「10代のうちにたくさん映画を見て、インプットしておいたほうがいいよ」なんてよく言われるけど、過去作から新作まで、たくさんある作品の中から、どれを選べばいいかわからない……という10代に向けてスタートしたこのシリーズ。
21.2万人のTwitterフォロワーを持ち、「人生を豊かにする映画」を発信している映画アクティビストのDIZさんに、配信で見られる作品について、ひとかじり語ってもらいます。
いよいよ春が近づいてきましたが、冬の締めくくりとして、「雪の映画」で最後の冬気分を満喫するのはどうでしょう。あるときは自然に猛威に恐れおののき、またあるときはロマンチックに……と、さまざまな表情で映画を彩る銀世界の魅力に、どっぷり浸かってみませんか。
冷たくてあたたかい…雪にまつわる映画5選
映画アクティビストのDIZです。今年はなんだか暖かい冬でしたね。だからこそ、雪にまつわる映画で、臨場感たっぷりの世界観に入り込むのはいかがでしょう。雪のロマンチックな美しさだけでなく、人間を極限状態まで追い込む恐ろしさまで知ることができる、雪にちなんだ5作品をご紹介します。
実話の極限サバイバル、涙が止まらなくなるラブストーリー、先の読めない衝撃のサスペンス、映画の歴史を学べるファンタジー、そして幸せな人生のヒントが詰まったヒューマンドラマまで、雪が彩る映画の世界にどっぷりと浸ってみてください!
雪山の絆
まずは今年のアカデミー賞で、国際長編映画賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞の2部門にノミネートされた話題の作品から。『雪山の絆』は、吐きそうになるほど、リアルで壮絶なサバイバル映画。
1972年、ウルグアイ空軍機が人里離れた山地に墜落。ラグビー選手団である生存者たちは、お互いを鼓舞し合い、試練を生き延びようとしますが、夜になるとマイナス30度という、人間に過酷すぎる環境で。食料もない中で、生き延びるために究極の選択を選ばなければならない……そんな、想像を絶する状況が続きます。
絶望に絶望が重なりゆく、信じられないようなこの物語が実話だということに、衝撃的すぎて言葉を失いました。しかし、互いに絆があるからこそ試練を乗り越えようとする想いの力や、誰かと共にいるからこそ生きられる、人間同士のつながりの素晴らしさが、過酷な環境とのコントラストでひときわ美しく描かれています。
ウインド・リバー
鑑賞後、とてつもなく胸糞悪くて、何日も引きずってしまった、忘れられない極上クライムサスペンス映画が、『ウインド・リバー』です。そんな作品ではありますが、多くの人に観てほしい知るべき真実が描かれています。あまりにもつらい現実に、嘆くことしかできない自分が悔しく、エンドロールは怒りで涙が止まらなかった初めての作品です。
法律などまったく通用しない、世界に見放された極寒の無法地帯“ウインド・リバー”で、少女の凍死体が見つかります。その遺体が、アメリカ社会の闇を浮き彫りにしていきます。全身が凍てつく緊迫感、人生に重くのしかかる哀しみの銃声を、果てしなく広がる雪山が飲み込んでいく恐ろしさ……。
なぜか少女ばかりが殺される未解決事件が次々と起こる呪われた地で、事件の真相に迫れば迫るほど、あまりにも惨い真実が見えてきます。エンドロールまで一瞬も目が離せない緊迫した空気感は簡単には拭い去れず、寒い季節になると必ず思い出すほど、いまでも心に深く突き刺さっています。
ファイブ・フィート・アパート
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呼吸ができなくなるくらい号泣してしまった、切ないラブストーリー『ファイブ・フィート・アパート』。難病の嚢胞性線維症を患い、入院生活を送る17歳の少女と、同じ病気を抱える少年の恋を描いた作品です。
病状悪化のリスクを避けるため、常に他者から6フィート(1.8メートル)の距離を保たなくてはならないふたり。お互いのことを少しずつ知っていき、心の距離が縮まっても、体の距離は決して縮めることはできない……。そんなあまりにも切なすぎる物語が、愛する人に触れられること、そばにいられることの尊さに改めて気づかせてくれます。
当たり前の日々が壊れたコロナ禍を経て、いまを生きている私たちだからこそ、より一層彼らが伝えてくれるメッセージを噛み締めることができる気がします。
ヒューゴの不思議な発明
映画好きは絶対に観てほしい! 雪が美しく舞い散るパリを舞台に、絶望の時代だからこそ、“映画”という魔法が人々の心を動かし、夢見る力を与えてくれるものだということを思い出させてくれる、映画への愛情が詰まった名作『ヒューゴの不思議な発明』。
孤独な少年、ヒューゴがパリで出会った頑固でイジワルな老人は、映画黎明期に『月世界旅行』などの名作を生んだ“映画の父”ジョルジュ・メリエスだった……。史実に基づき、丁寧に描かれる映画の始まりとその歴史に、映画好きなら強く心を打たれること間違いなし。VFXやCGで、何でも生み出して描くことができるようになった現代だからこそ、映画の原点を見つめた物語に、思わず感動……。「映画には夢を現実に変えるパワーがある」と情熱的に訴える物語が評価され、第84回アカデミー賞で計5部門に輝きました。
映画というのは、これからもテクノロジーの進化と共にどんどん形を変えていくとは思いますが、映画そのものの魅力は決して失われることはないと、未来への希望と映画への敬意が込められた心が浄化される、素敵なファンタジー映画です。
生きる LIVING
\いよいよ明日公開✨/
◤ 最期を知り、人生が輝く。◢#黒澤明 監督の不朽の名作が
ノーベル賞作家 #カズオ・イシグロ 脚本で
イギリスを舞台によみがえる🎩『#生きるLIVING』3月31日公開🎞️
余命わずかな男が
人生の最後に起こした奇跡とはー 。 pic.twitter.com/S3gZu6td1A— 『生きるLIVING』【公式】大ヒット上映中! (@ikiru_living) March 30, 2023
雪が降るシーンが印象的な映画といえば、黒澤明監督の名作映画「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によってイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ『生きる LIVING』。
主人公は、公務員で仕事ひと筋の、お堅い英国紳士。家では孤独を感じ、自分の人生を空虚で無意味なものだと感じています。そんなある日、彼は医者から末期のがんであることを宣告され、余命半年であることを知ります。社会の歯車でしかなかった日々に別れを告げ、誰かのために生きようと一歩を踏み出した彼の魂は、まわりの人々の心に火を灯し始めていきます。
「自分の人生なんて無意味なもの」……そんな閉塞感を抱き、息苦しい社会の中で身動きが取れないと感じている人たちを勇気づけたいという想いから、カズオ・イシグロは、現代に本作を蘇らせたそう。わたしもこの映画を観た日から、「生きる」ことについて深く考え、日々を丁寧に生きようと思うようになりました。
雪の映画は名作ぞろい
というわけで、今回はさまざまな視点から「雪」の魅力が存分に味わえる、心震える名作を5つピックアップしました。寒い日が続くと、心も塞ぎ込んでしまうことも増えてしまいますよね。そんなときこそ、心に火を灯してくれる映画の魔法にパワーをもらって、春への希望を見出していただけたらうれしいです!
DIZのプロフィール
映画アクティビスト。ひとりでも多くの人に映画の素晴らしさを伝えるために、フリーランスで活動している。体験型の映画イベントを主催したり、配信サービスのSNS企画・編集やコピーライティング、さまざまな作品の評論を寄稿したりと、枠にとらわれずに活動している。
Twitter:@DIZfilms Instagram:@diz2049
Text:DIZ