式として認識されていました。対してギリシャでは、新しい命の誕生は「平和が訪れた」ことを意味しており、妊婦と新しい命への喜びと歓迎のために開かれていました。
第二次世界大戦後、アメリカで急激に広まった習慣ですが、ケニアやウガンダをはじめ、多くのアフリカの国でもベビーシャワーが開かれています。アフリカの多くの国には、元来、「子育ては両親だけでなくコミュニティ全体がするもの」という認識が強い傾向にあります。だからこそ、出産を控えた友人や近所の妊婦をお祝いする文化が、自然と広まったのではないでしょうか。
アフリカでの多様なライフイベント
今回は筆者が実施に参加したイベントや、友人から伝え聞いたイベントをご紹介しました。アフリカの文化には大きな地域差があり、民族や貧富の度合いによっても違いがあることがわかりました。急激な発展やグローバル化により、今後もアフリカのライフイベントにはさまざまな変化が生まれてくるかもしれません。
Text:Hao Kanayama