今後の活躍が期待される、若手俳優/女優を発掘・育成する「私の卒業」プロジェクト。本日新潟での劇場公開となる今作『こころのふた〜雪ふるまちで』のメインキャストをつかみ取った7名に「Steenz」では座談会形式のインタビューを実施。クランクアップを前日に控えていた吉田愛佳役・小越春花さん、白石学役・下川恭平さん、清水真衣役・草野星華さん、橋本亮介役・渡邉多緒さん、椎名弥生役・今森茉耶さん、峰村由香役・阿部凜さん、藤巻司役・美波さんに作品のことやお芝居に対する熱い想いまで、和気藹々とお話していただきました。劇中、メイキングの写真とともにその様子をお届けします!
難易度の高い作品をつくりあげるなかで、メンバー同士のこころのふたもひらけていった
―さっそくですが、最初に脚本を読んだときの率直の感想はいかがでした?
美波:作品の第一テーマである「卒業」に加えて、今作では人口減少とか後継者問題とか、地方都市が抱える社会課題について描かれていたんです。脚本を読んで、自分がいかに日本が抱えてる問題について無知だったかを実感しました。まず、演じるうえで社会の現状をもっと勉強しなくちゃいけないなって思ったのが僕の第一印象かな。
下川:社会的なテーマのある作品をまだ10代、20代前半の役者たちが、軽く演じていいわけないからね。脚本を読み解いていく作業はとくに大変だったと思います。
今森:わたしは、それぞれの登場人物が悩みを抱えながらも、いつの間にか必要としてる者同士が惹かれ合っているところに、人との繋がりの大切さを感じました。でも演技が初めてだったから、最初は脚本の読み方もわからなかった…。
阿部:とりあえず、すごい大変だったよね(笑)。
下川:正直読んだときに希望は抱かなかった(笑)。脚本の高石さんも監督の北川さんも「今作は難しいよ」って仰ってるんですよ。シンプルに重い荷物を背負ってる感はあったなあ。
―では、それぞれの役柄を掴むのにも苦労したのでは?
草野:真衣役は設定が盛りだくさんで、消化しきれる自信がなかったです。正解の出ない問いを作中に残すような、完結できないキャラクターだからこそ難しかった。
小越:多緒くんは、自分の性格と亮介の間にギャップがあったんじゃない?多緒くんって、基本はおちゃらけてみんなのことを笑わせてくれるような存在じゃん。でも亮介って明るいけど、しっかり者で、決めるとこで決めるイメージ。
渡邉:いや、僕は逆に普段あんまり喋らない人間だったんですよ。でも亮介を演じるにあたって日常生活から明るくしてみようと思って。朝も家の玄関から出るときに、「よし、俺、亮介だ!」ってスイッチを入れて。どうやったらみんなを笑わせれるかなって考えたりしてました。
下川:そうだったの!?
渡邉:根は暗いので……(笑)。
草野:意外。見抜けなかった。
下川:それじゃあ、僕たちにこころのふた開いてくれてなかったってこと?(笑)
渡邉:でも、なんだろう。それが本当の僕になっちゃったかもしれないですね。
小越:でも自然と、実際のみんなの関係性が作中の関係性に近づいた気がしてる。作中では学が愛佳のこころのふたを開けるキーパーソンになっていたんですけど。わたしも愛佳と同じように、プライベートでは人とある程度距離がある方が落ち着くタイプなんです。でも良い意味で下川くんは壁をガツガツ壊して、入り込んで来てくれる感じだったよね。
下川:そうなんだ。あんまり壁、感じてなかった。ごめんなさい(笑)
トライ&エラーを繰り返して駆け抜けたワークショップ
―「私の卒業プロジェクト」は、オーディション合格後も、役が決まる前に演技について学ぶワークショップがありますよね。ワークショップについてはどうでしたか?
下川:オーディションを受けた後に、フルの仮台本が渡されて。それをもとにしたワークショップを受けたんです。自分の挑戦したい役を何個も選んで、その芝居に対してフィードバックがもらえることって今までなかなかなくて。台本にも丁寧に役の説明がしてあったり、情報がいっぱいあったので、ワークショップのときから、作品を一緒につくってる感覚だったよね。
草野:同じ役をつかみたい人もいるなかで「蹴落とし合うんじゃなくて、みんなで協力しないとだめだよ」って高石さんが仰っていたんです。ひとつの役柄をみんなで完成させるやり方は初めてで新鮮でした。
今森:わたしはあんまりオーディションとか受けたことないからわからなかったけど、やっぱりああいうのって特別だったんだね。
草野:でも変なことを考えなくて済んだかも。オーディションとかって正直、審査員の方の顔色を伺ったり「いまの発言まずかったな」とか、そういうことを考えちゃうんですけど。今回は間違ったら高石さんが「そこは違うよ」って言ってくれたから。純粋にお芝居のことで悩めたかな。
―では、ワークショップ期間中、苦戦したことはありますか?
小越:ありすぎる……(笑)。
今森:私はあんまりお芝居の経験がないからクオリティに対する不安もそうなんだけど、まず人に見られてるっていう緊張感がすごくあったな。四角い部屋の壁沿いに椅子が並べられて、その真ん中に立ってみんなにお芝居を見てもらうっていう機会があったんですけど、めっちゃ不安だった。あとは、お芝居にただ自分の感情を乗せたらいいわけじゃなくて、見てる人にどう届くかが大事なんだなって。主観と客観、どっちも持ち合わせないといけないのは、難しかった。
美波:僕は、高石さんや北川さんからの指摘をすぐに理解して、すぐに改善しなきゃいけないのが難しかった。
草野:例年は半年くらいかけてじっくりワークショップするみたいだけど、うちらは3週間で一気にやったからね。
下川:間が空かなかったので、あんまり復習する間もなく、突き進むしかないみたいな感じだったよね。そのぶん仲良くなるスピードも早かったけど。
阿部:たしかに。仲良くなった!
