「気になる10代名鑑」の692人目は、松田英仁さん(19)。美術大学で油絵を専攻しながら、画家・ミレーに影響を受け、一枚の絵から実感が感じられる絵を描くために研鑽を積んでいます。この取材の直後に20歳の誕生日を迎えるという松田さんに、10代最後の言葉として、印象的だった出会いや、いま興味があることについて聞いてみました。
松田英仁を知る5つの質問
Q1. プロフィールについて教えてください。
「武蔵野美術大学で油絵を専攻しています。といっても、油絵はそんなに長くやってきてないので、基礎から学び直そうと頑張っています。
美大に進んだのは、保育園でのお絵描きから始まって、思うままに絵を描いていたら、まわりから褒められることが多かったことがきっかけ。小中学校のときは、漠然と絵が好きだなと思っていました。高校進学のとき、美術系の高校に通うことも考えたのですが、まだ絵を究めていく覚悟がなくて断念してしまって。
でもやっぱり、絵への気持ちが諦めきれず、高2の夏に、美大の予備校に足を運んだんです。見学した油絵の教室の雑多な雰囲気に惹かれて、それから油絵の勉強を始めました。スタートが遅かったので力が足りず、1年目は不合格でしたが、そこから浪人を経て、今年の春から晴れて美大生になりました」
Q2. どんなことをテーマに活動をしていますか?
「自然に情報が入ってきて、絵の奥にあるストーリーを思わず想像してしまうような、そんな“不思議と実感のもてる絵”が描けたらいいなと思っています。
そう思うきっかけになったのは、中学生のときに見た、ミレーの『種を蒔く人』という作品です。一枚の平面的な絵画なのに、光の温かさや土の匂い、気持ちのいい風を感じたような気がしたんです。
僕もそういう作品が書けるように、“少しだけ潰れたケーキの箱”みたいに、何か意味ありげで面白いモチーフや景色の切り取り方を日常的に探しています」
この投稿をInstagramで見る
Q3. 活動する中で、印象的だった出会いは?
「予備校で出会って、一緒に頑張ってきた友だち3人との出会いですね。一緒に過ごした時間はかけがえのないものですし、いまでも大事な友達です。高校ではまわりに絵に興味がある人がいなかったから、予備校で友だちと絵について話せることが嬉しくて。心を開けたし、どんどん仲良くなっていきました。
みんな浪人生で、アルバイトをしながら、そのうちのひとりが見つけた取り壊し予定のビルの一室を借りて、ゼロからアトリエをつくって、そこで黙々と絵を描いて……。見守ってくれた近所の方へのお礼も込めて、去年の冬にそのアトリエで展示会もしたのも、すごく良い思い出です。
彼らと過ごした時間や会話に支えられたからこそ、心折れず、合格まで走り続けられました」
この投稿をInstagramで見る
Q4. 活動におけるインスピレーションの源は?
「山が好きなんです。親の実家が山形県なんですが、行くときは山の景色をデッサンします。山の形に特に魅力を感じていて、よくモチーフにしています。受験時の課題にも、山の絵を描きました。自然と心を通わせる時間は、なんだか癒されますし、リフレッシュできるんです。
あとは、誰かとおしゃべりして、自分じゃない誰かの人生とか価値観の一部に触れることって、すごく素敵で役立つことだなと思っていて。実感をもつ絵を描くためにも、ものの見方の引き出しを増やすことにつながるんです。だから、自分の作品を見て話している人の会話を後ろで聞いたり、話してみたりする時間が好きです」
Q5. 今後の目標は?
「アーティストとして、絵だけで食べていければ幸せです。それができなくても、どんな形でも、絵を描き続ける人生でありたいなと思っています。
いまはやっと入れた美大での生活に少しずつ慣れてたところで、すごく充実しています。文化祭など、これからの楽しみもたくさんあります。
きっと大学では、刺激的な人たちとの出会いもあると思うので、一緒に創作できたら嬉しいし、これまでに出会ってきた友だちとの創作もして、また展示会にも挑戦してみたいです」
松田英仁のプロフィール
年齢:19歳
出身:東京都荒川区
所属:武蔵野美術大学
趣味:音楽、ラジオ、美味しい食事
特技:初めて会う人との上手い距離感を見つけること
大切にしている言葉:絵を描く時は限りなく素直に
松田英仁のSNS
最近描いてるやつ1#デッサン #油絵 pic.twitter.com/0HPGZigG5i
— matsu:Da (@ringoame8989) January 24, 2024
この投稿をInstagramで見る
Photo:Eri Miura
Text:Chihiro Bandome