「気になる10代名鑑」の703人目は、石渡海咲さん(19)。東京藝術大学で学びながら、“手仕事”をテーマにした制作活動をおこなっています。最近は、楽器づくりや糸紡ぎ、繊維づくりにまで興味が広がっているという石渡さんに、活動のきっかけや将来の展望についてお聞きしました。
石渡海咲を知る5つの質問
Q1. いま、力を入れて取り組んでいることを教えてください。
「実際に手を使ってものをつくる“手仕事”に着目した創作活動をしています。家庭科で習うような手芸が確立する前から、人々は糸を編んだり、布を織ったりと、手仕事をしながら生活していました。そういった、生活と密着したいろいろな手仕事を再現したり、実演して見せたりしています。
最近は、布を織る動作に合わせて音が鳴る、機織機の展示をしました。実際に自分でもその機織り機をつかった機織りを実演して、来場したお客さんに見てもらって。機織りの構造の面白さや、楽しさも感じてもらいたかったし、実際に見てみてどんな感想をもったのか、直接聞きたかったんです。自分がつくったものに対する反応って、全然想像どおりじゃないけど、そこがとても面白くて。いつも、創作のモチベーションになっています」
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Q2. 活動を始めたきっかけを教えてください
「モーリス・ルイスというアメリカの画家の絵を観たことがきっかけです。
幼いときから、紙があればぜったいに何か描いてしまうくらい、絵を描いたり工作したりするのが好きな子どもでした。高校も油画専攻でずっと絵を描いていたのですが、『どうやったらかっこいいと思ってもらえるような絵を描けるか』みたいなことをずっと考えるのが、嫌になってしまって。
そんなとき、モーリス・ルイスの作品に出会ったんです。たくさんの人に理解してもらおうとすると、どうしてもきれいに描こうとしてしまう。そこに縛られない表現の仕方に触れることができました。そこから、無理に絵を描くのをやめて、もともと好きだった手芸のほうに軸足を動かして、手仕事についての勉強を始めました」
Q3. 活動する中で、印象的だった出会いを教えてください。
「小林桂子さんの『糸から布へ:編む・もじる・組む・交差する・織る技法』という本との出会いです。高校の卒業制作のために読み始めたんですが、いろいろな地域や時代の機織りの技術が、技法のジャンルごとにわけて書いてあって。あまりの知識量の多さに、圧倒されてしまいました。
わたし自身もいろいろな技術を学ぶなかで、小林さんがやっていたような技法のジャンル分けをしたのですが、ここまで網羅している人がいることに驚かされました。何回も図書館で借りて読み込んでいるけど、未だに理解しきれていない部分もあります」
Q4. 最近、あたらしく始めた挑戦はありますか?
「半年前くらいから、楽器製作に挑戦しています。音を作り出すための仕組みや技法を勉強しているのですが、糸を編んだり布を織ったりする行為と共通する部分があると感じていて。
わたしは“カリンバ”という、木箱に取り付けた細い金属棒を弾いて演奏する、アフリカの楽器楽器をつくったんですが、使う木材や大きさ、指のはじき方でも、全然鳴る音が違うんです。いま残っている楽器は、昔からいろいろな人が試行錯誤して、改善を重ねて作られたものなんだ、ということが実感できて。楽器って偉大なものだなって思います。
あと、何本か材料となる繊維をより合わせて糸を作る“糸紡ぎ”も始めました。染色科学を専門とする先生から、『布を自分で織る人は、糸からこだわってつくる人が多いから、やってみたら』と提案されて、興味をもったんです。さらに最近は、繊維づくりにまで興味が広がっていて。蚕を家で飼って、絹糸を自分でつくるところからチャレンジしてみたいんです」
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Q5. 将来の展望について教えてください
「遠く離れた地域で、フィールドワークをやってみたいです。藝大で知り合った先生たちも、インドやアフリカに行っている人が多くて。実際に、機織りや紡績の見学をしたり、つくられた布を買い集めて研究したりしているんです。わたしもいつか、世界各国に伝わる技術を、現地で学びたい気持ちが強くて。特に強く惹かれているのは、インドです。日本とはまったく違った、独特な文化が息づいている場所だと思うので、まずは一度、旅してみたいです。
これから先も自分が好きな創作を続けたいし、いろいろな地域を実際に訪れて、現地に伝わる技術を学びたい。体力があるうちに、興味があることは全部やりたいです」
石渡海咲のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都町田市
所属:東京藝術大学
趣味:手芸、植物を育てる
大切にしている言葉:脳みそが若いうちにやれることをやっておく
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Photo:Eri Miura
Text:Kanon Yoshizumi