世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、国内外で注目されている新しいまちづくり「チッタスロー」についてご紹介します。
チッタスロー・ネットワークにトルコのサフランボルとダダイが加盟
トルコの西黒海地域に位置する町、「サフランボル」と「ダダイ」。かつては香辛料・サフランの集積地として栄えたサフランボルは、趣きのある路地や歴史ある建物が特徴的な町です。町内には、ユネスコの無形文化遺産に登録されている「トルココーヒー」の歴史を紹介する博物館もあります。
一方ダダイは、複雑な木工細工が施されたオスマン帝国時代の家々が残り、活気のある市場には、地元で採れた多様な食材が並んでいます。また自然が豊かなことでも知られており、アウトドアや自然愛好家たちが集まる場所としても有名な町です。
そんな、独自の魅力で人々を惹きつけるサフランボルとダダイが、新たに「チッタスロー・ネットワーク」に登録されました。ちなみにサフランボルは、トルコで唯一、無形文化遺産とチッタスロー・ネットワークに登録されている町です。
現在、トルコ国内では、7つの地域と21の県にまたがる25地区が「チッタスロー・ネットワーク」に登録されており、その輪は広がり続けています。
そもそもチッタスローってなに?
「チッタスロー」とは、イタリア語で「スローシティ」を表す言葉で、スローフードやスローライフ運動から発展した、地域文化を広めるための国際的な取り組みのことを指します。その地域独自の食や農産物、生活、歴史文化、自然環境を大切にしながら、個性や多様性を尊重するまちづくりを目的に誕生しました。日本では、「スローシティ」とも呼ばれています。
1999年にイタリアで始まったチッタスロー運動が徐々に広がっていき、世界的なネットワークを構築するようになって生まれたのが、「チッタスロー・ネットワーク」であり、この考えや取り組みを世界に広げる活動をこなうスローシティ国際連盟の本部は、イタリアのオルビエート市にあります。
2024年1月5日時点で、チッタスロー・ネットワークに加盟しているのは、ヨーロッパを中心とした33か国・296都市。各地でさまざまな取り組みが行われており、例えば米国のカリフォルニア州・セバストポール市では、ボランティア団体が中心となって、農場体験やファーマーズマーケットなどを開催しているそう。またイングランド東部のノーフォーク州の町、アイルシャムでは、環境保護活動や生物多様性に配慮した政策の推進などに力を入れているようです。
日本にもチッタスローに認証された町がある
現在、日本国内でスローシティ(チッタスロー)に認証されている地域は、宮城県気仙沼市と、群馬県前橋・赤城地域のふたつがあります。
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気仙沼市は、2013年4月に日本で初めてスローシティに認証されただけでなく、2003年には国内で初めて「スローフード都市宣言」を行った町でもあります。その取り組みは、気仙沼市の豊かな自然と食に焦点を当てたものが多く、スローフード食育や地元食材や食文化、食を通して家族とのつながりを学ぶ料理大会「プチシェフコンテスト」などが開催されています。過去には、食と文化を堪能する交流イベント「気仙沼スローフェスタ2021」なども実施されました。
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また、2017年5月12日に認証された群馬県前橋・赤城地域では、スローシティの存在を多くの人に知ってもらうために、セミナーやイベントを多数開催されています。その他にも、豊かな自然が魅力の赤城南麓エリアでは、地元ガイドによる「白樺牧場秘密の絶景ツアー」や、約170年続く伝統行事「大胡祇園まつり」などがあります。2023年10月には、前橋市と気仙沼市のスローフードの販売やワークショップに参加できる「スローシティマルシェ」を開催し、多くの人がスロー体験を楽しみました。
チッタスローのこれからに期待高まる
チッタスローは、地域性を生かした活動であるため、加盟している国や都市ごとにその取り組み内容も異なり、その地域ならではのユニークな取り組みを知ることができます。日本でもふたつの町が認証されていますので、訪れたときは観光だけでなく、どのようなまちづくりが行われているのか、ぜひ気にかけてみてください。また、今後どのようにスローシティの輪が広がっていくのかにも注目していきたいですね。
Reference:
アメリカとイギリスの現地調査から見たスローシティの現状|神奈川大学 人文学会 国際日本学部 国際文化交流学科 崔 瑛
気仙沼市におけるスローシティの取り組みー現状と課題ー|神奈川大学 崔 瑛
Text:Yuki Tsuruda