Steenz Breaking News

不法移民をルワンダに移送できる法律がイギリス議会で可決。強硬化しつつある難民への対応を考える【Steenz Breaking News】

不法移民をルワンダに移送できる法律がイギリス議会で可決。強硬化しつつある難民への対応を考える【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、イギリスで可決された、不法移民をルワンダに移送できる法律についてお伝えします。

不法入国者をルワンダに強制移送できる法案

ヨーロッパでは、アフリカや中東からの難民申請者が増加の一途をたどり、大きな問題となっています。イギリスも歴史的に移民の流入が多く、多種多様なバックボーンをもつ人たちが暮らしたことから、かつては移民に寛容的な国でした。しかし近年、不法移民が増えて社会問題化しており、そのことから彼らに対し厳しい処置がとられるようになりました。

先月、イギリス議会では、不法移民の難民申請を認めず、資金援助と引き換えにルワンダに移送できるという法案が成立しました。また、入国管理局の職員が不法移民の自宅を訪れ、手錠をかけて強制的に連行するという動画を、政府が公開しています。

もともとは2022年4月、当時のボリス・ジョンソン首相が発表した政策であり、昨年、この政策がルワンダに移送される人々の人権侵害であるという控訴院の判決を支持して、違法と判断されていました。しかし現在のリシ・スーナク政権は、移民流入阻止を掲げており、ついに先月、同法案が承認されたのです。

難民の人権はどう守られる?

ルワンダに移送される可能性のある難民申請者は5万人を超えるとされています。さらに、ルワンダに移送されることを恐れ、アイルランドに逃れる人も増えていて、2024年だけで約6,000人が、陸路で国境を越えました。

イギリスで難民申請をするのは、アフガニスタン、トルコ、エリトリア、イラン、イラクといった中東諸国からの難民が多く、また近年、アフリカからの難民申請者も増加傾向にあります。母国での戦争や紛争から身を守るために逃れてきた人の中には、生活水準の高いイギリスを最終目的地に選ぶ人も多くいます。

今回の法律が成立したことで、アフリカから命からがらイギリスに渡ってきた難民が、またアフリカのルワンダに移送されることになるかもしれないのです。

イギリスの移民は953万人。これは、総人口の約15%を占めます。日本の総人口に占める外国人の割合は約2%であるため、イギリスの移民人口がいかに大きいかがわかるでしょう。移民による経済発展への貢献が期待される一方、不法移民を含む難民希望者の受け入れ費用は膨大であり、財政へのネガティブな影響が懸念されています。

さらに、フランスとの間のドーバー海峡をボートで渡るなど、危険なルートで渡航をし、航海中の死亡事故が発生するといった事態も。不法移民を受け入れない体制を取ることで、難民保護の費用の抑制や、海上での事故を防止したいという意図も考えられます。

一方でルワンダは、30年前に起きた虐殺以降、国際援助が集まって、急速に発展しました。同国は難民条約にも加盟しており、積極的に難民を受け入れている国です。アフリカでも群を抜いて治安の良い国とされ、汚職も少なく、難民が迫害を受けることもないといわれています。

イギリスはすでにルワンダに対し、不法移民の受け入れのための支援金として460億円を援助しており、今後も見返りとして、多額の資金援助がされる見込みです。

簡単には答えが見つからない移民・難民の問題

そもそも難民とは、「庇護を求めて外国へ逃げてきた人々」を指します。そのため、ルワンダへ移送されることになっても、そこで安全が保障されていれば、目的は達成していると考える人もいるでしょう。

しかし難民であっても、人権をもつ同じ人間として、住む国を選ぶ権利があり、強制的に排除されていくのは、問題があるともいえるでしょう。世界中で大きな問題となっている、難民の問題。さまざまな議論を読んでいるこの法案について、みなさんはどう思いますか。

References:
BBC「What is the UK’s plan to send asylum seekers to Rwanda and how many could go?」
ias「How Many Immigrants Are in the UK?」
総務省「令和2年国勢調査-人口等基本集計結果からみる我が国の外国人人口の状況-」
UNHCR「なんみんしんせいをされるかたへ」

Text:Hao Kanayama

SNS Share

Twitter

Facebook

LINE

Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

View More