「気になる10代名鑑」の635人目は、ささきおとはさん(18)。中学校の演劇部での活動をきっかけに演技の楽しさを知り、高校で舞台芸術を専門に学んでいます。現在は創作活動に励みながら舞台にも立っています。「ありのままでいいんだと寄り添える作品をつくりたい」と話すささきさんに、活動のきっかけや影響を受けている人物についてくわしく聞いてみました。
ささきおとはの活動を知る5つの質問
Q1. いま力を入れている活動は?
「高校で舞台芸術について専門に学びながら、劇作にも力を入れています。舞台のためだけのセリフが指示してある『上演台本』ではなく、文学としての芸術性も持ち合わせたような『戯曲』を書けるようになることが目標です。
3月末には高校の後輩たちと私が書いた戯曲で公演を行う予定です。私がこれまで書いてきたものとは一線を画すようなかなり気合を入れて書いた作品です。
また、神奈川県が開講している『紅葉坂舞台塾』を通じて、『ダンスカンパニーCHAiroiPLIN』の作品に出演予定であるなど、外部の活動もしています。物語の作り手から自分が演者になるという体験は、とっても貴重で。稽古に励む毎日です!」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「マンガ好きの家庭で育って、それに影響されて小学生の頃はよく4コマ漫画を描いて遊んでいました。休み時間に自分が描いたマンガを友達に見せたり先生に褒められたりしたこともあります。きっとそのころから、ストーリーを創って人を楽しませることが好きだったんだと思います。
あとは、中学校の演劇部での経験ですね。当時は自信が無くて、自分のことが本当に大嫌いで。演劇部に入ったのも、自分と違う役になりきりたかったからなんです。初めて台本を書いたのは中1のクリスマス公演でした。ブラックコメディ的なラブストーリーを書いて上演したのですが、それがものすごく受けたんです。台本を書くのが楽しいかもと思ったきっかけはこれですね。」
Q3. 活動のテーマは何ですか?
「追い詰められて苦しい人の暗い気持ちを肯定して、そのままの暗い色でいていいんだと思える物語を生み出したいです。劇作を通して、そんな寄り添い方をしたいと思っています。
高校の卒業研究で『鬱漫画』についてを研究したんですが、そのときに、物語がもつ『鬱』な面には、同じ境遇にある人を救う力が秘められているということを学んだんです。自分自身、適応障害になり、精神的にかなり苦しかったときがあって。そのとき、心が真っ黒になったように感じて、すごくつらかったんです。
でも、その経験から心が真っ暗闇な時に白い色ばかりを与えて明るくすることは、その色をもつ人を否定していることになってしまうんじゃないかと考えるようになったんです。必要なのは水を与えて、黒を薄めることなんじゃないかって考えて。
誰かにとって、そんな存在になれればいいなと思って活動しています」
Q4. これまでの活動のなかで、影響を受けた人は?
「『範宙遊泳』を主宰する劇作家の山本卓卓さんが、憧れの存在です。心に優しく寄り添って救いを見出すような作品を書いていて。範宙遊泳の作品『バナナの花は食べられる』を観たとき、感動を超えて、呆然としてしまって……。自分が描きたいのはこういう戯曲なんだと、はっきりと目標を自覚することができました。
山本さんに『いつか有名になったら、わたしの舞台を見に来てください』とお話ししたことがあるのですが、『有名にならなくていいですよ。僕は呼ばれて行く価値があると思ったら、必ず行きます』とおっしゃってくださって。名声やお金にこだわらず、演劇を心から愛している姿勢も本当にかっこよくて、尊敬して止みません」
「バナナの花は食べられる」を観て以来人生観が変わったというか、正直これまでの観劇体験とは比べものにならないくらい痺れたんだよな。
— ささき おとは (@otoha_o2) February 14, 2024
Q5. 今後の目標は?
「自分の書きたい作品で、日本最高峰の戯曲賞である岸田國士戯曲賞を獲ることが夢です。これから、一緒に夢を追いかけてくれる演劇の仲間を見つけて、形にしていきたいです。
舞台の道に進むことには障壁がたくさんあるし、反対されることもあります。だから、あまり確定的なことは言えないけど、それでも書き続けて、結果で示していければいいなと思っています。どんな形になったとしても、死ぬまで演劇や舞台には関わり続けていきます! 」
ささきおとはのプロフィール
年齢:18歳
出身:神奈川県鎌倉市
所属:神奈川総合高校舞台芸術科、紅葉坂舞台塾
趣味:観劇、お笑いライブ鑑賞、サザンオールスターズの曲を聴く
特技:なぞかけ、中野なかるてぃんの声真似
大切にしている言葉:人生はロールプレイング
ささきおとはのSNS
紅葉坂舞台塾の公演
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Photo:Eri Miura
Text:Chihiro Bandome