仲間でありライバルの想いを背負って。メインキャストとしての覚悟が決まった
―ワークショップ後、配役が決まったときの率直な感想を教えてください。
下川:それは茉耶に聞きたい。
今森:わたしはワークショップ期間中、ずっと真衣役がやりたくて。最終的に自分が演じた弥生役のことは1ミリも考えてなかったんです(笑)。だから、ワークショップが終わって「椎名弥生役、今森茉耶」って言われたときに「えっ?」って。
渡邉:「弥生だけはやってやんねー」みたいな感じだったもんね。
今森:そこまでは言ってないけど(笑)。弥生は自分と性格が似すぎてて嫌だなって思ってたんです。だから全部見透かされたような気もしつつ……。びっくりしたな。
阿部:わたしもずっと由香役のことはずっと考えてなかった。初めて台本読んだ時点で一番ありえない役だったんです。由香ってめっちゃ明るいじゃん。人を巻き込むような女の子だけど、わたしはすごい根暗だから(笑)。で、最後の役決めの日、一つだけ役を選んで、みんなの前で披露するチャンスがあったんです。それに向けて自分がどの役をやるかを一晩中考えて。やりたい役より自分ならできるかもしれない役として由香をやってみたら、由香になった。決まったときは何が起きたかわからなかったな。
小越:本当にやばかったよね。
―逆に、希望通りの役をつかめたひとはどうでした?
美波:複雑な気持ちでした。やっぱり同じ役を目指してた仲間たちがいたので。素直に喜んでいいんだろうけど、仲間のこと考えたらなあ……。みたいな感じ。
草野:覚悟もしたよね。わたしは正直、真衣をやる自信というか、確信みたいなのがあって。役決めの日に真衣役を選んだ人もいなかったし。だけど、改めて「清水真衣役、草野星華」って言われた瞬間に「重た……」とも思っちゃいました。決まった瞬間に不安が生まれた。
小越:そうだったんだ。いつも落ち着いてるように見える。
阿部:うん。圧倒的だったよね。
下川:僕は、最初に脚本を読んだとき、どう考えてもメインキャストの枠に自分に当てはまる役がなくて(笑)。僕が演じた学は設定で言うと、学年いち秀才の生徒会長で6人兄弟の兄。「いや、違うな」と思って。亮介役は僕と内面は似てるけど、彼女持ちでいい彼氏の役だし、違う。司役は、24歳で、こんな坊主が24歳の役をできるわけもなく……。役決めの日まで、違和感を感じながらも学を演じてたんです。だから学役に決まったときは驚いて。でも、高石さんも北川さんも「きょん(下川の愛称)にしか学はできないと思ったし、想像がつかなかった」「逆に学っていう役柄がきょんのイメージになった」って言ってくれて。そのときから「俺が学だ」って自信を持てたかな。
〜後編に続く(明日公開!)〜
私の卒業 第5期 『こころのふた〜雪ふるまちで〜』 概要
高校の卒業は、多くの人たちにとって、人生初めての大きな岐路。進学、就職といった進路の問題や、恋人や友人との関係の変化など、数々のドラマが生まれます。そんな高校生の思いや悩みを題材に、若者たちが前向きになれる物語が展開されるオリジナルストーリーが『私の卒業』。
第5期となる今作は、新潟県新潟市と燕市を舞台に、新潟市ふるまちの芸妓、燕市の金型など、地元に根付く文化に触れながら、人口減少社会における問題に切り込み、高校を卒業していく若者たちがどのような一歩を踏み出すのか、その葛藤や希望を描きます。地元の人々のみならず、都市に暮らす人々へのメッセージも込められた作品です。
■劇場情報
3 月 29 日(金)よりユナイテッドシネマ新潟
6 月 14 日(金)よりユナイテッドシネマ豊洲 にて公開!
■予告編
■作品情報
私の卒業 第5期 『こころのふた〜雪ふるまちで〜』
【出演】
小越春花、下川恭平、渡邉多緒、今森茉耶、阿部 凜、草野星華、美波/八条院蔵人、姫子松柾、伊賀光成、水瀬紗彩耶、増井湖々、藤乃唯愛、田口音羽、柚来しいな、鈴川 紗由、榎本遥菜、大熊杏優、山北れもん、世良大雅、髙岡優、清水海李、高橋璃央(友情出演)
【声の出演】真飛聖、森岡豊、南北斗
【脚本】高石明彦
【音楽】平野真奈
【監督】北川瞳
【企画協力】井上拓生 岩﨑美憲、永川大祐、渡邊景亮(以上小学館)宮本真行(松竹事業開発本部)
【媒体協力】Steenz エルタマ
【後援】新潟市 新潟商工会議所 新潟市教育委員会 新潟観光コンベンション協会
【協賛】新潟綜合警備保障
【プロデューサー】飯田花菜子 成瀬保則 ヤマウチトモカズ
【アソシエイトプロデューサー】 平岡祐子
【プロデュース】高石明彦 英田理志
【企画・制作・配給】The icon
Photo:Kaori Someya
Text:Yui Kato