世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、パーソナルドクターによる予防医療サービスを提供する、注目のスタートアップ企業について、ご紹介します。
いま大きな注目を集める医療系スタートアップ『ウェルネス』
2024年4月、予防医療の提供を目的としたパーソナルドクターサービス『Wellness Membership』を運営する株式会社ウェルネス（以下、ウェルネス）が、複数の投資家から2.8億円の資金 調達 をおこない、話題を集めました。
同社の運営するサービスは、2024年4月に3周年を迎え、利用者数も経営者を中心に累計500人 を超えたといいます。着実な成長を遂げていることも相まって、昨今盛り上がりを見せている医療系スタートアップの中でも、いま特に熱い視線が注がれている企業のひとつです。
ではなぜ、多くの人がこの企業に注目しているのでしょうか。それは、同社のパーソナルドクターサービスが、これまでは「治療」に特化していた「医療」そのもののあり方を大きく変えるかもしれないからです。
医学部生時代の経験から「予防医療」の大切さに気づき創業へ
医療というのは一般的に、病気になったときに提供されるもの。医師とは患者の病気を診る存在であり、基本的には病院の中で、患者が医療にアクセスしてくれるのを待つしかありませんでした。しかし、ウェル ネスを創業した中田航太郎さんは、医学生のときに経験した急患対応をきっかけに、そうした従来の医療のあり方に疑問を持ち、予防医療に目を向けることとなったのです。
中田さんは医学部5年生のとき、心臓血管外科で臨床実習をおこなっていました。ある日の夕方、病棟に50代の経営者が急患として運ばれてきます。深刻な状況にあったその患者は、家族や会社の従業員が心配そうに見守る中で、19時から緊急手術を受けることに。深夜2時まで続いた手術によって、なんとか一命をとりとめました。
ただこの経験は、中田さんの中で “命を救えたハッピーなエピソード”として終わることはありませんでした。急患で運ばれてきた患者が、実は1年ほど前から人間ドックで通院を指示されていたにも関わらず、医療にアクセスしなかったことを知り、「本来はもっと早いタイミングで治療を開始することができたのではないか」と感じたそうです。
現在の日本社会には、病気を予防するフェーズでの取り組みが不足している……。そう考えた中田さんは、予防医療の領域で事業をおこなうべく、ウェルネスを立ち上げました。
めざすのは「医師の役割のパラダイムシフト」
そのような背景のもとに立ち上げられたパーソナルドクターサービス『Wellness Membership』は、利用者の病気を予防し、日々の健康を維持するために、予防医療の専門知識を身につけた医師が専属ドクターとしてアドバイスをおこなうサービスです。
カギとなるのは、利用者の健康診断や睡眠、歩行、家族の病歴、服用中の薬やサプリといった“健康管理”にまつわるデータ。これらのデータを専用アプリに蓄積し、医師がデータを分析することで、各利用者の健康管理に最適なアドバイスを行えるようにしています。また、アプリ内では365日、いつでも健康相談を受け付けているほか、健康管理へのモチベーションを維持する仕掛けとして、3か月に1回、対面またはビデオ通話での、Face-to-Faceでの面談も実施しています。
こうしたサービスを通じて中田さんがめざすのは、「医師の役割のパラダイムシフト」です。予防医療の領域で活躍する医師を増やし、病気の予防で医師を頼ることが当たり前になれば、現在日本で大きな問題となっている「医療費の増大」を食い止めることができます。
また、2028年ごろに団塊の世代が減少し始めると、日本では「医者あまり」の時代が到来するといわれています。加えて2024年からは、医師にも残業時間の制限が設けられ、これまでのように長時間働くことで、多くの報酬を得るということが難しくなりました。そうした環境の中で、日本ではまだ発展途上にある予防医療の市場を切り拓くことで、諸問題の解決を叶えることができるかもしれません。
医療の未来を見据え、少し先の時代に本当に必要なインフラを整えようとしているウェルネス。日本の未来の医療を変えるかもしれないこのスタートアップに、今後も注目していきたいですね。
Text：Teruko Ichioka
